目標
ホワイトデー。照れくさいし、くすぐったいーー。
色とりどりのカラフルなお菓子がいっぱい広がるデパート。
飴やマシュマロ、可愛らしいクッキーが飾られている。
バレンタインの日にチョコレートをもらったら、ホワイトデーにお返しをするという考えは、誰が決めたのか。
三倍返しだの、十倍返しだの……女の子って怖い。
そりゃあ、好きな人にチョコレートを貰ったら、他の子とは違うものを渡したい。……そう思うのは、おかしいのかな。
「あんたの彼氏、お返しなにくれるの?」
「えー? そんなの、知らないよ」
「高いものでも頼んだら? せっかくのホワイトデーだし」
「そんなことしないよ! 彼がくれるものは、なんだって嬉しいんだから」
俺と同い年くらいの女の子たちが、並べられているお菓子を見て騒ぐ。
好きな人から貰うものは、なんだって嬉しい。それは誰でもそうなんじゃないか。
俺だって好きな人から貰ったチョコレートは、誰よりも嬉しかった。市販だって手作りだって、チョコレート一粒だって。
その気持ちを、君にも感じてほしいと思う。
でも、君は誰を想っているのか分からない。
誰を想っているのだろう?
大切な君。可愛い君。君は優しい人だから。 余ったチョコレートをくれたのかもしれない。
でも。君に貰ったことは本当に嬉しかったんだ。
優しい君だからだろうけど、ほわんとしたあの笑顔は、見ただけで幸せになれる。
時々、嫉妬もしてしまうけど。君を独り占めしたいとか、彼女にできたらと思う。
それでも、やっぱり。俺にはそんな勇気がなくて。
君が選ぶような男じゃないとマイナスに考える。
諦めたくないし、でも、弱気になってしまう心。
どうすればいいのか分からないし、戸惑うこともたくさんある。
辛いときやイライラするとき、嫌なことがあったとき。
一番に頭に思い浮かぶのは、君の眩しい笑顔。
どんなときも、優しく笑って笑顔を絶やさない姿。
その姿を見ているだけで、俺を元気づけてくれる。
ああ、俺も頑張らないとだめだって。
……頑張ろう。君に振り向いてもらうために。
それがだめでも、君を笑顔にさせてあげられるように。
どうやって笑わせよう?
どうしたら喜んでくれる?
君を笑顔にさせることを考えたらすごく楽しい。
顔はだらしないほど緩んでるだろう。君のことを考えるだけでこうなるんだ。
君が俺のことで笑ってくれたら、気絶してしまうかもしれないな。
緩んだ頬を引き締めながら、決めた。君を笑顔にすることが目標。
ホワイトデーは必ず君を笑わせてみせる。
そうと決めたら、さっそくプレゼント選びだ。
君に似合うものはいろいろあって迷うけど。
君に一番似合うプレゼントを持って、君に会いに行こう。