第三章 -シヴァ皇帝-
【宿屋の食堂】
レア「はあっああああっ」
ロー「レア…だからため息をつくと幸せが逃げてゆくと何度も言ったよね」
ウェル「俺たちの運気を下げるなと何度言ったら……まったく。」
ミディ「おな……かすいた……焼……肉………」
レア「どうするんですかっ・・・・・・」
レア「宿代が足りなくて……みぐるみはがされる寸前で親切な人がお金を貸してくれたから首の皮一枚繋がりましたけど……」
レア「500万もあったのに、何でもう借金生活に逆戻りなんですかっ!!」
レアは既視感を覚える。
ウェル「まあ、鴨を運んでくるネギが行方不明じゃあなあ……」
ロー「ああ、まあ……少し世の中が平和にはなったかもしれないけどね……」
ミディ「悪は……ほろ……ん……だ」
ざわっざわっざわっざわっ
黒い民族衣装をまとった一団がレア達を囲む。
謎の兵士「ウェル殿、ロー殿、ミディ殿であられますな……そちらは……新しくパーティに入られたレア殿ですな」
レア「はっはい……そう……ですけど……」
謎の兵士「実はあなた方にどうしてもお願いしたきクエストが御座いまして……」
ウェル「ほう……俺たちは高いぜ!!」
謎の兵士「とりあえず前金2000万、成功報酬でもう2000万を予定しておりますが、足りませんかな?」
ウェル「ん?まあ……お困りのようだし……まけといてやるか……普段ならもっと高いんだが、引き受けてやるぜ。」
ミディ「焼……肉食べ……放題……おぶ……ざ……わーる……ど」
ロー「なるほど……ついに彼女が動き出したって事か……」
レア「だからっ……依頼内容も確認せずに引き受けないで下さいよっ……
でも、引き受けないと破産なんで………宜しくお願いします。」
謎の兵士「ではここでは何ですので、別の場所でお話させて頂きます。」
レア達は謎の集団にラグーン中枢の大きな屋敷に案内された。
【シヴァ帝国大使館】
レア「ここって?ここって?シヴァ帝国の大使館ですよね?」
ウェル「ああ、流石に金持ってるな、ラッキー!!王様生活への第一歩か??」
ロー「あー、こういう流れ。もうちょっと解りやすく書いといてくれれば……」
ミディ「ご……はん」
エキゾチックな雰囲気の部屋に通される。
椅子、机、装飾品、全てが一流品だと解る。
ベ・キュー「失礼いたしました、私はシヴァ帝国、宰相ベ・キューと申します。」
レア「さいしょう?宰相様ですかっ!!シヴァ帝国の宰相様が私たちにクエストをっ!!」
ウェル「肩書に弱いなこの魔法使い……しかし宰相か……酒池肉林の王様への道キタな。」
ロー「ああ、そういう感じか……」
ミディ「肉……は?」
ベ・キュー「ラグーン最強と言われる…あなた方のような方にしか達成不可能なクエストなのです。」
レア「そっ……そんなに……大変なクエストなのですか?」
ベ・キュー「はい、絶対に他言無用でお願いします。」
ベ・キュー「実は……我が帝国の皇帝陛下が誘拐されまして……」
レア「えっ、皇帝陛下が!?」
ベ・キュー「はい。」
ベ・キュー「誘拐犯は……ラグーン最強の騎士と名高い騎士団長ストロガノフ……
あなた方のような最強の方々にしか頼めません。」
レア「えっえええええええ……ストロガさんがっ……………………はっ!?」
レア「あのーたしかーシヴァ帝国の皇帝陛下は………女性の………方でしたよね?」
ベ・キュー「ええ、シヴァ14世陛下は女帝ですが……それが何か?」
レア「いえっ!そこは物凄く重要なんですっ!!!陛下の……貞操が………」
ベ・キュー「はははっまさかストロガが陛下を凌辱する為に誘拐したと?
