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雲ひとつない真っ青な空。
そんな気持ちいいほどの青空を羽根いっぱいに広げて飛んでいるのは鳥になった元人間の俺です。
ある日、眠りから覚めたら違う世界にいて、しかも人間じゃなくなっていた。
どんなドッキリですかって話だよ。
そんでもって、鳥といっても小鳥じゃなく、鷲のような大きな鳥の姿をしている俺は、どっちかっていうと、猛禽類。この世界では魔物に分類されている。俺、魔物って…。
人間に会うと攻撃されます。
なので、人恋しいが近付けないという罠。この世界の詳しい話すら聞けやしない。
日々、木の実やキノコ、草、小魚など食べている。さすがに生肉は無理だけど、どうにか生き抜いている。
しかし、質素な食事は飽きた。
調理した料理の味を知っている俺としては、今の状態に不満を抱いている。鳥の姿では調理なんて出来やしない。
…縄張りを広げてみるか。
もっと美味しい木の実が見つかれば、気も少しは晴れるだろう。ブドウとか食べたいなーと、縄張りから離れて風に流されるまま飛行する。
しばらく飛んでいると、森の中なのに一軒だけ小屋がポツンと建っているのを発見した。
集落ではなく、こんなところに小屋があるなんて珍しい。危険な魔物だらけの森に人間が住んでいるなんて。
興味を惹かれた俺は小屋の屋根に降り立った。
辺りを見回す。
小屋を作る時に切り倒したのだろう材木分だけ広がっている小さな土地には畑らしきものがあった。
あれはなんの作物だろうか?
俺は飛んで畑に近づいた。
地面に降りて、実っているものを見上げる。
緑で長細い。
んー、これはキュウリかな?
もぎ取って地面に落とすと、早速食べてみた。
うん、キュウリだ。
俺のいた世界と異世界の食物は似ているから、助かる。
安心して食べれる。
パクパクと1つ丸ごと食べ終えて顔を上げると、人らしき大柄な男が立っていた。異常なほどのギョロ目。インパクト大。
嘘、全然気づかなかったんだけど。どんだけ夢中になってがっついてんだよ俺。まずいな。
俺は前世で畑を荒らした迷惑なカラスが人間に追い払われるニュースな光景を思い出す。
あの人間も大声を発して追い払うのかと、警戒していたが追い払うどころか、一向に動かなかった。
見つめ合う俺達。
え、なにこれ。
見つめ合う俺達。
え、どうしよう。
見つめ合う俺達。
うん、逃げよう。
俺は翼をはためかせ空へと逃げた。
人間がいた場所を見下ろすと、まるで俺を引き止めるように右腕を上げていた。
…トロそうな奴。
明日また食べに行こっと。
良さげな餌場…、食事処ゲットだぜ。