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雪の神様

作者: 樟葉純

冬にくるある神様のみじかいおはなし

その神様は雪の神様です。

さむい冬が神様のお仕事場です。

すずしいところは冬になると雪をふらせることができます。


雪の神様のお仕事は雪をふらせることです。

しずかにつもる雪は地面をおおってしまいます。

雪はさむくないときえてしまいます。

だから雪が降るのはうんとさむいところです。

雪の神様は冬になると雪を降らせるところにいきます。

そこで人間をみながら雪を降らせます。

雪の神様は春が近づくとさむいところにいきます。

また次の冬に雪を降らせにくることを思いながら。



雪の神様はすこしだけ感謝されます。

ふらせる雪は人間の子どもがよろこんでくれます。

山にふらせる雪を転げまわって笑顔であそぶ人間もいます。

なにより雪の神様を神様とみてくれる人間がいました。

でも雪の神様が感謝されるのはほんのすこしだけでした。


あるときは雪をつもらせて

「早くとけろ」

といわれました。

人間は雪がつもると雪をやっかいものだと思っているようでした。

たくさんの雪があたたかくなってたくさんとけると

「雪どけ水が多すぎて迷惑」

といわれました。

昔は山がお水を吸ってくれましたが、今は木も土もないから誰も吸ってくれないみたいです。

雪に足をとられて転べば

「こおったのは雪のせいだ」

といわれました。

雪は昔から降っているのに、雪をふんで固めているのは人間なのに。

人間は何かのせいにしたいみたい。


あるとき雪の神様はある山に雪をふらせわすれてしまいました。

雪の神様はあわてて雪をふらせようとしました。

でも山には雪がありました。

人間が雪をふらせていました。

人口雪という雪を機械を使って雪をつくったそうです。

雪の神様はとても悲しくなりました。

雪の神様しか雪をふらせることができないとおもっていたのに。

雪の神様は人間にお仕事を取られてしまいました。


それでも、雪の神様は雪をふらせています。

雪をふらせることができるところがだんだんとなくなっています。

でも雪の神様はあきらめません。

「わー!ゆきだー!」

子どもの声が聞こえます。

今も昔も子どもは雪をみると喜んでくれます。


あの子の横にいる人間はきっと昔の子ども。

ほほえましい笑顔です。

あの子が大きくなったら新しい子どもが雪をよろこんでくれる。

だから雪の神様は神様であることをわすれられても雪をふらせます。


あるとき雪の神様は白い原っぱであそんでいる子どもを木のかげから見ていました。

ここはまだ木が残っています。

地面は土があって水を吸ってくれます。

「ねえ!いっしょにあそぼ!」

子どもが雪の神様を見つけました。

雪の神様は人間の子どもにまちがえられるほど小さいので、子どもは雪の神様とは気づきません。

「いいよ!なにしてあそぶの?」

雪の神様は子どもとあそぶのが大好きです。

「雪合戦する?雪だるまつくる?」

真っ白い原っぱにたくさんの雪があるから、雪のあそびはいろんなことができます。

最初は雪合戦をしました。

みんなで雪玉をつくって、ぽんぽん投げあいます。

白い雪玉が子どもに、雪の神様に当たります。

しばらくすると雪まみれになってみんなで笑いあいました。

次に雪だるまをつくりました。

小さな雪玉をころころ転がして大きな雪玉にしました。

子どもには大きすぎる雪玉になりました。

雪だるまは寝ている雪だるまになりました。

日が暮れると子どもたちは帰っていきました。

人間は夜になるとおうちで家族とすごします。

雪の神様はおうちがありません。

でも、また子どもたちとあそびたいので、夜のうちに雪をふらせました。


前の冬のその前の冬にあった森がなくなりました。

前の冬にあった原っぱは人間のおうちになりました。

黒いけむりをもくもくだすおうちです。

雪の神様はくしゃみがとまりませんでした。

子どもたちとあそんだ原っぱもなくなってしまいました。

誰かがつくった雪だるまは小さくて、すこし黒い雪だるまになっていました。

地面は土ではなくなってしまいました。

