五
片方が天井を警戒し、もう一人が前方及び周囲を警戒して先を進んでいた。全ての掃討が目的であるため、道すがら全部の部屋を調べ、中にいた化け物どもを残らず掃討したが、天井の悪魔だけは一向に姿を見せる気配が無かった。
その時、前方から悲鳴が聴こえた。
二人が銃を構えると、程なくして白衣を着た男が一目散にこちら目掛けて走ってくるのが見えた。
その後を、ヨタヨタと走る感染者達が襲っている。
スコットはショットガンを、ゴメスは大型拳銃マグナムを構えた。
「早くしろ! こっちへ来い!」
スコットが声を上げ呼び掛ける。
中年の男は白衣の裾を翻しながらこちらへ飛び込んできた。と、同時に二人は銃を撃ち続け走ってくる感染者達を掃討した。
「そろそろ弾薬が不味いな」
ゴメスが言った。スコットは呼吸を整えている研究員と思われる男を見ていた。
「いや、ありがとうございました」
男はそう言った。
「アンタ、ここの研究員かい?」
スコットが問うと相手は頷いた。
「はい、その通りです。モヒト・フシジロと申します」
「しかし、驚いたな。感染者達と追い駆けっことは」
ゴメスが言うとモヒト・フシジロは答えた。
「ええ、私も驚きましたよ。もう逃げるのに必死で」
そして彼は思い出したように言った。
「弾薬でしたら、この先にある武器庫で補充できると思いますよ。ええと、これだな。鍵です」
モヒト・フシジロが鍵束を見せた。
正に一瞬の気の緩みだった。
天井から物凄い勢いで首が伸び、研究員モヒト・フシジロの頭を噛みちぎったのだった。
高速で引っ込んでゆくその首をスコットはしっかりと見た。その首は獣ではない、トカゲのものだった。
「スコット!」
「分かってる!」
二人は銃を天井に向けた。頭上を走る配管の一つに大きな体が張り付いていた。
その身体目掛けて二人は銃を撃った。すると、そのトカゲはまたもや高速で首を伸ばした。
二人は避けた。カチリと空を噛む音がし、引っ込んでゆく。
「足を狙え! あの足は吸盤になっている!」
ゴメスが言った。狙いを変え、足を撃ち抜くと、突然、巨大トカゲは落ちて来た。仰向けになっている隙に二人は有りっ丈の弾丸を撃ち込んだ。多くの仲間をコイツに殺された。その仇だとスコットは無我夢中で撃ち続け、ゴメスに止められてようやく化け物トカゲが死体になったことを知ったのだった。
ゴメスは死んだ研究員の手から鍵束を取っていた。
「こいつには訊きたいことが、それなりにはあったんだがな……。この先も全て迷宮入りだ」
「武器庫に行こう」
スコットは疲れを感じつつそう言うとゴメスは励ます様に笑みを見せて頷いた。