夏の終わり
男の子視点です。好きな女の子と離れたくない、傍にいたいと願うようなお話です。
切なく書けたらいいのに、全く切なくならない……。表現って、難しいです。
新学期。君がいるだけで、頑張れるーー。
新学期になった。まだ少し暑さが残っているので、扇風機やクーラーなどで涼しくなる。夏の終わり。なんだか寂しくなるのは、なぜだろう。夏は青春にはぴったりの季節だ。友達と遠くまで遊びに行ったり、いつもなら出来ないことをする。夏休みなんて、たくさん遊ぶ。遠出して、はしゃいで、語って、笑い合うんだ。
でも、夏の終わりは、楽しかった夏休みの思い出があるから切なくなる。来年には、こんなこと出来ないだろう。次の今頃には、夏休みの思い出を懐かしく思うだろう。そして。大好きな君とも、離れてしまうだろう。
「ん、そうだね。……へえ~。なるほど。すごいね」
「それで、ああなって、こうなって……」
「うんうん」
君の声が聞こえたから、近くの周囲を見る。そしたら、久しぶりに姿の見えた君がいた。長くなった髪、半袖の制服から見える細い手首。笑顔で友達の話を聞く、君。会えるのを楽しみにしてた。笑顔をずっと、思い浮かべてた。
「かき氷には、なにかけるの?」
「うーん……。コーラとか、イチゴとか」
「あ~! イチゴ美味しいよね!」
前見た時と変わってない。いつも人の話を聞くところ。笑顔で、何度も頷いて相槌をうちながら、時々ほわっと笑うんだ。俺が話しかけても、友達とばっかり話すから、無理にでも話を合わせる。
「かき氷は、やっぱりイチゴだろ」
「君もイチゴなんだね。ミゾレも美味しいよ」
「俺はブルーハワイだな」
俺の友達までまざってきた。まあ、君が一人でいたら誰かがちょっかいかけるのは分かるけど。君は、可愛いんだ。俺たちが話をしてからかうと笑顔になってちゃらける。かと思えば、お化けが苦手だったり、驚かせると目を見開いて背中をびくりとさせる。元気かと思えば、泣いてたりする。自覚はなくても、面白いことを言って周りの人を笑わせたり。怒ったりせずに見守っていてくれてること、友達はきっと知ってるよ。君のそんなところに惹かれたんだから。
「……!? い、今、髪の毛、引っ張られた! 悪戯はだめだよ!」
「あはは! ごめん! 反応が面白くて」
俺の友達が、君の髪の毛を軽く引っ張っていた。君が男の子に触られるとイライラする。それが友達だとしても。あの友達は、きっと君を気に入ってるのだろう。君にばかりちょっかいかけてるから。君に触れたくて、肩をポンポンと叩いた。その時も肩を震わせる。可愛いと素直に思った。
「君でしょ? 叩いたのは」
わざとおどけてみせる。君の笑った顔が見たかった。あの友達だけに見せるのはもったいない。君との時間は、限られているんだから。君が、好きだと伝えたい。
「お前は、こいつのこと、好きなのか?」
友達が急に、みんなの前で俺に聞く。なんでなんだよ、とか、好きなわけないじゃん、とか言えればいいのに。それを言わないのは、君を悲しませたくないから。嘘をつきたくないから。
「な、なんで? ないよ、ないない!」
「どうして聞くんだよ」
君が慌てて否定する。俺が君を好きだと知らないからだろう。友達は冗談で言ったんだろうな。冗談は通じるのに、恋とか、誰が好きとか、そんな冗談は君に通じない。俺もそうだ。君といるだけでそう聞かれると、困る。好きだけど、迷惑かけたくないんだ。
友達の冗談はそこで強制終了して。
「おりゃっと」
「うわあ!?」
君と触れる時間、話せる時間、一緒にいれる日々を大切にして。
君の笑顔を見て、少し胸が痛んだ。
……季節なんか、来なければいい。時間なんて、とまればいい。離れるなんて、嫌だ。付き合えなくても、傍にいたい。
そう、願った。