望んだものは
明るい話ではありません。暗い話なので苦手な方は読まない方がいいかもしれません。
印象。君がわたしに思っていることーー。
雨の中、走る。雨が降ってるとか、制服が濡れるとか、どうでもよかった。それよりも、君がわたしを恋愛対象と見ていなかったのが辛かった。期待していたわたしがばかだった。
先ほどのことを思い出して、目の奥が熱くなる。雨なのか、涙なのか分からないものが頬を伝う。声にならない、涙声が震える。
「わたし、に……期待させないでよ……。思わせぶりな態度なんか、いらない……」
わたしが欲しいのは。思わせぶりな態度でも、曖昧な関係でもない。君がわたしを好きになってくれれば、それでよかったのに。君がわたしだけを名前で呼んでくれること、心配してくれること。でも、それはわたしの自惚れでしかなくて。期待したわたしがばかなだけで。君はいつか、振り向いてくれると信じてた、わたしがだめで。
君はわたしを女の子として見てなかったから。優しくごまかすのなら、思いっきり振ってくれた方がよかったよ。君だって、気付いてるはず。わたしが君を好きなこと。知ってて、優しくされて自惚れて……結局、傷付くのはわたし。もう、疲れた。君を想うことも、わたし自身に嘘をつくことも。
泣きながらそんなことを思っていても、意味がないだろう。君を想って涙を流すのは、君を好きってことなんだから。いくら強がっていても、君を好きだという気持ちは消えないんだ。
君といた毎日はキラキラしてて。ずっと、ずっと言いたかった言葉。ずっと、ずっと言えなかった言葉。今なら、言える気がする。わたしは……わたしは……。
「君のことが……ずっと、好きでした」
焦がれて、焦がれて夢中になった恋。精一杯、わたしなりに恋をした。好きという気持ちを届けたかった。きっと、わたしは何年経っても忘れない。楽しかった日々の、君の笑顔。君の笑顔を見るのが、嬉しかった。わたしね、君を想う時間が幸せだったの。恥ずかしくて、思えなかったけど。本当はね……君の全てが大好きだった。笑顔も、思い出も、なにもかも。君に惚れたわたしがいること。君との毎日が、最高に輝いているよ。思い出の中だけでも、色褪せずに。昨日のことみたいに、はっきりと思い浮かべることが出来るの。
「これで、最後……だから」
遠くに見える、君の背中を見つめる。他の人に紛れて、よく見えないけど、君だとすぐに分かった。本当に、これで最後だから。君の背中を見たら、諦めるから。せめて、今だけは。目に焼き付けさせて。
「さよなら……わたしの、好きな人。幸せな日々を、ありがとう」
言った途端。泣きやんだはずの涙が、また、溢れた。