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頼むから帰ってくれ!!

作者: 冬風

 ※ネタとして同性愛という単語が出てきます。本作にはあまり関係ありませんが、作者的には重要です!



 「離婚しよう」


 「おk把握!!」



 そんな軽い感じで私達は別れました。

 結婚生活5年。

 今思えば長く続いたと思いますね。


 夫だった彼は中堅会社で働く正社員。

 私は近くのスーパーで品出しを行うアルバイト。

 ただ単に行きつけの喫茶店が同じで、たまたま座った席が近かっただけの関係。


 彼は顔の整った所謂イケメン。

 しかも仕事も出来て収入も安定している文句なしにいい男。

 性格も温厚で優しいしね。

 同じ会社の女性社員からの黄色い声も多かったみたい。


 対して私は平凡な女。

 寧ろ不細工かな?

 性格だけは良い方だと思っているけど、どうなんかね?

 人の悪口だけは言わないように気をつけているけど。

 生きている人間だから、うっかり口を滑っちゃう事もあったしなぁ。


 そんな彼と私が良く分からないままに付き合いだした。

 海辺に行ったり、紅葉を見に行ったり、暇があるときには温泉に行ったりもした。

 1年位かなぁ。そんな生活が続いて。


 で、まぁ結婚したわけですよ。

 一応は彼からのプロポーズでね。


 家事全般は私の仕事。

 彼は仕事とたまに私のお手伝い。

 適当な私と真面目な彼の生活は思ったよりも上手く行ってた…はず。

 少なくとも口喧嘩をしても次の日には互いに非を詫びたりした。

 大抵は私が悪いんだけどね。


 毎日家の中の仕事ばかりしていると何だか家政婦さんになったみたいな気がして。

 ついつい彼に文句とか言ってしまうわけで、はい。

 完全に私の八つ当たりで彼には何の非もありません。

 働こうと思えば働けるのに「時間が無い」だの「疲れている」だの。

 まぁ、文句だけは一人前に出てくるんですよ。


 仕事関係で行き詰ると彼も愚痴が多くなってくるんです。

 上司がどうだの、「新入社員が使えない」だの。

 分からなくは無い愚痴ばかりですね。

 慣れている彼からしてみれば、入ったばかりの社員に教える手間が惜しい。

 その間に終わらせる事のできる自分の仕事が溜まっていく。

 そんな毎日でたまに愚痴が零れちゃうんですよ。

 疲れを溜めるのは良くないからね。

 私だって分かっているんで黙って聞き役に徹しますよ。


 …ある程度。お酒を飲ませちゃえば寝るからね。

 少しの間の我慢ですよ。

 一時間くらいは愚痴を聞いてあげて、そこから先は酒を勧めて。

 酔って来たあたりで寝室に運んでお仕舞いですね。


 そうそう。

 私達って夫婦なのに夜の営みを一回しかしてないんですよ。

 結婚初日だけはしましたけど。

 それ以外は一度も無かったですねぇ。


 あれ、正直な話。痛いだけなんですよね。

 彼は気持ちいいのかもしれないけど、私はただ痛いだけ。

 やらないに越したことはないですよ…本当に。



 まぁ、そんな話は置いておいて。

 冒頭のようにあっさりと離婚したはず、何ですがねぇ。



 「いい加減に帰れ」


 「頼むッ! 帰ってきてくれ!!」



 どうして彼が扉の向こうに来てるんでしょうか。

 あれ? 私達って別れたよな?

 ……うん。ちゃんと受理されている。



 「いやいや。アンタとはもう他人だから。帰れ」


 「君じゃないと駄目なんだ!! 友人としてでも良い! 同居してくれないか?!」



 そこで「結婚して欲しい」とか言わない辺りが彼らしい。

 段々と彼にほだされて再婚してしまいそうな自分が怖い。

 友人としてなら良い物件…じゃなかった。

 素敵な(寄生虫)生活が出来そうなんだけど。

 それだけで済みそうに無いところが恐ろしいわ。



 「却下で。あ、でも」


 「なんだ?! 何すれば帰ってきてくれる?!」


 「…アンタがガチムチの彼氏と恋仲になってくれるんなら同棲しても良いかなぁ」



 リアル同性愛。

 無駄に顔の整った彼ならそれすらも許せそうだ。

 イエス二次元。ノー三次元。ただしイケメンは許される。


 彼が同性愛主義者だったら毎日愉しく過ごせそうだ。

 主に彼等の愛の営み的な意味で。

 友人として住むなら、ね。

 本当は物凄く危険な感じがして同居したくないけど、何時までも扉の向こうにいられると怖い。

 

 少しずつヤンデレになっていきそうで怖い。

 それなら適度なところで折れるのが吉、だろうか。

 いざとなれば彼氏さんも巻き込もう。



 「…くっ。分かった」


 「えッ? 分かっちゃったの?! マジで?!」


 「今すぐには無理だが…数日以内に彼氏を連れて来ようじゃないか。…彼氏を連れてきたら本当に同居してくれるんだな?」


 「フッ。当然だ。女に二言は無い!! あ、でも一緒に住むだけだからな?」


 「任せてくれ! 君の趣味に合う男と俺と君。素晴らしいじゃないか!!」



 あれ? アイツ頭可笑しくなった?

 変な笑い方してるんですけど。

 もしかして変な性癖に目覚めちゃってる?

 私、何か悪い事したかなぁ?



 とりあえず。

 面倒事に巻き込まれそうなので遺書だけは残しておきたいと思います。

 なぜだか涙が止まらないんですけど。

 あんれ~? 死にに行くわけじゃないのになぁ…はは…。



 「しかし!! 只では転ばんぞ!!」



 元夫とその彼氏との営みを薄い本に書き上げてやろう!!

 はーっはっはっ!!


 ※読んでくださり有難うございました。


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