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兄と彼女

いろいろと引っかかる描写もあるかもしれませんが、スルーしていただけるとありがたいです。

私の兄と、子どもたちの話をさせていだきたいと思います。

もしかしたら、知っている方もいらっしゃるかもしれませんね。


聞いていただいた後に、私の願いも、聞いてください。


あぁ、申し遅れました。

私は、ネア・レリーシャ。

兄は、キル・レリーシャ。



このトルーア王国を知っている人ならば、レリーシャ家を知らない人はいないのではないでしょうか?

王家と最も近しい血筋の大貴族ですから。




◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


レリーシャ家には、私と兄しか子供がいませんでした。

兄は、聡明で、剣も強く、容姿端麗の好青年でした。  

兄は、レリーシャ家の次期当主として周りから期待されていたし、そんな兄が私には誇らしかった。


優しい兄と、恵まれた環境。

私は、この幸せが永久に続くと信じていました。

この国の末の姫が、兄と婚約すると言い出すまでは。

姫が、兄の容姿に一目惚れし、国王に頼み込んだのです。

末の姫を溺愛されていた国王は、兄と姫を婚約させました。

私の両親を含め、周りの者たちは兄と姫の婚約を祝福しました。

これで、レリーシャ家はさらなる繁栄を手にすることができる、と。

兄を狙っていた令嬢たちも、姫の可憐さ、兄と並んだときにとてもお似合いだったので大人しく諦めました。


でも、私はお似合いだとは思いませんでした。

兄の顔は、絶望に彩られていましたから。


兄は、幼い頃から大切にしていた一人の女性がいましたから。


トルーア王国の人間の髪は、大体が黒、茶色、金髪です。目は自分の髪の色。

けれど、兄の大切な彼女の髪は、真っ白です。

目は、燃えるような赤でした。


どこの世界にも、差別というものは存在します。

彼女は、その髪と目のせいで、差別の対象者になっていました。


私は、生まれたときから兄の隣に彼女がいたので、そういう感覚はなかったのです。

むしろ、人とは違う彼女を美しいと思っていました。

兄に笑いかける彼女は、本当に美しかった。



けれど、私たちの両親は違います。

由緒正しきレリーシャ家の次期当主として、差別の対象者になっているような彼女といるのはふさわしくない、と兄に常に言っていました。

いつも優しい兄は、そのたび見たこともないような顔で両親に反論します。

彼女と共に生きていく。そのためならば、レリーシャ家などどうでもよい、と。

父は怒り狂い、母はヒステリックに泣け叫びました。

私は、兄がいなくなるのは寂しいけれど、兄と彼女が幸せになれるならばそうすればいいと思っていました。


けれど、強制的に姫と婚約させられてしまった兄。

公に発表される前に、私は彼女と話をしました。


「兄は、姫との婚約なんて望んでなかった。」

「兄が愛しているのは貴女だけだ。」

「きっと聡明な兄の事だ、きっと何とかしてくれる、貴女はそれを待って。」


優しい兄に報いることができるよう、彼女に必死になって訴えました。


「いつか、こうなる気はしていた。」

「私の髪と目の色では、認められることはないだろう。」

「彼は、私を愛していると言ってくれる。」

「私にも、彼だけだ。」

「理解してくれるのは、貴女だけだ。」

「ありがとう。」


彼女は、悲しそうにほほ笑んでそう言いました。

私には、泣くことしかできませんでした。

優しい兄と彼女を守ることができない。 

それなのに、彼女は私にありがとう、と言うのです。


その晩、兄に呼ばれました。


「彼女に、いろいろ言ってくれてありがとう。」

「僕は、姫と婚約する気はない。」

「僕には彼女だけなんだよ。」

「ネアには、迷惑をかけるね、すまない。」

「ありがとう。」


また泣いてしまった私の頭を撫でながら、兄は優しく笑っていました。


考えました。どうすれば兄と彼女の幸せな未来を手に入れることができるのか。

でも、兄のように聡明ではない私には考えつきませんでした。


そして、姫と兄の婚約が正式に発表される日の朝。

眠るように死んでいる兄と彼女が見つかりました。

手を握りしめていました。


怒り狂ったのは、父と国王でした。


「レリーシャ家の恥だ。」

「姫の心を傷つけた。」

「どうしてくれるんだ、この馬鹿者。」


「それもこれも全て、この女のせいだ!」


全て、彼女のせいになりました。

彼女のせいになったおかげで、レリーシャ家をお咎めはありませんでした。


優しい兄は、彼女とともに消えました。

美しかった彼女は、兄とともに消えました。



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