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とある異世界にて狩人は笑う  作者: 作者不明
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兄と弟



個人戦後半戦……戦うのはバルバトイとアギエルの二人、心なしかお互いの空気が違う。




「まさかアギエル兄さんとあたるなんてね」




「お前と闘うなんて千年ぶりくらいじゃないか」




アギエルはクスクスと笑う。




「ほんと、兄さんはかわんねえよなあ……勝てねえっつうの」



「それはわからんぞ……たまには興じてみるのも構わんさ」




「まあそうだな、たまには弟として抗うのもいい」







「やはり兄弟だけあって両選手の魔力はすさまじいですね」



「龍王の名を冠する二人だ、それもそうだろう」




アギエルとバルバトイは拳を構える。彼らは龍拳という人化形態で扱う武術がある。それぞれの属性に合わせた武闘術、これは人化した場合の攻撃手段と自らの力の自制も兼ねて親から子へと受け継がれる拳術である。開祖は老龍オウケン、始祖龍と同時期に産まれたとされる老龍……、始祖龍の不老不死性はなくただ龍として生を受け人を愛し人を護り永きに渡り生きてきた偉大なる龍の一人、弟子に七天龍の父であるゼロス、破滅を司る龍リンレン、再生を司る龍ロンレンの三人の弟子にこの武術を授けた……またこの三匹の龍の幼年期を育てたのもオウケンだと言われている。もっともそんな偉大なる龍であるオウケンは東の秘境に居を構えのんびりと余生を過ごしている。だが今も尚その力は健在で、アギエル達にとっては祖父のような位置にいるといってもいい。





「久々だな、拳を扱うのも」



「最近じゃ刀だのなんだのしゃれたものがありすぎんだよ」



そう言うと同時に二人の姿は消える!!





「ハイスピードですね、はい、私また見えません」



「アギエル君が残像4、バルバトイ君が残像2……やはり経験の差が出てるな、拳二つほど多く兄であるアギエル君にもらってる」




「マルコキアスさん、何で見えるんですか」




「それは俺だからだ」




「納得してしまう私がいます!!」





打撃音と共にバルバトイは吹き飛ばされアギエルは呼吸乱さず足を鳴らす。




「呼吸法怠けていたな?」




「ああ、こんな事ならきちんと復習すればよかった」



じゃれつくように再び拳を振り上げる。思えば兄弟でこのように戦う事など久しぶりだった。アギエルは実に武に対しておざなりになっていた自分に気づく、弟は自由であると同時に会話はあまりしない、コミュニケーションはなんだかんだ組手でとっていたように思う。



「あー、久々だ、兄さん、昔はよくこうやってオウケンの爺さんにもしごかれたな」



「ああ、懐かしいな」



まだお互いが幼く人化に慣れた頃人間の武術を教えてくれた翁がいた。懐かしく思う。このイベントが終ったら祖父のようなあの人に会いに行くのもいいのかもしれない。だが久々の弟のじゃれあいを終らせてからだ。




「……兄さんが楽しみだすとおわらねえからな」




「確かに、今日は楽しい日だ」




人間にして自分に戦いを挑んできた人間、そして今イベントとはいえ兄に立ちふさがる弟、先ほどのように龍化してはもったいない、人化してこその楽しみだ。




「……闇の魔力全開?」



「そうだな……龍拳の真骨頂は属性付加にある、忘れたわけではあるまい?」




「……うあー負けフラグ確定じゃん、まあいいけどね」




アギエルの周りに黒の魔力が噴出しバルバトイの周りに緑の魔力が噴出する、龍拳の極意は極限まで上昇する身体能力と自らの持つ属性の極限付加、その一撃は国をも滅ぼす。





「私はいまだかつてこのような清廉な魔力を感じた事はありません!」




「自らの力を信じなきゃこんな綺麗な魔力は出ないな、素晴らしい」




「歴史的瞬間をみているのかもしれません!」




「雪人なら有名アナウンサーに激似というんだろうな」





黒の嵐と緑の嵐が衝突し轟音を響かせる!!





「……結界が持続してなかったらやばかったな」



「あーやっぱ負けフラグじゃん」




そう言った瞬間バルバトイは血を吐き舞台に倒れた。




「昔のお前なら吐血だけでは済まなかった……まあ強くなったな」



「兄さんの余裕、マジしゃれんなんねー」



血を吐きだしながら天上にあおむけになりバルバトイはふうとため息をつく。



「こーさん、こーさん、もういいわー」






「すばらしいい!!!巨大な黒の一撃が緑の風をぶちやぶったああ!!!これぞ兄の貫録!!これぞ闇の龍王~!!!」




「激しいな、実に激しい」





マルコキアスの呆れをよそにバルバトイは立ちあがると片手をあげて




「まあんじゃ後はがんばってよ」




そういってアギエルを背に舞台を後にした。


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