デート1 ルーランと太一(前篇)
中立国家[標桜]
地球と同じ桜色の花が咲き乱れる。島国の一つだ。
常春の国で世界数多ある美景として数えられている。
「よしいくぞ!太一!!」
そこで楽しげにいつもとは違う桜色の着物を着た美しい女鬼のルーランが世界最強と名高い男、雪村太一とデートをしようとしていた。
デート一日前。
「ふふ、やはり貴女も同じ考えだったわね」
雪人に造ってもらった家の広々としたフローリングの向かい合わせのソファーに座りながらリンネとルーランは話しあっている。ちなみにアザゼルは今日の夕飯の買い出しにいっている。リンネの自宅は最新式の家電が揃い、収納部屋が5つに居住部屋が6つ、そしてキッチンも備えたリビングが15畳ほどの広々としたちょっとした豪邸である。雪人が孫のような彼女に対して頑張った結果らしいが、ここまで豪勢になるとは思わなかったようでリンネは軽く驚いている。まあそれはさておき彼女らはちょっとした密談をしている。
「太一兄ちゃんは文字通り他人を救う事にしか興味のない善人なのよね」
「でも童貞ってわけでもないんだろう?」
「ああ、なんか練習したいからっていう風俗嬢に童貞あげちゃった」
「……それはそれでなんか人助けの意義がずれてないか?」
「それでも太一兄ちゃんからしてみたら人助けなのよ、まあノンケだからそっち系はないみたいだけど、さすがに太一兄ちゃんのはじめては私が貰いたかった」
「それを言うなら俺も同じだ、なんだかあれだな、冒険小説の主人公がイケメンなのに、知らず知らずに操を奪われたようなある種びっくりな設定だな」
「それを淡々と話す私達もあれだけどね……」
リンネはふうとため息をつく。
「別にその御仕事をしてる仕事の人を馬鹿にするでないし、寧ろ頑張ってるくらいにしか思わないけど、あれよね、太一兄ちゃんにはもう少し自分の魅力をわかってもらいたいわね」
「そうだな、まあそれはともかく太一を慕う奴らは皆正妻になりたいクチだろう」
「そうね、幸いこの国では一夫多妻と正妻婚姻複数が認められているわ」
「同じ男を好く同士、揉める事もないだろう」
「ええ、そうね、だからこそ太一兄ちゃんには男として自覚してもらう必要がある」
「俺はお気に入りの着物をきて誘惑する事にしよう」
「ええ、そして私とアザゼルちゃんも」
こうして乙女達の太一を誘惑し正妻になるという計画が発動されたのである。太一本人はどことなく気づいてはいたが基本的に恋愛性能は小学生並なので深くは気づかない。これは雪人曰く父親譲りだそうだ。




