生命の価値(中編)
ミレニアという女性の事を教えよう。彼女は生命を奪う種族の最後の生き残りと言われた。所謂古代種だ。彼女は多くを話さないが生きるために利用され利用してきた。長い旅路の果てにアーケードに出会い、人の優しさと大切さを知る。気づけば家族のようになり、祖母として慕うようになり、ギレムには心の豊かさを教わり祖父として慕うようになる。
ある少女に出会い、自分と似たような存在という事を知る。だが似て非なる存在というのも気づき手離そうとも思ったが彼女とすごすうちに妹のような感情を持つようになる。自身の生命を奪うと理解しながらも手離せず最後の力を振りしぼり祖母の元へと向かった。
彼女はアリスという名前でこの世界のヒトという生物に酷似した何かだった。
「危機は脱した、後は目覚めるまで待つ事だな」
キャンディの言葉にほっと息をつくアーケード達。
「……この子の名前はアリス、噂の名も無き都市からミレニアが拾ってきたようだ」
「……確かキメラと人間の交配をして生物兵器を作っていた研究所の名残じゃな」
「……この子を連れて帰ろうとした男は新造されたといっていた」
アーケードは眉間に皺を寄せた。
「……理論を完成させていたようだね、あの女は」
「あの女?」
太一の言葉にアーケードは言い返す。
「……ヒトという種を器に見立て複数の魂を入れ一つの生命体として安定させるという無茶な理論を組み立てた女がいた、無理矢理複数の生命をエネルギーにして急速な進化を促す技法だ、魔術と科学の混合技術として一時期は注目されていたんだが……生贄を用いて作成するという点で非人道的とみなされ学会から追放された女がいる、名はミラージュ=エスト……生命科学で右に出るものはいないだろうね、今は22だったか」
「……その技術を誰にも見られない場所で更なる研究をしているならその研究自体も進化している可能性がある、もしくは自分にも転用している可能性もな」
「……少なくとも完成はしているだろう、ミレニアも恐らく気づいている、この少女の魔力は少し異質だ」
未だに怯えるアリスを見ながら太一は告げる。




