魔導具
魔導具という物がある。特定の術式を刻みその効力を永続的に使用できるという圧倒的センスと魔力量がある魔術師のみが使用できる特別な道具であったが近年簡易化され魔力の少ない者でも使用できる画期的な魔導具が開発されてきた。多くの魔導具の輸出先はスチームクリミナル共和国。今や世界に知らぬ者は居ないといってもいい[無頼翁]雪村雪人と[白銀の狩人]雪村太一が居を構える国である。
またこの国には世界でも偉業を成し遂げた者達や様々な種族がギルドに集う事から独裁国から自由の国という認識にかわり一攫千金を夢みて冒険者になる者達も多い。そして魔導具の制作レシピも秘匿せず多くの国に渡している事からも他国からの印象はよい。といっても未だ精密な部分はこちらの国での修理にはなるが………。
「……本当に雪人じいちゃんは生活に還元しているよね」
自らの血の繋がらないおちゃらけた性格の祖父を思い出しながらニーナは祖父の開発した[冷蔵庫]を見ていた。こちらの魔導具は氷の永続を記す魔法陣を刻まれ温度調整の魔術を刻まれた複合型の魔導具になる。ニーナには魔法の才もあり時折兄である太一に習ってはいるが効果を刻む魔法陣の術式は習ってはいない。仕組みこそ本で学んではいるが食物の鮮度を保つ便利な生活用品という物という認識である。祖父が開発した[水洗トイレ]は特に森と共に生きるエルフに好評で今なお改良され売上を伸ばしている。また服を清潔に保つ[洗濯機]と[乾燥機]は瞬く間に売り切れ今や我が家は金銭上では裕福と差し支えないような生活を送っている。だが質素な暮らしであるからこそ精神性は磨かれるとニーナは考えているので贅沢はほとんどせずに家計を預かる身としてはきちんと計算をしながら使っている。祖父の賭けごとも度が過ぎるようになったのでとうとう小遣い制に踏み切ったら兄は兄で良い判断だと褒めてくれた。
「……小遣い金貨1枚とか……」
「パチンコに興じるからだよ」
蕎麦屋で苦渋の顔をしながらいつも通り蕎麦を打つ雪人に太一はため息をつきながら声をかける。ここ最近家には金をいれているものの………、賭けごとに金をかける事の方が多くなり、負け越しては熱くなり稼ぎの半分以上もつぎ込む事からとうとう孫のニーナに小遣い制を言い渡された。太一は幼い弟達には優しい祖父として映っているので賭けごとに狂う様は余り見せたくはないので丁度良いと考えてた。
「……まあいいや、もうそろそろガキ共も幼稚園に入れるつもりだったしおとなしくするよ」
「ああ、魔法の基礎を教えるって話か」
「ああ、提案あっちゃんとマルコキアスがノッてきてよー、この共和国で世界初の幼児向けの幼稚園が産まれたっつうわけよ、ちなみに園長はあっちゃんな」
「先生は子供好きだからね、それに良い事と悪い事を子供のうちに判断できるようになるのはやはり有益だよ」
「幼稚園の教諭はうちのギルドから子供好きなのを派遣すればいいしな」
雪人はカカッと笑う。
「それでインターネットはどうなんだ?」
「ああ、この前配信したらあっという間に浸透したわな、テスターにそれぞれの大陸の国に置いたのがよかった」
「コンテンツは確か教養番組に政治経済、ネットニュースにネット通販だっけか?」
「あと、18禁のアダルトコンテンツもあるな」
「……どこの世界も刺激するところはそこか」
「男も女も最終的にはすけべえだろうよ、おめえみてえなのは特殊だ特殊」
「……そんなに淡白だろうか」
「おめえはあんだけ美女に迫られて人助けばっかしてそろそろ曾孫をみせろってんだ」
「そればかりわな」
「あ、後女性向けアダルトコンテンツの閲覧が多いって話だな、そこらへんはあっちゃんあたりに任せてるから内容は知らないが、後こちらには[避妊]の重要性が余り浸透してないみたいでな、そういうのに明るい医者をアダルトコンテンツの教養系に配置したよ」
「……子供は大きな事だからな」
「まあそんな感じで要望があればコンテンツは増やすかな」
「……娯楽は教養と紙一重だな」
「全くだ、有用にするかしないかはそいつ次第だ………つうかもうおめえから来てから1年か」
「……まあ悪くない生活だ」
「全くだな」
祖父は孫に冷酒を注ぎ共に煽る。




