8番目の末妹
「……いきなり呼びつけられたと思ったらなんだこの大喰い幼女は」
目の前で皿を積み重ねがら食べる大喰い系幼女を見ながら姉、ロクシャーナに呼びつけられたバルバトイは呟く、隣にはきちんと服装を整えたもう一人の姉ロクスウェルがいる。
「あんた達も新しい妹の事聞いてるでしょ」
「まあ聞いてるが……ここまで幼いとは聞いてねえぞ」
幸せそうに食べる幼女を見ながらバルバトイは言う。
「……まあまあよいでござらんか、幼女こそ正義でござるよ!!」
「ロクスウェル姉さんは鼻血とめろよ」
バルバトイは頭を抱えながら二人の姉と新たな妹を見ながらため息をついた。
「ロクシャーナ姉さんからバルバトイとロクスウェル姉さん指名だ」
家でゴロゴロとしていたところに突然の兄の指名。
「いきなり朝からなんだよお、俺仕事してきたんだぜー」
「しょうがないだろう、ロクシャーナ姉さんなんだから、あの人に逆らえるか?」
「……無理だな、年中熱血系傭兵の姉さんには逆らえねえわ、んで何の用事?」
「件の新しい妹がロクシャーナ姉さんの所にきたらしい、しかもパンツを履かず」
「下着履かねえのは危険だな」
「しかも幼女という話だから人間社会のマナーも知らんとおもう」
「……更に不安だ」
「それと子供好きだからとロクスウェル姉さんも指名」
「更に不安だ」
「……逝ってこい」
「文字が違うよね、絶対」
そんな下りで傭兵ギルド[フェンリル]に来たわけだが、正直な所、面倒なのでかえりたい、ロクシャーナ姉さんは家族序列にしたら次女にあたる、昔から我が道をいくラギエル姉さんに比べて理知的で家族の事を考える姉であった。いち早く人界での生活の重要性にも気づき自分達にも生きる術を教えてくれたわけだが……むしろ第二の母親のようなもので。
「……バルバトイ、定職にはついたのか?」
「言われると思ったよ!!」
自由を望むバルバトイとは反りが合わないのである、人界で出来た友人とこっそり男の聖典を買った時も堂々と読み、[お前は巨乳が好きなのか?]と真顔で聞いて来た時は戦慄を覚えた。アギエルでさえロクシャーナ姉さんには頭が上がらず彼女が来た時には気を使うほどだ。
「レギオスちゃんと言うんでござるか、ロクスウェル姉ちゃんでござるよお!!」
……ロクスウェル姉さんは使いものにならん、まあそれは仕方がない、アギエル兄さんはやることがあると簡単に俺を指名したんだろうが……ロクシャーナ姉さんは俺にとっての鬼門だ。
「なんだ久しくあったのにつれないな、昔は添い寝もしたというのに」
「どんだけ昔の話だよ!! つうか他の姉さんらも頬を赤らめるなよ!!」
マイペースすぎるロクシャーナ姉さんが苦手なのは相変わらずだ。
「僕はレギオスといいます、産まれたのは二年前です」
「まだ、幼体だな、きちんと人化できるなんてすげえじゃねえか」
ギルドの中でもっしゃもっしゃとあらゆる国の料理を食べながら自己紹介する妹に悶えるロクスウェルを見ながらバルバトイはふむと頷く。
「おとうさんとおかあさんは、御兄ちゃん達のおうちに住むようにいいました」
「ふむ、人界になれるならばアギエルの所にいくのがよいだろう」
「幼女キター!!!!キターでござる!!!」
「ロクスウェル姉さん、うぜえ」
バルバトイははあとため息をつくとロクシャーナに眼を向ける。
「……んで、どうせロクシャーナ姉さんもうちくんだろ、このギルド近いし」
「そうだな、共和国から馬車で一時間だし、転移もできる、久方ぶりにアギエルの飯も食べたいし」
ギルドの友人達にまあ遊びにくればよいといいながら言う姉に対してバルバトイは
「……またにぎやかになるわな」
無邪気な妹を見ながら呟いた。




