企みはなった
「……矢崎……何故貴様は悪人となり私をも騙したのだ」
細波は矢崎が死んだあとに発動すると思われる言魂の魔法を聞きながら悔しげに歯噛みする。
「あの子を誰よりも愛してたのはお前だったのに」
「おのれおのれおのれ!!!矢崎謀りおったなああ!!己の生命を代償した封印魔術!これでは!!」
「……ちっいけすかねえな」
目の前の老人を滅ぼすと同時にサイスは静かに告げる。
「矢崎……貴様は最後まで……」
「……あんたの主君は察するにヒトになったのか、それであんたはどうする?」
「……ふ、拳を向ける道理はないな、それに俺が主君としたのは大いなる力を持っているからではない、彼女に心底惚れたからだ!」
「……なにそれこわい」
目の前の精悍な顔をした男を見ながらウェイブは煙草を吸った。
「任務終了ね」
真弓は肩を竦めて翼を消す。
「ぬ、お主矢崎とやらの計画にのっていたのでござらぬのか?」
「……その矢崎が役目を終えたから私も御仕舞ってこと、アリスちゃんを普通の子にする事が彼の願いだったしね、本当に馬鹿よね、皆敵にまわして最後は命を捧げて」
「……惚れていたのでござるか?」
「かもねー、あいつはもういないからなんともいえないけど、少なくともあいつは仲間は大事にしてたね」
真弓はどこかさびしげに苦笑した。
「まあ先生、ここからは野暮よ、後は後始末を終えるだけだから、この街を壊してね」
「……そうだな、聞くのは野暮か、敵対せぬならば手伝おう」
「助かるわ」
真弓はにこりと笑う。
「……うあ、自己犠牲なんて流行らねえー」
「でしょー、でもうちの兄貴それしちゃったのよねえ」
矢崎の企みを月に聞きながらバルバトイはため息をつく。
「全てを引き換えにしてもネオとヒトとの共存を目指すために悪人になってね、ボスの事だから良心の呵責に苛まれるだろうね、ざまあ」
「大概良い性格だな、あんたも」
「まああんな兄貴にしてこの妹よ、情報流してたアーケードのお婆ちゃんから連絡きたけど、ミラージュも見事に捕縛されたし、後はここの階級制諸共壊すだけ、共和国移住は決まってるしね」
「また国民ふえんのかー、まあいいや敵対しないんなら、手伝うわ」
「わお、そりゃ助かる~」
先ほどとはうってかわって気易い態度にバルバトイは苦笑した。
「……やれやれ、なかなかの策士だな、矢崎よ、他の連中ももうやることもないようだし、今回はこれで終いか」
太一はふうとため息をつくと
「ネオ達の戸籍やらも考えないといけないな」
新たな隣人たちへの配慮を考えはじめた。




