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とある異世界にて狩人は笑う  作者: 作者不明
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幕間2 三人の王




一人の兵士がただ一人母国を護るために剣を奮っていた。彼の名はヘルムンスト=ラングリット……栄えある花の都リムローズの第一番隊隊長……最強と名高い[剛剣]の二つ名を持つ重剣士。彼が部下を返し国を護るように指示したのはいつものように警羅中の事だった。



かつての大魔王大戦にて封印されたとされる魔剣ギムレットが都から目の先の常闇の森に存在するのを確認したからだ。そして運が悪い事にそこには冒険に来ていたとされる幼い少年達が倒れていたのだ。すぐさま瘴気を防ぐ魔法を展開。部下に少年達を保護し都へ戻るように伝える。



魔剣ギムレット……それは大魔王大戦にて残虐のままに剣を振るったとされる[残虐王]ギムレット=ギルバーンの愛剣だ。200を越える体に300万の軍勢を片手でなぎ倒す恐るべき力を持つ持ち主……魔人族の中でも高位の力を持ち死を好み続けた戦闘狂。打ち取られた後も魂なき状態でも30万は残虐したとされる恐るべき王。勿論魔剣ギムレットにも主の名を受け継いだとおりの残虐性……また彼は鍛冶師としても有能で自分の鍛え上げた剣を[娘]として可愛がり剣霊として覚醒させた事としても有名だ……。そしてその封印は今解かれようとしている。





「……久方ぶりの血ね」



目の前に居るのは可憐な美女……紅色の髪に黒いルビーのような瞳、黒いドレスにどこか悪魔めいた美女。一度は心奪われるような容姿ではあるが……。彼女は幾多の血を啜り屍を刻んだ大魔王の愛剣。ヘルムンストを塵にするのなど簡単なのだ。すでに数度の剣劇で満身創痍になっている。だがリムローズ最強は自分で常に護る事を頭に考えていた。鍛錬も欠かさず行ってきたしそれが赤子を捻るように倒されるとは……。





だが倒されるわけにはいかない。






目の前の美女がにやりと笑いながら自分の黒剣を構えると同時に身体強化を高めていく。






「……血生臭いな」




「花の都というのに不釣り合いだのう!」



「……魔素が濃いな」



そこに現れたのは一人のローブを纏った白い髪の若い男とどこか爺のような喋り方をする若いダークエルフと毛並みの良い武闘派と言われる二足歩行の魔獣族……黒豹族の青年だった。



「……お前のデートに贈る花束を買うのに付き合ったらとんでもないの引き当てたな。あれ魔王の剣だぞ」



「……そうだな、記憶にある文献通りならば魔剣ギムレットだ……父上を手こずらせた魔剣だ……剣霊覚醒をしている所を見るともはや魔神の域に達していると見た」




「……とりあえず回復させるぞ」



黒豹族の青年がヘルムンストを一瞬の内に自分達の所に引き寄せると回復術を行うと一瞬で傷が無くなる。




「……おんし、あれだの……武術家のくせに回復術うまいのお」



「……父の教えだ……死すら回避できるようになれ」



「……やれる事は多い方がいいさ」



白い髪の青年……雪村太一は友人二人に声をかける。



「……そうだのう!!」



若いダークエルフ……エーファ=ヴァーミリオンは笑いながら言う。



「……それより魔剣の処遇だな」



黒豹族の青年クロム=スウェードは静かに語る。



後に三人の王と呼ばれる若き三人の青年の初陣である。







「父を殺したあの男の息子か」




殺気が三人の青年に向けられる。だが三人の青年は気にもせずに想い想いに声をかける。



「……綺麗な割には恐ろしいな、だが余り危ない真似は良くないぞ」



「父が御主の父を殺したならば武人として私が相手をしよう!関係ない者を巻き込むな!貴様の父は残虐ではあったが武人としての誇りはあったと父は言っていたぞ!」



「……王なのだからもう少し言葉をわきまえろ……エーファ」



「……コロシテヤル」





ギムレットの黒い魔力に呼応して死者達が土から蘇ってくる。





「むう!スケルトンか!神聖武器など持ってないぞ!面倒だ!」



「……わかります……雑魚殲滅は俺とクロムの担当ですね」



「……正しくは太一の担当……神聖魔王火力高いの太一の方でしょ」



「……さすがはネコ科?ネコだね、もういいよ俺がやる」



「友情って素敵だね」



「では私があの小娘と闘おう」



ヘルムンストはその戦いを見てこう言った。一瞬の出来事だったと。





「……詠唱なしでいいや……神聖系なら祈り系でいいか」




そう言うと目の前にいる数十体のスケルトンに白い光をあてて消滅せしめた。




「ふむふむ、呪殺系の魔法をバシバシしてくるな……だが心地良い!!」




「……時々普通なら死ぬくらいの魔法を受けて笑顔で心地良いという彼は阿呆ではないかと思うんだが、どう思います?」



「は、はあ」



クロムに問われてヘルムンストは苦笑するしかなかった。





「なんでなんで死なないのおおお!!!!」



「それは私が王だからだ!!」




そう言うと同時にギムレットを押し倒し組み敷く。



「……美しいな!お前」




「はあ?」



いきなりの言葉にギムレットは剣を落とす。




「ふむ、剣霊とて夫婦の結びは可能だし、子を為す事も可能ときく……そしてお前は我が父と戦い死しても手こずらせた男の娘……」





「……太一……あいつ阿呆だろう?」



「……まあそれがいいんじゃないか?」



友人二人はため息をつきながら事の成り行きを見る。




「良い!よしお前を嫁としよう!」



「……頭わいてんじゃないの?」



「はは、如何せん父にも母にも息子は[イカレ]と言われている!寧ろ父達の話もまた盛り上がろうというもの!ではギムレットよ!!」



「きゃあああああああ」



ギムレットを抱え上げ悲鳴と共に転移をした。



「……デート相手どうするんだろ」



「……まあどうにかするさ」



二人の青年はふうとため息をつく。ヘルムンストがその後テレビが普及した後に知った彼らの通り名を聞き、彼が告げた三人の王という言葉が語源のはじまりだと聞く。




ちなみにその三週間後魔王殺しの息子と魔王を殺された娘との婚礼が世界に告げられた。


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