変わらない関係
男の子視点です。友達のままの関係の話。読みやすいかな、と思います。
友達。その関係から始まったーー。
友達の女の子。最初は友達としか思ってなかったのに。いつから、一人の女の子として好きになっていたんだろう。友達と思っていた女の子。お互いに恋愛話をしたり、軽くふざけあったりした頃が懐かしい。今では、君の彼氏の話や好きな人が出来たという相談をされたら、嫉妬してしまう。君に好かれてる人が羨ましくて、元彼や君の男友達にもたくさんヤキモチを妬いてきた。君は知らないんだろうなあ。
「ねえ! 今日、暇? 時間ある?」
「あるにはあるけど。どうした? またなんかの相談か?」
君の相談はいつも恋愛ばかり。相談事を持ちかけられると不安になるし、君の鈍感さにイライラしてしまったりする。頼ってくれてるのはすごく嬉しいのに。
「んー。相談っていうか……勉強、教えてほしいんだよね」
「勉強? いきなりなんで?」
「先生とか……親に怒られちゃって。それに、このままじゃ不安だから!」
必死な姿になんだか笑みがこぼれる。小さいのに、頭を下げそうなくらい頼み込むなんて。そんな君に惚れた自分がなんだかなあって思う。
「いいけど。どこで勉強しようか」
「あ、それならいいところがあるよ! わたしに任せて」
背中を押され、道を歩く。君は明るい賑やかな鼻歌を奏でながら歩いている。そんな君が向かう先には、最近出来た人気のドーナツ屋が。
「ここのドーナツ美味しいんだよ! 勉強しながら甘いもの食べれるなんて最高だと思わない?」
「……思いつきが君らしいなあ。甘いもの、好きだよな」
「うん! 幸せな気持ちになるよ。女の子はお菓子大好きだから」
本当に、幸せそうに笑う君に、つられて笑ってしまう。友達だから、この距離でいられる。友達だから、なにも変わらないまま。それは、幸せなのか、苦しいのか……分からないままだ。
「暗い顔してる。早く店に入ろう! きっと、笑顔になれるよ!」
店に入ったら、君がドーナツを注文して、待ってる間にテキストで勉強する。運ばれてきたドーナツは、いかにも女の子が好きだろう、チョコやイチゴのドーナツ。モチモチのパンみたいなものまであった。
「食べてみて。きっと美味しいよ」
君がすすめてくるから、一口食べてみる。甘い味とサクサクの生地がドーナツとは思えないほど美味しい。
「それ、わたしが一番好きな味なの。笑顔になったでしょ」
にこにこ。君は笑顔をよく見せる。よく見れば、君はドーナツが好きだと言っていたのに、一口も食べてない。手にすら持っていない。慌ててドーナツを君に渡した。君はきょとんと、目をぱちくりとさせる。
「食べろよ。これじゃ、男一人が食べてるだけじゃん」
「……それは、君へのお礼なの! 暗い顔してたし、いつもわたしの話聞いてもらったり、愚痴を最後まで聞かせちゃったり。だから、ドーナツはお礼! 全部あげる!」
君はぷいと、顔を背けた。その気持ちをありがたく受け取り、ドーナツをもらう。君はだんだんとドーナツをチラリと見てひとつだけ手にとった。
「んー! 美味しい!」
「お礼なんだろ? お前が食べてどうするんだよ」
「そう、だけど! 美味しいんだもん! でもね」
ドーナツと同じくらい、君に感謝してるし、君のことが大好きだよ。
そう言って、君は笑った。