砂礫の大地の王
遥か西方に位置する砂漠舞う大国スウェード。オアシスの湧き出る平和の都。昨日雄大な大地を持つインペリアル王国の姫君とスウェード王クロム=スウェードとの婚礼が終わったばかりである。また妹であるサラ=スウェード姫もインペリアル王国の王子との婚約もし更なる自国の繁栄に民は喜びを表している。
「……本当に太一さんには頭があがりませんわね」
妻である人間族の姫……シリア=スウェードは静かな夜の月のバルコニーで夫であるクロムに声をかける。
「……ああ、私には過ぎた友人だ」
妻を愛おしげに抱きしめるとクロムは婚礼でも会った大恩ある友人を思う。かつて二つの国は敵国であった。武術に優れたスウェード王国と魔術に優れたインペリアル王国………スウェード王国は人間を乏しめインペリアル王国は獣人を乏しめた……そして共通としてあったのは暴君であること王族である身内には優しいが、民に重税をしいて苦しめ間引きと称して国民を惨殺する。そのような異常事態が両国内ではあった。その中で異議を唱えていたのは王子であったクロムと妹であるサラ……、そしてインペリアル王国ではシリアとそして弟であるリク=インペリアル。
クロムは政治手腕と文武に長けた最高傑作とされる王子であった故に民があっての国という事を産まれながらにして理解していた。またシリアもインペリアル王国において最高傑作とされる魔法使い。故に王達は彼らの民草への想いを異質なものとしてしか見ていなかった。
そしてある時視察と称してお互いの密使に扮して国境に来た瞬間巨大な魔物が出現し、お互いに協力して戦い自分達の心が同じという事に気づき恋に落ちる。本来ならば赦されない恋ではあるがそれが二人をより燃え上がらせた。そして一つの愛の形を実らせシリアの腹に宿らせる事になる。シリアとクロムの子だ。だがそれはお互いの王族に知らされる事になる。そしてお互いかけおちをして逃げ出そうとした瞬間刺客に襲われ瀕死の重傷を負ってしまう。せめて妻と子を逃がそうとした瞬間……。
「……やれやれ久々に友人に会いにきたら大層な事だ」
聞き覚えのあるのんびりした声が聞こえたと同時にいつも殲滅魔法の音が聞こえた時点でクロムは意識を手離した。
「……あなた」
シリアが目に涙をためながら彼女の頭を撫でにこりと笑う。そして事の成り行きを聞くと、近年の我が国とインペリアル王国の度が過ぎた統治は問題視され世界の交流や統治の問題解決を目的とした世界機関[ワールドレフェリー]から長であるアーケード=ギアスから連名で[無頼翁]雪村雪人……[闇鴉]マルコキアス=レイヴン……[常世の魔剣士]エーファの父である……ラルク=ヴァーミリオンからの通知により招集をされるもお互いの国王は武力を持って一蹴………敵国でありながらも同盟を組むも一人の狩人に滅ぼされる。
その狩人の名は[白銀の狩人]雪村太一……スチームクリミナル共和国を民主制へと導いた雪村雪人の孫である。彼は大魔術師アーケードが生涯で一度きりの弟子とまで言わしめた魔術と武術の申し子。我が友人でもある男。
「……面倒だ……肌の色や種族の違いで差別するなど」
前の世界でも似たような事があったなと彼はよくわからない事を呟き一瞬で両軍を氷つけにしたらしい。空気中の水分を氷結させ大規模な氷を産み出しその中に両軍の精鋭を閉じ込めるとそのまま話を淡々と告げ王達の王位をそのまま奪い両国の第一王子と第一王女であるクロムとシリアに与えたのだった。
後から聞いた事だが……全世界を駆けまわる太一には世界機関の特殊エージェントである資格が与えられているらしい。この特殊エージェントの資格を有する者は世界で四人しかいなくその効力は時に一国の王をも権力を上回る。故に資格を保有する者は巨大な魔力と公平性と身体能力を持つ者でなければならない。またその特殊エージェント達に任務を言い渡すのは長老会という世界機関の重鎮達であり、最近欠員が二人ほどでた所で太一の祖父である雪人と友人であるマルコキアスが入る事となった。
「……しかし砂漠の迷宮で意気投合した無表情な男が世界の運命を左右する男だとはな……」
クロムは今更ながら己の友人の凄さに苦笑をした。




