お姉様私も大変努力していたのでございますのよ?
リーリエが羨ましいわ…。」
お姫様のようなお姉様のいつもの口癖だった。
伯爵令嬢マリア・シュヴァルツ。
母譲りのブロンドの髪と果てしない青空を写すような青い瞳で儚い容姿をもち、賢く聡明であり婚約者からも寵愛を受けていた。
そんな姉を持つ私リーリエ・シュヴァルツは、父譲りの当たり障りのない薄い茶色の髪に白い瞳だった。
お姉様はシュヴァルツ家の後継者であり経営教育に追われているし、貴族学院での生徒会での活躍や勉強、淑女としての交流もある。両親はお姉様に期待を寄せている。その一方で貴族としてではなく私には私の役割があると伝えてくれていた。
お姉様には甘やかされていると思われているのは薄々気づいていた。
両親との話し合いで私は貴族学院には通っていなかった。
だから、お姉様のお知り合いとのお茶会はマナーが散々すぎて冷たい目で見られた。
でも私の役割ではないしと思ってヘラヘラとしていたら、口癖を言われた。
多少は勉強したけど付け焼き刃だっただけだった。
翌日、お姉様を訪ねてギルバート様がシュヴァルツ家を訪れていた。私は出かけていたため夕方にちょうど、玄関でギルバート様とお姉様と鉢合わせした。
お姉様の婚約者であるギルバート・キルシュナーは、お姉様を溺愛している。
あまりギルバート様とは会わないようにしていた。
だって、顔を合わせると
「マリアに申し訳ないと思わないのか、もう少し家のためにしようと思わないのか。遊びに出歩いている暇があれば勉強したらどうだ。」
ゴミを見るような目で目を向けられて愚痴愚痴言われるのである。必死に伯爵家を嫁ぐためのお姉様を見ているため、何もしていないように見える私にはかなり冷たい。
「ギルバート様わたくしが頑張ればいいのです。大丈夫ですわ。」
「マリア………。」
2人で見つめ合わないでほしい。そしてまたギロリとギルバート様が睨んできた。心底疲れているのでほっといてほしい。
「マリアは優しすぎる。貴族学院にも通っていないし、通わせるのはどうだ?」
「わたくしめもそう両親に提案したのですが、リーリエにはリーリエの役割があるとおっしゃるのみで。」
「甘やかせすぎじゃないのか。」
また睨まれる。
今日は疲れているから早く横になりたい。
「疲れてるから失礼しますね。」
さっと家の中に入る、後ろからギルバート様の声が聞こえるけど聞かなかったことにした。
とある日の午後、貴族学院に魔物が現れた。
普段は結界に覆われていたがほころびがしょうじ魔物が侵入してきた。
貴族学院の生徒はパニックになり、生徒が我先にと押し合いになっていた。マリアは生徒たちに押され腰を抜かし立てなくなった。ギルバートがたたせようとするが立ち上がれずに魔物が近づいてきた。
「いや……いや……。」
「マリアぼ…ぼくがそばにいるから。」
2人に魔物が襲い掛かろうとしているところを私は間に入った。
手をかざして魔法を練り上げる。
魔物が弾け飛びバラバラになる。後ろから魔法騎士団のメンツが駆け寄ってくる。
「さすがリーリエ、一瞬だったねぇ。」
「アーノルドまだ油断はダメよ。」
「リーリエ……?」
お姉様のか細い声が聞こえてきた。顔は真っ青で震えている。そして私の左肩を見ていた。あぁ、お姉様は全て思い出したのだ。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。」
何度も謝るお姉様にギルバート様が支える。
「リーリエどういうことだ?何故ここにいる?」
「今思い出したのよ、お姉様は。私が貴族のことを何もしない理由を。
申し遅れました、魔法騎士団第1部隊のリーリエ・シュヴァルツです。」
全ての始まりはお姉様の優しさだった。幼い頃お姉様は傷ついた小さな魔物と出会った。可愛らしい猫のような魔物だった。
お姉様は隠れてお世話をしていた。
あの日私にお姉様はその小さな魔物を紹介しようとした。私は魔力が高い子供だったらしい。だから、魔物からは格好の餌だったのだ。
小さな魔物は私の左肩を噛み付いてきた。私は魔力を暴走させて魔物を殺した。
両親が慌てて駆けつけた時にはお姉様は発狂して気絶した。起きた時には出来事を全て忘れていた。
私には左肩に古傷が残った。貴族としての生活は困難だし、魔法としての才能を開花させたことにより魔法騎士団での加入を決めた。
両親と相談の上お姉様には思い出さないように全てを隠すことにした。
「お姉様私も大変努力していたのでございますのよ?」




