表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/28

後輩の君

年下。最初から、興味なんてなかったはずなのにーー。



君を見た時の印象は、至って普通だった。それなりに可愛い女の子だなって思った。

笑顔で話を聞くから聞き上手で、冗談も言うし、からかったら面白い反応をしてくれる。


ほかの後輩の女の子は、俺が年上の先輩だからか、常に冗談を言わない。むしろ、真面目過ぎるくらいだ。


それに比べて君は正反対だったから、一緒にいてすごく楽しいんだ。

冗談を言って、笑い合えて、話を楽しそうに聞いてくれる姿に、惚れてしまったのかなと思う。もちろん、それだけではないけれど。


「先輩、ここのご飯美味しいですね! 最高!」

「そう? 高級レストランでもない、ただの飲食店だけど」

「そんなの関係ないです。先輩と一緒だからですよ」


素で言ってくれてるのか分からないから、苦笑する。君は期待させることばかり言うから、勘違いしてしまう。

可愛いし、素直だから、好かれないはずないのに。

男には好かれると思う。

実際、他の男も君のこと、気に入ってるし。褒めてたし。

「あいつ、先輩たちから可愛がられてますよ」

なんて、吹き込まれたのはいつだったか。


その気持ちはすごく分かる。顔も整っていて可愛いし、冗談言ったり出来るし、聞き上手だし。性格も良いから、気に入られる。構いたくなるんだよな。


「なんですか、先輩。睨まないで下さいよ。睨んだって、おかずはあげませんからね」

「睨んでないって。美味しそうに食べるなーって思ってさ」

「美味しいから当たり前じゃないですか! 幸せな気持ちになりますもん」


また美味しそうに食べ始める。細いのによく食べるなあ。そんなところも好きだけど。

俺って君から見たら、どんな人なんだろう。


お兄ちゃん的な存在? 仲良い先輩? 恋愛対象外?


どんなに考えても、分からなくて。いつかは告白して、付き合えたらとは思うんだけどな。

今は、この笑顔を見れるだけでいいかとも思う。

それだけ幸せなんだ。


「なあ」

「はい? なんですか?」

「彼氏とかいたりする?」


聞いた途端、君が動揺して咳き込んでしまった。飲み物を渡すと、勢いよく飲んでいく。そのせいか分からないけど、顔が赤い。


「い、いきなりどうしたんですか? びっくりするじゃないですか」

「ちょっとね。彼氏とかいたら、一緒に食事とか大丈夫かなって」

「あ、そうですか……。そうですよね……。か、彼氏はいませんから、気にしないで下さい」


君に彼氏がいないことに、安心した。彼氏がいるかもと、いつも不安に思っていたから。


嬉しくてニコニコしていると、君もためらいながら、言葉を選びながら言った。


「先輩は……どうなんですか? 付き合っている人はいないんですか?」

「残念ながら、いないよ」

「本当ですか!? 良かったあ」


好きなのは君なのに、彼女なんているわけない。君と付き合えたら万々歳なわけだけど。


……それにしても。そんなに喜ばれると、期待するだろ。

君も俺と同じ気持ちでいるのかな、とか。

そうだったら、どれだけ嬉しいか。


「先輩ってモテそうだから、彼女いるのかと思ってました」

「全然モテないよ。モテたいし」

「先輩は絶対モテますよ! 一緒にいて楽しいですから! わたしが保証します!」


あまりの勢いに、驚く。すると、君は慌てて首をふり、顔を真っ赤にさせた。自分の言葉に驚いている様子だ。


「すいません! 迷惑ですよね! あはは……。なに知ってるんだよって思いますよね……」

「俺は、嬉しかった。そんなこと言ってもらえて」

「そ、そうですか? ならいいんです」


恥ずかしげに、飲み物を飲む君を見て、あたたかくて優しい想いが込み上げてくる。

君は、優しいからさっきの言葉を言ったのかもしれないけど。

俺にとっては、すごく嬉しい言葉なんだ。


だから、せめて言わせてほしい。


「あのさ……」

「はい?」

「ありがとう。そういうとこ、君らしくて俺は好きだ」


俺の言葉に、驚いた表情の君。でも、すぐに笑顔に変わった。


「ありがとうございます。先輩のそういうところ、わたし、大好きです」


真っ赤な顔で、照れながら言った君の姿を、一生忘れられないな、と思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