そんな馬鹿な、そもそも陛下はまだ………」
レア「あっ……あの……これは……凄く……重要で……確認しなきゃ……ならない……事なんですが………」
ベ・キュー「ん?なんですかな?」
レア「シヴァ帝国の皇帝陛下……年齢は………?」
ベ・キュー「つい先日12歳になられたばかりですが?」
レア「ミディさん……奴は……悪・即・斬……確実に撲殺で…お願いします。私も最大火力で焼却しますんで……」
ミディ「ら・・・じゃあ」
【シヴァ帝国の港町『ターイーナーイー』】
ウェル「あー熱いぞこの国、なんだこの国」
ロー「熱いね……」
ミディ「肉……ラクダでも……イイ…」
レア「もう、みなさん、頑張って下さいよっ。」
レア(お姫様の奪還クエスト……私が憧れてたのはコレですコレコレっ
さらわれたお姫様を探し旅に出て……鎧の戦士、ゴーレム、ドラゴン、魔王を倒して世界を救うんです。
そして私は語られるんです『勇者』として後々まで……)
レア「そして、あのクズも滅する事が出来るんですから……ふふふっ」
3人は今のレアにはあえて触れない……
レア「流石にシヴァ帝国の街ですね。ラグーンとは人も風景も全然違いますね。」
街中を歩くうち防具屋が目に入った。
レア「前金を2000万ももらったので……防具を揃えても……」
ミディ「当た……ら……なけ……れば……いらない、それ……より……肉」
ウェル「シーフには身軽さが必要だ。いらん。」
ロー「僕、神官だから鎧とか盾とかは……なんかねえ………」
レアはショーウインドウをチラッと見た。
ショーウインドウに魔法使い用の防具が並んでいる。
レアは目が離せなくなりガラスにへばり付く。
レア「かっ……かわいい………」
レア「魔法使い最強装備……『マジカル・ドレス』」
ウェル「あ?何言ってんだレア、そんな物を買う金は無いぞ」
ミディ「そ……れ……より……肉」
ロー「無駄使いダメ・ゼッタイ……贅沢は敵だよレア」
レア「ぐっ……でも……そうですよね………300万もするんですから……」
レア「私には……きっと……一生……無理……ですね……」
レアは悲し気にうつむいた。
パーティはシヴァ帝国の帝都シヴァータからオグニ村方向へ向かう。
【オグニ村近辺の街道】
ガン、キンキンっ
街道を行くとなにやら黒ずくめの集団が乱戦を繰り広げている。
ストロガ「ぐおおおおおおおっ」
ストロガがエクステンドカリバーを降ると黒ずくめの男たちが吹き飛ぶ。
レア「あっあれは……」
ミディ「おま……かせ……」
ミディが集団につっこんで行く。
ストロガ「ぬっみ……ミディ???」
ガキンっ!!
ミディの処刑剣をストロガが受け止める。
ストロガ「ぐっ………」
ストロガの一瞬のスキを黒ずくめの集団は見逃さない。
ストロガ「しまっ………」
SE:ガン、ゴン、ボコッ
黒ずくめの男たちが倒れる。
レア「えっ!?ミディさん???その人達は味方ですよっ。」
ミディ「ち……がう」
ミディ「いま……狙っ……た、うしろ……の……子」
背後にフードをかぶった少女の姿が見えた。
ガン、ゴン、ギン、ガコーン
黒ずくめの男たちは全員倒れた。
ストロガ「助かったぞミディっ」
ガキーーーン
ストロガ「わっ何をする?ミディ??」
ミディ「もん……ど……う……むよ……う」
ウェル「まあ、待てミディ……」
レア「えっ!?」
ウェル「ストロガ……剣を降ろせ……」
ストロガ「ウェル……」
ウェル「エクステンド・クロス……撃てなかったのは後ろの子を守っていたからだよな。」
レア(あの時……海で私を助けてくれた時と……同じ……)
ウェル「もういい、もういいんだ……」
ウェル「さあ、剣を置け……お前の好きなロリっこが……お前の血で……濡れているぞ……」
ストロガ「ウェル……私は……私は……」
ストロガは涙を流し地に伏した。
ウェル「今だっミディ!!」
ガコーーーーーン
ウェル「安全に奴を屠れたな……」
ウェル「レア、コンプラ的に問題がある。お前が被害女児の状況を確認するんだっ!
