探険する妹
ロクスウェルに続いて、ラグナがこちらの大学院に留学をした事からラクシャーナもまたついてきていた。兄と姉であるアギエルとロクスウェルとはもう顔を合わせ、相変わらずな姉といつも通りの兄を見ながらこの街の新しさを見てまわっているのだ。
「今日はラグナちゃんはアギエル兄ちゃんと研究だしな、ロク姉ちゃんは太一さんらと仕事だし、私も勉強しよっかなと思ったけどガラでもないしねえ」
ラクシャーナはギルドに所属している、それというのも雪人が種族に対して分け隔てもない形でギルド運営しているからだ。自分は始祖龍には及ばないでも歴史に名を残す龍の一角、面倒な付き合いも引きよせやすいので余り一つどころには所属は出来なかったのでこういう場所があるのはありがたいと感じ、軽い気持ちで所属したのだ。おかげでその面倒な事は回避できたしギルド仲間も出来たのでありがたい事だとラクシャーナは思う。何より人間の営みが好きで服もご飯も好きなのでその感性は年頃の少女と大差はない。
商店街を抜け街の中央広場にたどり着く、屋台の露天が立ち並び遥か過去に来た時に比べ遥かに治安がいい。それもこれも雪人の提唱した教育やマルコキアスの実施した政策も功をなしているのだろう。警備にはギルドランカーとマルコキアスの組の者が、並の魔物やごろつきには手も足も出ない。
「……本当に今日は良い天気だし、食べ物日和よね」
ラクシャーナは大の買い食い好きで露天での食べ物も好きだった。最近のお気に入りはフランクフルト、雪人がどこからか製造を聞いてきたという料理が好きだった。最近開発されたマスタードとケチャップをつけて食べるのが好きだ。
「……ため息ついてどうしたんだ、こら」
顔見知りの友人を見つけてラクシャーナは声をかける。
「ラクシャーナ」
「ニーナ可愛いな、どうした」
この街で友人にとなりよく話すようになった太一の義妹ニーナ………マークという少年と仲睦じく交際をしているというのも聞いている。見る限りでは幸せの限りであったとおもうのだが……。
「ねえ、今いい?」
「うん、構わないよ」
ニーナに連れられニーナの自宅へと招かれた。
「……生理がこないの」
紅茶を淹れられて啜ると同時にラクシャーナは噴きそうになるのを堪えマジマジとニーナを見る。生理が来ないという可能性としては自分の知識の中でいえば男女がするあれが原因としか思えない。ニーナが生理不順というのは聞いた事はないし、マーク少年も悪い奴ではないが……。
「……したの?」
「……うん、ちょっと安全な周期もあったから……」
アーケードがたまに座学しに来る時に女性特有の授業もしたりはするのでラクシャーナもニーナと共に話半分には聞いていた。この世界では10代で子を産む子も珍しくないけれども……正直な話……経済的な安定や保証もない状態でやるとは考えにくい。
「……ゴムはつけてたんだけどね」
「……マークがいったの?」
「……その……私から……」
「……それに関しては何も言わないけど……」
愛した男としたくなるのは女の常だし、致し方ないとは思う、ラクシャーナも子供こそいないものの、長い時の中契った人くらいはいるが………ニーナが安易にそんな行動をするのは信じられなかった。
「……ニーナ座りなさい」
ふいに優しくも部屋に響く声が響く。後ろにはマークと太一は立っていた。
「……君達は後からじいさんに怒られるのは覚悟しなさいね」
太一はそっと座らせマークとニーナを見ながら言葉をゆっくりと話す。ラクシャーナはなんとなく居るのもあれだったが、太一に在席してもよいと言われたのでいる事にした。子供達は幸いにして幼稚園と小学校にいっている。
「……自分は兄として糾弾もしないし、理由も問わない。だが君達は大人に至る行為をしたそれは考えてほしい。マーク君は今学生だ、勉学に勤しむ時間と働く時間を考えなければいけない……。ニーナは家を護ると選択した。兄として感謝することだ。だが家庭を持つとなると話は別だ」
太一はいつもの無表情ではなく微笑みながら諭すように話していく。
「自分は子を持った事はない……、だが子を持つ事は父母になることだ、産まれるならば愛さなければならない、君達が選んで選択した生命だ」
太一は更に言葉を続ける。
「世界の危険から護るべき宝だ、ニーナ、お前は安易に子を宿す行為をしたか?」
「……違う」
「マーク君、君は安易に子を宿す行為をしただろうか?」
「違います」
「お互いが愛し合ってそうしてしたなら致し方がない、自分は認めよう、だがしかし君達は君達の選択を持ってその行為をしたんだ、避妊の対策をしてもそれは絶対ではないと知ったうえでしたわけだ、他の国からしてみたら君達はまだ学生と呼ばれる大人にならない年齢だという事は知っているね?」
「「はい」」
「……それでもしたのはずっといたかったからだね」
「「はい」」
「………ならいい、ニーナ、お前は懐妊はしていないよ、先生の御墨つきだ、自分も今確認した、疲れて少し体調に出ているからだそうだ……自分は怒らないが……せめて二、三年は待ってもらえるとありがたいね、ニーナもマーク君ももっともっと世界を見てほしい」
そういうと太一は話は終わりといってその場から立ち去りマークはそのまま礼をして、ニーナはありがとう御兄ちゃんと呟き泣いていた。ラクシャーナはなんとなく居づらかったので外に出ると雪人が鬼のような顔をして向かっていったのでこれは長く叱られるだろうなあと思った。
「……家族かあ」
アギエル兄ちゃんとロク姉ちゃんには会えたけど他の兄と姉には会えてないなあと一番末の妹であるラクシャーナは思いながら空を見上げた。




