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作者: 昌吐

「私」

とても退屈だ。

葛藤。葛藤。葛藤。最近の趣味は葛藤。

頭の中に言葉が繰り返される。単語が、脈絡もなくさまざまな事柄が、あちらからこちらから。あぁ忌々しい。

しかしこれには意味があるのだ。私という存在を私自身が認識するためには、私の中で、私の意に介さぬ何かからの言葉を引き受けながら、その言葉の意味を、自分に対する価値を考えなければ、私は私でいられなくなる。

また言葉が浮かぶ。必要なものとして認識したとしても、それが不快なものであるのには変わりない。少なくとも私にとっては。

「女」

彼女はとても純粋だ。

ひたすらに無垢な心を持つ彼女は、無垢だからこそ悩み、惑い、苦しむ。

彼女が淀みのない瞳を見せたとしても、他のものが同じくそれ返すとは限らない。世間知らずな彼女はそんなことは全く予期せず、無邪気な愛を放つ。そして彼女は傷つき、汚されていくのだ。

彼女自身は悪くない。生まれたこの世の中が悪いのだ。

「男」

彼は私に似ている。

ひどく冷めた目で世界を見つめている。

しかし、勘違いをしてはいけない。彼は誰よりも愛を知っている。彼は人が人に抱く愛ほどの真実はないと信じている。そしてそれを失った悲しみの深さも、彼は知っているのだ。だから冷たくするのかって。そんな単純な話なら彼はいらない。彼はとても重要な存在だ。彼の瞳が冷たく開かれたその時から、彼はいつだって私の意識の中に存在するようになった。

しかし残念だが、彼は私のことを知らない。

「赤子」

悪。

まさに悪。

無知は罪ではない。だがあの子は悪で、罪人だ。

赤子とは人間だろうか。人という生物が構築する社会の中に一つの個としてあるものが人間だと私は考える。それぞれが認識するお互いの像が人間を人間たらしめるのだ。

赤子は何を認識しているのだろうか。自分が赤ん坊だったとき何を考えていたかなどはほとんどの人間がおぼえていない。彼も彼女も。

話が逸れてしまった。そんな普通の赤子の話はどうでもいい。

あの子を表すのは、悪の一文字で十分事足りる。ほかに何も言うことはない。


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