しかし相手は皇帝陛下……発言に気をつけろっ」
ウェルはいつになく……やる気満々だ。
レア「はっはい。えーと……あの……」
???「みなさん、お久しぶりです。」
少女は血に染まったフードを脱いだ。
レア「えっ!?シャルちゃん!!!?」
シャルローテ「レアさんお元気でしたか?」
レア「シャルちゃん、シヴァ帝国の皇帝陛下だったの!!!」
シャルローテ「隠していて御免なさい。改めましてシヴァ14世シャルローテです。」
【オグニ街道 夕方】
ストロガは気絶したまま鎖でグルグル巻きにされている。
レア「シャルちゃん……大丈夫です。『まだ』毒牙にはかけられていないようです。」
ウェル「そうか……間に合って良かったな。」
ウェル「で……どうするこのロリ騎士……生きて連れ帰った方が報酬上がるか?」
ミディ「き……け……ん……」
ウェル「たしかに皇帝陛下の御身に傷でも付けた日にゃ『俺様王様作戦』に響く……リスクは回避しておくべきか……」
シャルローテ「あの……みなさん……ストロガさんは……私のワガママを聞いてくれただけなんです。」
ウェル「変質者と取引してはダメですよ陛下、どんな報酬を求められるか……」
シャルローテ「私……結婚が決まったんです……」
レア「えっ!?結婚!?」
シャルローテ「はい……」
シャルローテ「相手はラグーン皇王デュルマ猊下です。」
レア「皇王デュルマ猊下……20歳以上年上の方と……」
シャル「ラグーンに嫁いだら……もう二度とママに会えないから……」
シャルローテ「だから最後に一目だけ……ママを見たいって……ストロガさんにお願いしたんです。」
レア「でも皇帝陛下なのにお母さまにも自由に会えないなんて……」
シャルローテ「私はただの傀儡皇帝……全てはベ・キュー宰相が決めたこと……私には逆らえません。」
レア「…………………………」
【オグニ村、街はずれ。】
シャルローテ「くれぐれも……見つからないように……気を付けて下さいね」
レア「でも……何でこんな隠れるような事を……」
シャルローテ「私が母上と会った事がベ・キューに知れたら……とにかく見つからないように」
ボロボロの服を着た疲れ切った女性が水桶を運んでいる。
シャルローテ「ママっ……ママっ…………」
シャルローテはボロボロと涙をこぼし、必死に口を塞ぎ嗚咽を抑え込んだ。
レア「シャルちゃん……」
レアはそっとシャルの肩を抱いた。
【ターイーナーイーの宿屋 夜】
シャルローテ「皆、大儀であった。」
ウェル「ははああああ、コレ、お前ら頭が高いぞ。」
シャルローテ「我は……覚悟を決めた。」
シャルローテ「母上をあのような環境に……もう置いて置けぬ!」
レア「でも……そうは言っても……」
シャルローテ「我が望みはベ・キューが首。奴の首をはね、ラグーンの皇王を滅ぼし…
シヴァ帝国の威厳と皇帝としての力を取り戻す事」
レア「気持ちは……シャルちゃんの気持ちは……解るけど……そんな事をしたら世界を敵に回す事に……」
シャルローテ「ふっ世界ごとき我の敵ではないわっ……ねじ伏せてやる。我が足下に。」
シャルローテ「我はママと一緒に暮らす未来の為ならば神々すらも超越する存在となろう。」
シャルローテ「そこでだ……皆、我に仕えてほしい」
レア「いやっ……それは……私たちはベ・キュー様に依頼を受けている身。冒険者として依頼主は裏切れないから……」
シャルローテ「ストロガノフ……」
ストロガ「シャルローテ様……我は……ラグーン騎士団長……ラグーンに弓引く事は……」
シャルローテ「ストロガ……お・に・い・ち・ゃ・ん」
シャルローテ「シャルのお願い……き・い・て・く・れ・た・ら………」
レア「いくらストロガさんがロリコンのクズでも……さすがに……騎士団長なんですから……
皇国に反乱なんてありえません。」
ストロガ「くれ……た……ら?」
シャルローテ「ちゅって……してあげても……いいよっ」
ストロガ「我が命、我が魂、我が運命……全て陛下に捧げます。
この身……使い捨て下さい。未来永劫の忠誠を誓います。」
ストロガはあっさり落ちた。
レア「最低……」
シャルローテ「ウェルよ……王様になりたいか?」
ウェル「はいっ皇帝陛下っ!」
シャルローテ「良いぞ。国の一つくらい。我がシヴァ帝国に連なる新たなる王となるがよい。」
ウェル「皇帝陛下万歳。王様……王様……酒池肉林の夢キタ!!!」
レア「まあ……この二人は……」
レア「ローさんっ何か言って下さいよ!!貴方は『いちおう』聖大河教団の神官なんですからっ!
