三
やはり犠牲者とミュータントは所々に残っていた。二人は銃を撃ち続けそれらを掃討した。そして研究所の制圧を終えると、次は併設する工場エリアへ足を進めて行った。
そしてその入り口で頭をまるまる失った隊員の誰かの遺骸を見付けたのだった。
「メドッソだ」
ゴメスが亡骸が携帯していた手帳を調べてそう言った。無線は無かった。
スコットは自分の無線で報告しようとしたが、電波が荒れる音だけがして向こうからの返事が聴こえなかった。二人は進んだ。
工場に張り巡らされた太いパイプが幾つも伸びている。
その時、銃声が聴こえた。断続的なアサルトライフルの音だった。
二人は音のした方へ駆け出した。
横に扉があった。
スコットが蹴破った。そこには隊員のユメノがアサルトライフルを手にして五体以上のミュータントと、対峙していた。
「ユメノ!」
スコットとゴメスは飛び込んだ。気を削がれたミュータント達の隙を、プロの彼らは逃しはしなかった。ジェル状の身体の中にそれぞれ違う位置にある核を目敏く見つけて撃ち抜いた。
「弱点は一つだけじゃない!」
ユメノが叫ぶ直前にスコットも気付いていた。ジェル状の身体の中に、核が三つも、四つもある。しかもそれを全て撃ち抜かなければミュータントは活動停止をしなかった。
幸い、気付くのが早かったため、何事も無く敵を討ち尽くすことが出来た。
「ユメノ、生きてたか!」
ゴメスが歓喜して言うと、ユメノは言った。
「脚が折れちまった」
相手の不自然に曲がった右足をスコットは見た。
「俺はここで待っていて、後で助けてもらう予定だった。他の連中は?」
ユメノが問うと、ゴメスが応じた。
「そいつを俺達も探しに行くところだ。……外でメドッソが死んでた」
「そうだった」
ユメノは思い出したように言った。
「外の天井には気を付けろ。何かいるぞ。そいつがメドッソの頭を喰らうのを俺達は見た。そのゴタゴタで俺は脚を折っちまったんだがな」
「わかったよ」
スコットは頷いて言葉を続けた。
「とりあえず、お前はここで待ってろ。後で俺達が合流する」
「ああ、そうするしかないしな」
「武器は?」
「こいつがある。弾もまだクリップ二つが満タンだ。心配はいらない。他の奴らを頼む」
ユメノがアサルトライフルを見せて言った。
「わかった。じゃあ、後でな」
二人はその場を後にした。
扉を閉める。
天井に気を付けろか。
スコットは複雑な配管の伸びる頭上を見上げた。