木もなくなってしまいました。

人間はかいはつというものをして、雪がじゃま者になるようにしてしまいました。

子どもは少なくなりました。

昔の子どもはどこかに行ってしまって新しい子どもが増えません。

よろこんでくれる子どもは少なくなってしまいました。

でも雪が好きな人間は子どもが少なくなっても雪がふると喜んでくれます。

だから雪の神様は笑顔のために雪をふらせ続けています。


ずっと前に雪をふらせたところに雪をふらせることができませんでした。

雪をふらせようとしても雨になってしまいます。

雪の神様はほかの神様におこられてしまいました。


雪の神様は昔々の神様です。

雪の神様はよろこんでくれる人のために。

きれいな雪をふらせられなくなったけど。

とおくに雪をふらせられなくなったけど。

それでも雪をふらせます。


じゃま者にする人間が昔よりも増えた気がします。

まだ残っている山に雪をふらせるとあいかわらず人間はよろこんでくれました。

でも、あまり雪の神様は人間とあそばなくなりました。

人間は雪の神様をみつけることができなくなってしまったからです。

雪の神様は人間に見つけてもらおうとはしません。

少なくなった雪をみて笑ってくれる人間をみていたかったこともあります。

でも、いちばんの理由は。

雪の神様のことをみんなわすれてしまったのです。

冬がきたら雪がふることはあたりまえだから。

雪をふらせてくれるのが雪の神様のお仕事だってわすれてしまったのです。

あたりまえのことだから。

冬になったら雪がふるのはあたりまえだから。

人間は雪の神様のことはよくおぼえていないのです。



あたたかくなると雪の神様はずっとさむいところにいきます。

前の冬はいけたところでも、今の冬はいけませんでした。

雪の神様はあたたかくなってきたときに思います。

次の冬はこれるかな。

あの子に雪をみせてあげられるかな。

雪の神様は人間にわすれられてもお仕事やめません。


その神様は雪の神様と言われています。

子どもがはしゃぐすがたをみていっしょに走り回った神様です。


雪の神様をみんなわすれてしまったけれど。

雪の神様はみんなをわすれてはいません。

雪の神様はいくら怒られても人間を嫌いになることはできませんでした。

またいっしょに原っぱで雪合戦したいなと思いながら。

いつものように雪をふらせています。


べつの神様はもうやめてしまえといいました。

雪の神様はこのお仕事をやめたくないといいました。

またべつの神様は雪の神様をわすれた人間をおしおきしようといいました。

雪の神様はいまよりもこまることを人間にはしたくないといいました。

雪の神様は人間を嫌いになることはできませんでした。


いつか雪の神様のことを思い出してくれる。

雪の神様は思い出してくれることを信じて雪をふらせます。

今日も雪の神様は雪をふらせているんでしょうか。


感謝されるのはほんのすこしだけ。

いっぱいいっぱいおこられるけど。

よろこんでくれるから雪をふらせてくれます。

雪の神様じゃなくて。

雪が人間によろこばれて。

雪が人間におこられるようになったけど。

雪の神様はそれしかできません。

雪の神様はそれだけがお仕事です。

だから、すこしでも雪の神様は人間に雪をみせます。

すこしでも雪の神様はきれいな雪をふらせます。


雪をふらせることができなくなるときまで。

雪の神様は冬といっしょにあそびに来てくれます。


まっしろな雪の神様は今日も子どもとあそびます。

「またきたよ!」

元気な声で雪の神様はまたきてくれます。

雪は冬のあたりまえ。

真っ白な原っぱを雪の神様と子どもたちは走り回ります。

雪をみると子供と犬ははしゃぎますよね。

大人も年甲斐もなく。


でも温暖化で雪質が変わってしまったり、雪が少なくなった地域も少なくありません。

降る雪が黒くなってしまったり。

でも、毎年雪は降ります。



雪の神様が真っ白な雪を降らせてくれるように。

自然を大事にしようってことです。

当たり前が当たり前じゃなくなる前に。


※2015/12/17に改稿しています。

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