ラグーン皇国のデュルマ皇王猊下は教皇様でもあるんですよ。」
ロー「ああ、まあ……そうか……うーん」
シャルローテ「パラディン……」
ボーっとしていたローがビクッと跳ねた。
シャルローテ「歴史上3人しか存在しなかった特別な神職……皇王の命令すら聴く必要のない絶対の権限……
ここで任命しても構わぬぞ。」
ロー「うっ・・・ああああ・・・そうか・・・そうだった・・・」
シャルローテ「三帝国の皇帝が任命出来る神職であったな。
三帝国で唯一残ったシヴァ帝国、
現在、予…のみが任命できる、間違っておるかロー?」
ロー「遥かな昔に聖大河教団の教義に存在した伝説の役職……
しかし、その制度は……廃止されて……ない……で…す。」
シャルローテ「皇王の首を跳ねたら……ロー、お主に匹敵する宗教権力を持つものはいない……
デュルマを抹殺し教皇の座に座らんか?」
シャルローテ「パラディン・ロー、我に忠誠を誓うか?」
ロー「ああっ。永遠の忠誠を誓います。我は誓う。
皇帝陛下に刃向いし全ての愚かなる物に、等しく滅びを与えん事をっ。」
レア「背教者あああああっ」
シャルローテ「シヴァ帝国の美味しい牛肉食べ放題………」
ミディ「ぐるるるる・・・・・・・」
レア「ミディさんっ、気をしっかりもって!!」
シャルローテ「おいしいワインも飲み放題……永遠に」
レア「こうていへいか万歳っ!」(早口)
レア「ミディさあああん」
シャルローテ「さてレアよ……」
レア「何度頼まれようと……私たちは冒険者。依頼主の依頼は断れません。」
シャルローテ「ベ・キューの依頼は我をシヴァータの宮殿に無事送り届ける事であろう?」
レア「はい。」
シャルローテ「我はシヴァータの宮殿に帰る………」
レア「シャルちゃん、解ってくれたんだ……」
シャルローテ「べ・キューの首をはね。貴族共を皆殺しにする為、
シヴァータの宮殿には必ず帰る。問題あるまい?」
レア「うっ………それは………」
シャルローテ「わが身の値段は4千万だったか……では6千万でどうじゃ?」
レア「いえっ、お金の問題じゃありません。」
シャルローテ「なるほど、そういえばマジカル・ドレスなるものが欲しいのじゃろう?明日買ってやっても良いぞ。」
レア「えっ……いや……その…………でもダメです。私はそこのクズ共と違って誇りをもっているんです。
でも、何で知ってるんですか???」
シャルローテ「じゃあ1億。何でも買えるじゃろう。」
レア「いっ……ち……お……」
レア「ダメです。なんと言われてもっ。私はお金なんかには負けません。」
シャルローテ「そういえばレア、そなたら……シヴァ銀行にずいぶん多額な借金があるそうじゃな?」
レア「うっ………………」
レア「その………………どうしても………困って………少しだけ借りました………親切な方が……貸してくれたので……」
シャルローテ「早く返すのじゃぞ。一億」
レア「えっ?そっそんなにあるんですかっ??800万くらいかと……」
シャルローテ「なにを言っておるか?よく契約書を読むのじゃ。かいてあるじゃろう……利率。借金には利子がかかるのじゃ。」
シャルローテ「そもそも、一切返済してないので『複利』で債務は増えるのじゃ。そして『遅延損害金』もかかるのじゃ」
レアは急いで契約書を取り出す。
レア「そっそんなっ……あっあかじ……」
シャルローテ「シヴァ銀行は父上から受け継いだ我の所有物じゃ。ちゃんと還すのじゃぞ。」
