告白
告白。勇気がいるし、とても緊張するけどーー。
目の前にあるのは、いつもの風景。真剣な表情をして集中している君と、そんな君を見ているわたし。
趣味に夢中な君は、なにかの音や、誰かが呼ぶ声にも無反応。それほど集中しているんだろうけど。
いつしかそんな君に、夢中になった。
いつからか、なにがきっかけで、とか。そんなことは分からない。
自分でも気づかないうちに、好きになっていたんだ。
「ねえ。コーヒー入れようか? 疲れてるでしょ」
「…………」
「コーヒー、いらないの? わたしの分だけいれるよ」
「コーヒーじゃなくて、紅茶がいい。レモンティーとか」
「そっか。わたしもそうしよう」
やっとこっちを向いたと思えば、それだけか。
こうやって、話せたり、一緒にいれるのは、すごい大切なことだと思う。それだけで、幸せなのも分かっているつもりだ。
でも、時々。友達とか知り合いとかじゃなくて、もっと深い関係になりたいと思っている。
そう……望むのは、彼氏と彼女の関係。
わたしは、君の彼女になりたい。君の特別になりたいよ。
そんなこと、言ったら君はどうするかな。考えただけで、言いたいような、今のままでいいような、なんともいえぬ感情になる。
真剣な横顔を見ながら、紅茶をカップに注いで、アイスを持って部屋に戻る。
集中している君は、わたしに気づいてなかった。
邪魔にならない、部屋の隅っこに座ってアイスを食べる。冷房がきいてる部屋にいるから、なかなか溶けない。食べていると肌寒くなるが、レモンティーが温かいので、ちょうどよい冷たさになる。
君を見ると、やっぱりまだ趣味に夢中な様子。仕方ないなあ、と笑ってしまった。
笑い声が聞こえたのか、君が振り返る。
「どうかした?」
「あまりにも夢中になってるから。君らしいなって思ったの」
「ふーん。そんなもんかなあ」
興味がそれたのか、また向き直る。後ろ姿を見るだけでも、すごく満たされて幸せな気分になる。君が集中してる姿が、実は好きだったりする。
いくら見てても、バレないからだ。
「俺はよく変わってるって言われるけど、お前の方が変わってるよ」
「なんでさ」
「集中してる時の俺を、こんなに構ってくるのはお前だけだから。なんか……お前がいると、すごく助かるし、楽しいし、もっと頑張ろうって思えるんだ」
振り向いたその表情は、初めて見た、穏やかな表情だ。優しい目でわたしを見ている。少し頬が赤いのは気のせいだろうか。
そんな表情されたら、期待する。そんな言葉を言われたら、もう、おさえきれなくなる。
わたしは、やっぱり……君の一番になりたいよ。
「……好き。君のことが好き」
つい言ってしまうと、抑えていた想いが溢れた。
本当に、好きで。誰よりも、大好きで。ずっと、傍にいたい人。
君は一瞬、ぼんやりしていたが、言葉の意味を理解したのか、顔が真っ赤になった。
「はあ!? なに言ってるんだよ」
「本当のことだから。前から好きだった。君の彼女になりたいって、思ってた」
「あー、もう……」
髪をぐしゃぐしゃとさせ、さらに顔を赤らめる君。いつもとは違うから、それがまた、好きな気持ちをふくらませる。
顔を上げ、わたしを見たあと、頬をつままれる。びっくりして目を見開いた。
「俺が言おうと思ってたのに……。悔しいなあ……」
それは……わたしと同じ気持ちということ? 恥ずかしさと嬉しさで頭がまわらない。
どういう状況なのか分からなくなってきた。
そんなあたしをそっと抱きしめて、耳元で囁いた君。その言葉は、ずっと欲しくてたまらなかった言葉だった。
「俺も、好き。前から、ずっと。好きじゃなかったら、傍にいないよ」
その言葉に顔をあげて、腕の中から抜け出した。
そういえば、ちゃんと言葉で言ってなかった気がする。
「わたしと、付き合って下さい」
君は、やられた、というような表情をしたが、構わずに抱きついた。
「俺が言おうとした言葉ばっかりとるなよ! まあ、返事は、はい、しかないけど」
君の腕の中で、目を閉じる。
小さく、これからよろしくね、と呟く。
すると、君が微かに笑って耳元で囁いた。
それが、わたしたちの始まりの音。