26/163
幕間4 呪拳の斬左
呪拳……それは一子相伝の邪道の拳の一種。己の気の流れを反射し打ちだす秘拳。この拳が斬左は嫌いであった。戦場であれば正当な闘いなど求める事はできない。ましてや生命のやりとりに美しいものなどはありはしない。己の命は己で護るしかない。呪拳の奥義を伝授した師父もまた老齢により亡くなった。
拳や剣や魔法を意も介さずの中の力を巡りて反射する……完全なるカウンターの拳……、このような拳に何の意味があろうか……。拳を交えぬ拳に何の意味もない……。だが………その人は違った。
数多の戦場に舞い降りた白い髪の男、気だるげな瞳に無表情な表情、だが一度闘いになれば鬼の如き力を持ちて敵を狩る。その力はまるで神の如し……。
「……拳交える拳闘がしたいか?」
静かな言葉にあっしの心が震える、気づけば拳を構えかけ出していた。
「なかなかよい拳だ、どうだい? 社員に」
意識を失う前にあっしは静かに頷いた。
 