レア「いっ……いち……おく……そんなっ……」
シャルローテ「しかも、他にもずいぶん借りておるな。」
シャルローテ「だいたい5億くらいに膨らんでおるぞ……」
レア「えっえっえっ………そんなに………ですか?」
シャルローテ「ウェルよ、借りた金を返済した事があるか?」
ウェル「いえっ、まったく返済しておりませぬ陛下。」
レア「きゃああああああ、なっんでっ何で返済しなかったんですかあああ?」
ウェル「ん?まあ、何とかなると思ったからだが?それが何か?」
レア「ゼッタイ、ゼッタイ、何とかなるはずないじゃないですかあああ」
シャルローテ「我がシヴァ銀行の借金であれば、チャラにしてやっても良いぞ。」
レア「うっ………そっそれは………………」
シャルローテ「なら、もう良い。他のパーティに頼むとしよう。」
シャルローテはくるっと周り、レアに背を向ける。
レアはガシッっとシャルローテの手を掴む。
レア「あっあの……シャルちゃん……いえ……シャル……ローテ……さま……いえっ……陛下……少し……
少しだけ……考える……考える時間を……」
シャルローテ「借金チャラで報酬10億っ!マジカル・ドレスは明日買ってやるぞ。」
レア「いっいえす……ゆあ……まじぇすてぃ……シャルローテ様に忠誠を誓います……永遠に!!」
シャルローテはニヤリと笑った。
借金生活に疲れ切ったレアなどシャルローテの敵では無かった。
【宿屋の部屋 夜】
レア「はああああっ……」
シャルローテ「どうしたのじゃレア、まだ迷っておるのか?」
レア「いっいえ……シャルローテ閣下そのような事は……」
シャルローテ「よいよい、今まで通りの呼び方で構わん。」
レア「では……シャル……ちゃん……本当に、本当にこれでイイの?」
シャルローテ「レアよ我が生い立ちを……解ってもらいたい」
シャルローテ「母上はオグニ村の貧しい農家に生まれ、たまたま村に立ち寄ったシヴァ帝国の先帝に見染められた」
シャルローテ「誘拐同然にシヴァータの宮殿に連れて行かれ……飽きて捨てられた。」
シャルローテ「しかし、母上が故郷に帰り着いた時には我が母上の腹に居たのじゃ。」
シャルローテ「母一人……子一人……本当に貧しい暮らしであったが、我は母上と共に暮らせればそれで満足であった。」
シャルローテ「その後、先帝が急死。壮絶な王位継承戦争が起きた結果、王位継承者は死に絶えた。」
シャルローテ「全ての政敵を滅ぼし頂点に立ったのは『宰相ベ・キュー』じゃ」
シャルローテ「奴は思い出したのじゃ。我が母、そして我……傀儡皇帝に相応しき幼子……」
シャルローテ「我は10歳で即位した、しかし実権はベ・キューが完全に掌握しておった。」
シャルローテ「長き内戦でシヴァ帝国は衰退した、もはやラグーン皇国に服従する他ないほどにな。」
シャルローテ「べ・キューは売り飛ばしたのじゃ、我を自らの保身と地位の安堵を条件に……」
レア「そんな事が………」
シャルローテ「レアよ、ベ・キューに正義はあるか?国を、民草を売り飛ばしたのだぞ?」
レア「うっ………」
シャルローテ「解りやすく言えば……何の力も持たぬ姫……悪の宰相……それを助ける勇者……」
レア「うっ……ううっ………なっなるほど……」
シャルローテ「しかもデュルマ皇王は近年ドラゴン兵の育成を進めていると聴くが、それは何の為じゃ?」
レア「えっ……それは魔土を魔獣から奪還する為に……」
