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勇者の抜殻

異世界で嫌われる数字

掲載日:2026/06/13

文官さんから教えてもらった、この世界の雑学。

その一つに、数字の雑学がある。


こちらの世界は、ほぼ十二進法で成り立っている。


数字の表記は、0から11の意味を持つ12個の計算専用の記号が使われている。

日本人の感覚だと、アラビア数字みたいなものだろう。


計算専用記号の他に、文章を綴る文字の中に12を意味する文字がある。これは、ダースや一締めなど、日常生活に使われる単位であると同時に女神様を意味するそうだ。


日本語に例えると十や百や京みたいな、単位と概念が混在する漢字が近いだろう。


計算専用記号の表記方法もほとんど日本と変わらず、右端揃えで横書き。右端が1桁目になり、桁が増えれば左に数字が増えてゆく。


足し算、引き算はもとより、掛け算、割り算の計算方法も知識層を中心に広く知られている。また、分数も日常的に使われている。


しかし、異世界なりの差異もある。


代表的なのは、割り算は余りを分数で表記する点だ。


例えば 37÷12の答えは、3と1/12


どうやら小数点表記は存在しないようだ。


時と場合によっては小数点の方が便利だ。何で無いのか気になって、文官さんだけでなく宰相補佐こと補佐さんにも質問し、自分なりに小数点の利点を説明してみた。


が、得られた答えは、全否定!!


小数点がいかに計算し易かろうと、円周率みたいに延々続く割れない数字は、無駄の多い稚拙な方法だとバッサリ切り捨てられた。また、必ず所定の桁数で解答が出る分数の劣化版と考えられ、普及しないだろう。


質問した全員に、概ねそんな意味の回答を貰った。

この異世界、割り切れないヘイトが根強い!


ならば、地球に於ける「13日の金曜日」みたいに縁起の悪い数字は、割り切れない奇数なのか?

更に掘り下げ、質問してみた。




先ず。この世界は12進法社会なので、基本となる一桁の奇数は1,3,5,7,9,11。


1は一番初めの数字、1位など優劣における最上のものだ。よって1は優れた数と考えられている。

3は、3と4の掛け算で12が出来上がる為、女神様の愛し子的な数字らしい。


……愛し子?


要は、何か贈り物があったら5個で1セットより、3個か4個で1セットの方が心象が良いとのこと。


日本人としては微妙に納まり悪い。だが、今後こちらの世界で生きて行く以上、この手の常識に慣れるしか無いのだろう。


おっと、脱線した。


奇数の5は、最も避けたい数であるそうだ。


待て待て!

結構な真顔っ!


今の雰囲気、ちょっと、いや、かなり怖かった。


文官さんは5に何か嫌な思い出でもあるのかもしれない。今後、話をする時は気を付けようと思った。


7は日本の常識が染みついた俺には、非常に解りにくかった。


俺が召喚されたこちらの世界で、重要視される星雲の周期。これが72日だ。

この72日周期の星雲は、惑星内生物に影響を与える存在なので、暦などにも星雲の周期は必須である。


どんな影響かとか語り出すと長いので省くが、大事な区切り「72」の片側を担う7なので、割り切れないけれど疎外も出来ない。そんな認識であるらしい。


異世界のローカルな感覚なので、俺にはイマイチ理解が出来ない。この現地人の感覚を表す慣用句、「7人目を忘れるな」は、大事なことを忘れ、人の道を踏み外すな、という意味がある。


次は数字の9だ。9も奇数だが、女神様の愛し子な数字の3と3が合わさった愛の相乗数であり、延々と足していくと、重要な星雲周期の72にたどり着くので肯定的に見られている。何なら3で割れるから、偶数のグループに入るとか。


えっ、ちょっと待って!

割れるから偶数って、ガバすぎん?


確かに他の奇数は割れない中で、唯一割れる数字だけど、納得いかないわっ!


要は、奇数より素数が嫌われてる?

異世界。割れないヘイト、相当根深いなっ。


まあいいや。


11もまた、悪く無い数字らしい。数字の11は、12進法における桁上がり前の最大の数。

女神を表す12に最も近いことから、完璧や頂点を目指して邁進する意味があるとか。


人生の転換期である就学就労、昇進祝いの花束はこの意味を酌んで11本にするのが鉄板だそうだ。


蛇足で、12について。


絶対的な人気のある数字12は、女神様本体を示す記号であり、女神に深く関わる数字なので、とても大切にされている。お城に勤める文官さんと宰相補佐さんの両名がいうのだから、この認識は間違ってないのだろう。


結論として、異世界における年月周期の区切りや、何らかの専用単位に採用されない数字「5」が、最も嫌われる数字になったようだ。


……まあ、理由を聞けばわからないことも無い。


学校のクラスメイトで考えると、誰とでも話すけど、放課後ぼっち的な?!


おい、やめろっ!

俺を指差すな。




この話の続きで驚いたのは、数字の由来を伝える物語の存在だ。

こちらの世界では一般常識で、子供の頃に読み聞かせる童話がある。


≪3と4が手を取り合ったことで産まれた、愛の結晶12は空へと昇り、とうとう女神様にお会いしたのです≫


待て待て、異世界常識いぃぃ!

モテない奴に、何か恨みでもあるのか?


落ち着け、俺。

ビークール、ステイクール。


つまり何だ。こちらの世界で絶対的な女神様への信仰は、この桃色メルヘンな話が原典? 更に、桃色メルヘンな3と4の恋愛ストーリー上に、5が絡んでくる。


何だそれ?


桃色メルヘンな上に、数字の擬人化かよ。


地球上では、何でも萌えキャラ化する人種としてお馴染みの日本人だけれども、こちらの世界の住人も……大概だな。


さて、この桃色メルヘンな数字キャラによる恋愛話によると、≪女神に祝福され愛し合っていた4と3だが、ある時、4が善と悪の二つに別れてしまう。善の2を追い出した悪の2は、愛し子の3を独占した≫


愛し子の3が悪2に染まった姿が「5」。

それは嫌われるわ。仕方がない。


その後、善の2が悪に染まった5から愛し子の3を救い、女神様の助けを借りて再び、善悪の2が4に戻ったりするそうだ。


この愛し子の童話が深層心理にあるからだろう。数字の5には浮気や別れる、破滅、孤独に捨てられる等という意味が結びつく。


なるほど。

それ、一般常識?


子供の頃に絶対に教わる、と。

次回の教材として、桃色メルヘン本を持ってくる?


はい、了解です。


いえいえ、もう十分理解したので大丈夫。

変更できるなら、スカッと勝つ戦記物をお願いします。



本編は一生はじまらない。

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