女の園
女だけの国家というものがこの世界には多数存在する。しきたりであったり、種族固有の能力の保全が理由であったり様々ではあるが、男子とは契る時以外は関らないという国の事情というのが存在する。
出生率が全て女性という女性国家アマゾネスもまたそれに連なる国家なのである。
「それで俺なんで呼ばれたんですかね」
「不運としかいいようがないね」
目の前の青色の髪の男装の麗人、美しい中性の美女……女王アマリリスがため息を吐いた。女王が言う所によるとこの国の姫も含めて16の時になると夫となる男の選定の儀式というものがあるらしいのだが件の令嬢というのはこの国の女王の腹違いの姫となる。
「……闇の眷族との子ですか」
「ああ、不死人に凌辱され産まれた闇の子だ、私も国の者も別に普通の子として育てていたんだがな、母親を凌辱した者は処刑したし……父がいれば少しは違うのだろうが、国としての規約をそうそう変えることもできん……」
ウェイブは国の事情にはあえて触れずに質問する。
「何故姫さんは自分が闇の眷族とのハーフだと?」
「彼女は吸血種でも上位の種のバンパイアだ、いくらヒトとの血が混ざっていたとしても吸血衝動は計り知れない、仲の良いメイドを手にかけてな、大事には至らなかったが」
「それがそのまま男性嫌悪に転化したのか」
「ああ、気丈に見えてもな、やはり16の子にはな……そういうわけだ、君を呼び寄せたのは太一君が君ならば適任だろうという紹介あってだ、期待をしている、謂わばこの国に男子を置くのは特例なのだ、この国から嫁にいくことはあってもね」
ウェイブはふむと頷く。
「まあ俺も眷族的には似てますからねえ」
「……まあ深くは聞かないよ」
「それはありがたい」
白塗りの美しい城内を見ながらウェイブは肩を竦める。
「嫌よ」
白い白髪の美しい白磁のような肌の少女は静かに告げた。側仕えの老婆に今回の男子の話をされると眉間に皺を寄せる、出自の話をされて以来、男はただの化け物と大差ないものとして少女は考えている。外の世界に行った時もまた醜い男共に値踏みをされていた。そのことに対して少女……この国の姫であるホワイトローズはこの話を拒否していた。いくら国の儀式であろうとも生涯一人で生きると決めていた。
「難儀そうな姫さんだなあ」
部屋にいつのまにか現れた男にホワイトローズは驚きの表情を浮かべた。