シャルローテ「違う。奴はシヴァ帝国を滅ぼしラグーンによる世界征服を狙っておるのじゃ。」
レア「世界征服っ!!」
レアはびくっとなった。
シャルローテ「ラグーン無敵艦隊が滅びパワーバランスが変わった。奴は早急に仕掛けてくるじゃろう。」
シャルローテ「デュルマ皇王は真に恐るべき男、ベ・キューなぞ眼中に無い。むろん我も……今はな……」
レア「えーっと……では皇王は悪い人なんですね?」
シャルローテ「解りやすく言えば、世界征服を企む魔王……」
レア「うっ……ううっ………なっなるほど………」
レア「でっでも……本当にイイんですかっ?あんな約束をして……
あまり……仲間を悪く言いたくはないですけど……人間のクズですよ……あの人達……」
シャルローテ「ふむっ、まあ、家一軒でも我が認めれば国じゃ……
何か問題があればパラディンの地位なぞ剥奪すれば良かろう。
ロリコン禁止法も作らねばならんのう……ふふふっ」
レア「この子……本物……何かは解りませんが……とてつもない何かを目覚めさせてしまったような……」
シャルローテ「では、そろそろ寝るとしよう。マジカル・ドレスじゃったか?
すこし早く起きて買いに行かねばならんからな。」
レア「………………………………………」
レア「シャルローテ陛下っ!!いえす・ゆあ・まじぇすてぃー、我が忠誠をお受け取り下さい。」
レア「倒しましょう魔王!!シャルローテ様、シヴァ帝国、万歳!万歳!万々歳!!」
この時のレアの行動は『ターイーナーイーの裏切り』として後世の歴史家に酷評されたと伝えられている……
【シヴァ帝国ターイーナーイーの港】
レア「シャルちゃん、なんで港に来たの?」
シャルローテ「まあ、そろそろ良いか、ローよそなたは解っておるのじゃろう?」
ロー「陛下……蒼穹王の封印は今だ破られず。海王は真の力を発揮できておりません。」
レア「ろっローさん何言っているんですか?何を言っているか全く解りませんよっ!!」
シャルローテ「ふむ、天罰銃デイタムはまだ目覚めぬか……」
ロー「はい、蒼穹王の目覚めにはやはり儀式が必須なのかと………
深海王は滅びましたが……海王は我が掌中に納めております故に、
天罰銃もいずれは目覚め……陛下の御意に叶うと思われます。」
シャルローテ「流石じゃな………『パラディン』ローよ。ネクロノミコンをここまで正確に読み解くとは見事じゃ。」
ロー「そのようなお言葉。身に余る光栄ですっ、皇帝陛下っ!!」
ローはまるで子犬のようだ……涙ぐんでいる。
レア「何を言っているのか解りませんよっ???」
シャルローテ「ん?アイン・ト・プフに会いに来たといえば解るかのう?」
レア「えっ……アインちゃんに?」
レア「というかシャルちゃんはアインちゃんと知り合い?お友達なの?」
シャルローテ「我は会った事がない……我は……まだ……な。」
レア「?」
【入り江の洞窟】
レア「ここにコルゴーンが来るんですか?」
シャルローテ「ああ、ローが誘導をしておる。」
レア「ゆうどう?」
シャルローテ「ああ、海で……タコに襲われたじゃろう。」
レア「はい、そして、たまたま通りかかったコルゴーンに助けられて……」
シャルローテ「いや、あれは『たまたま』では無い。天罰銃デイタムの電波をキャッチしたのじゃ。タコもな……」
レア「でんぱ? 天罰銃……弾とか出るんでしょうか?」
シャルローテ「いや、神罰の杖とも呼ばれておる秘宝でな。コルゴーンに連絡が出来る機能があるのじゃ。」
