ルーランと太一(後編)
太一の一人称が俺に変わります。そしてとうとうハーレムルートに入ります、雪村太一の辞書に側室はありません。
「どうやら血筋は健在でも寿命の方はそうでもなかったようだな」
「そうだな、異界より来訪せし者は遥か昔には特別な能力の他にどこか欠陥的なものがあったと聞く、女性に転生してしまったり、子を作れなくなったりな、どういう仕組みかは知らんが今は安定して稀に転生する異界人もいると聞く、太一もそうだろう?」
「ああ、そうだな」
「太一は若爺様と同じなのか!なら友達になってあげてくれ!!」
桜乃はルーランと太一と手を繋ぎながら城下町を案内しつつそう声をかける。
「……心配せずとも蒼桜さんとは友人になりたいと思っているよ、でもどうして?」
「若爺様は優しいがいつも寂しそうなのじゃ!父と母がいなくなってからはワシの父と母は若爺様と若婆様じゃ!ワシも大きくなったら二人と同じになりたいが、太一は若爺様と似たような存在で不死なのだろう?長い時間友達になれるならそうしてほしい!!」
太一は桜乃の頭を撫でるとにこやかにほほ笑む。
「大丈夫、君の気持ちは伝わったよ、そうだね、自分……いや俺も似たようなものだ」
太一は自分の呼称を変えながら頷いた。
「なれば俺もお前と同じ月日を生きたい」
「まるでプロポーズだね」
とある公園の丘にたどり着き桜乃がこの国の子供達と遊ぶのを見ながら太一はルーランに言い返す。内心急展開だなと思いながら。
「お前ははっきり言わないとわからんでな」
「……多分不死は多くの別れを経験し、精神を摩耗させるものだよ、今は別れはないからいいかもしれないが、確かに俺は外法を使わずとも不老不死にさせる技術を知っている」
「構わん、俺はお前の子供が欲しい、他の女も同じだ」
「……思いつくのが多数いるな……そうだな、少し彼女達にも話さなければならないな」
「そうとも、別に急かさずともよい、だが俺はいつか悲しみに到達するとしてもお前のそばでいたい」
熱を帯びた視線を向けるルーランに太一は微笑み。
「……そうだね、今日は二人きりでいれる宿をとろう」
了承ともとれる意を示した。
その後、桜乃が好きな茶屋や歌舞伎(蒼桜が再現させた)を見たり、桜乃が好きな城下町を一望できる山を見たり、そして何より驚いたのが
「お、姫様、今日は美男美女と一緒だね、ほら御饅頭もっていきな」
「あら、姫様、今度うちの子の子守りしてくれる?貴女じゃないと寝ないのよ」
「姫親分!!今度こそ東町の奴らをこらしめてやりましょうぜ!!」
「姫君、この平和は貴女の若爺様のおかげでございます、そして貴女はこの国の宝」
桜乃の慕われようだった。元々溌剌な子供だったらしく町に来ては困った人を助け、時に町人と同じように生活し共に生きる事を良くしていたためにこのように慕われたようだ。
「ワシはこの国を笑顔にしたいのじゃ、そして若爺様達を楽にさせるのじゃ!」
「……嫁になんぞいかせられんな、蒼桜さん」
後にその事を話した所蒼桜と標桜は感極まり雛壇は片づけないとまで言い出したのでそこは太一がそれとなく宥めていた。臣下二人も紹介され忠義を尽くす精悍な男二人だった。そして食事をし語らった後、別れる事にした。
「今宵は楽しかった、次は剣を交えよう」
「……いつでもこられますように」
「またな!!太一!ルーラン!!」
最後に桜乃は二人を抱きしめると同時に笑って手を振った。
「若爺様!若婆様!!ワシはいつまでも二人とおるぞ!!」
「それは嬉しいな」
「ほんとにねえ」
桜乃の大好きな若爺と若婆は穏やかに微笑んだ。
「……そのあれだ、連れあい宿に入ればそのいたすのだぞ?」
「今更怯えるなんて君らしくないな」
恋人が連れあう宿の前でルーランの手を握る。
「俺も経験がないわけじゃない……うまくできるかどうかは知らんが、君の気持ちには応える、勿論他の皆にもね」
「……嬉しいけど、寝かさないかもだが?」
「それはそれでしょうがないさ」
二人は連れ添いながら宿に消える。




