再会
人の縁っていうのはとても不思議なものだと思う。
すごく仲良しだったはずなのに、何年か経つと疎遠になったり。何年も連絡もとってないのに、偶然再会したり。
運命とかそういう類いはあまり信じてない方なのだが、縁はつくづく不思議だと実感した。
「…………」
「…………」
無言で見つめあう男女。
他の人からみたら、甘い関係に見えるかもしれない。
信号待ちにイチャイチャしてるのかよって。
周りからしたら、だ。
俺のすぐ隣で俺の顔をガン見しているのは、まだ高校生くらいの幼さを残した少女。
視線を感じて隣を見ると見事に目が合った。
目が合った瞬間、驚きで言葉が出なかった。
向こうもたぶん、そうだろう。
目の前で目を見開き、口をあんぐり開けている幼き少女は、幼なじみであり、妹のように接していた女の子であったから。
といっても、それも10年くらい前の話だ。
お互い成長するうちに、一緒にいることも、話すことも、会うこともなくなっていった。
最後に合ったのは何年、何十年と前。名前すら、忘れていたのに。
成長した彼女を見て、一気に思い出がよみがえる。
美しく、少女から女性へと成長する途中で、少し幼さも漂わせている。
昔とは違って、綺麗で大人びた彼女にドキリとした。
「……久しぶり?」
「久しぶり……」
お互いに言葉に詰まって苦笑した。
何年、何十年という月日が経っているのだ。昔みたいに簡単に接することは難しいのだ。
寂しいけれど。
「……大人に、なったね」
「お互いさま。なんていうか……綺麗になったね」
「ええっ」
顔をほんのり赤くさせた君は、消え去りそうな声で、ありがとう、とつぶやいた。
その様子に変わらないな、と思わず笑顔になる。
容姿が成長しても、中身はあまり変わらないな。
恥ずかしがり屋で、控えめなまま。
妹のように可愛がり面倒をみてきた、彼女そのものだ。
「……会えるなんて、思ってなかった」
「俺もだよ。偶然だなあ」
「また会えて、すごく嬉しい」
ふわっと優しく微笑む君に、なんて言ったらいいのか分からなくて硬直してしまう。
そんな俺を見て目を細めながら、さらに口を開く。
「大人になったけど、大切なところはなにも変わってないから安心した。笑顔も、照れ屋なところも、穏やかな雰囲気も。昔となにひとつ変わってない」
「褒めすぎだろ……」
「ううん。本当のことだから。あなたは私の、初恋の人だから」
「は!?」
俺の反応にクスクス笑いながらほんとだよ、と言う。
想像もしてなかった言葉に頭が真っ白で、どうしたらいいのか。
太陽の暑さに、顔が熱を持ち出す。汗ばんできた手は宙をさ迷わせている。
喉も渇いてきた。カラカラで、声が出てくれない。
「ずっと好きだったんだからね。いつか会えたらいいな、って願ってたの」
「え、ちょ、待って……」
「待たないよ。今度はあなたが追いかけるんだから」
あの頃とは違う、からかうような小悪魔みたいな笑顔で俺に笑いかけながら、信号を渡る彼女を、もう幼なじみとは思えなくて。
幼なじみとも妹とも違う関係を築きたいと思った、この感情に気づくのはまだ少し、先のお話ーー。