レア「はあ?弾は出ないんですか……」
レアにはシャルの言っている事がさっぱり解らない。
ロー「陛下っコルゴーン、感度あり、但し電波状況悪し通話は不可能です。」
シャルローテ「この場所は特定出来たのであろうが、こちらの意図を伝えねば近づかぬであろうな……」
ロー「陛下……私めにお任せを……」
ローは天罰銃をコンコンコンコン叩く。
シャルローテ「ロー!?そなたモールスが解るのか?」
ロー「はい、陛下、コルゴーンの図書室にあった文献でマスターしておきました。」
シャルローテ「パラディン・ローよ、そなたの叡知は一国に値するぞ。大儀である。」
ロー「陛下っああああっ……もったいなきお言葉あああっ」
ローは涙を流しながらシャルにひざまずく。
レア(最近のローさんはシャルちゃんに絶対服従……なんだか私……とってもイヤな予感がします……
ストロガさんとは別の意味で……)
【入り江の洞窟 夜】
コルゴーンが洞窟の入り江に入ってきた。
レア「本当に来たんですね。」
シャルローテ「これが……コルゴーン……なのか?」
ミディ「ご……はん美味……しい……唐……揚げ……カ……レー……MAX……大……盛」
ロー「ああ、今日は火曜日だからカレーは無いんだ。カレーは金曜日限定なのさっ」
レア「かようび?きんようび?ローさんが何を言っているのか最近さっぱり解りませんよっ??」
ロー「はははっ……昔は7日周期で人間は生活してたんだよ。」
レア「?」
コルゴーンが止まった。
半透明なアインが入り江に現れる。
アイン「まっ……まさかっ……やっ……やっぱり……」
シャル「そなたが……アイン・ト・プフか?」
アインはシャルローテにひざまずく。
アイン「シャルローテ様……始光帝陛下……お久しぶり……いえっ……お初にお目にかかります。」
アイン「また、お会い出来て…………幸せの極みっ」
アインはポロポロと涙をこぼす。
シャル「やはり……そうか……そういう事じゃな……」
シャル「アイン・ト・プフ……我に仕えよっ。コルゴーン、我が軍勢に加われっ」
アイン「はいっ、我が魂は遥か太古より陛下に捧げております。『海王コルゴーン』は未来永劫、陛下のしもべです。」
シャル「ふむっ、大儀である。予はそなたの事を『アイン』と呼ぼう。構わぬか?友よ。」
アイン「もっもったいなき……お言葉……また再び私を友と……シャルローテ様……」
アインはまたボロボロと涙を流した。
レア「なっ……どういう事何ですかっ?」
ローは少し考える。
ロー「『宿命』の『前世』で『二人は出会った』そして、『魔王』を倒す為に『勇者を助ける』『船』が甦った!」
レア「うっ……なっ……なる……ほ……ど……アツい展開ですね。」
ローはレアの操縦方法をラーニングしていた。
ロー「まあ、そういう事さっ。シヴァ帝国を取り戻し、ラグーン皇王……ふふふふっ、
奴らをぶっ殺せば解決さっ……ひゃはははああああっ」
レア「こっちで……本当にこっちでイイの?あっちの方が……正義だったら……」
ロー「手遅れ……勝ったものが正義っ、ぼくらはもう引き返せないから、あきらめなよ、ひっひっひっ」
レア「やっぱり悪人はこっちの人なのでは………」
【コルゴーン甲板】
コルゴーンは凪の海を滑るように走る。
レア「でっ今はどこに向かっているんですか?」
シャル「魔土じゃ……」
レア「魔土……魔物に蹂躙された島……」
レア「シャルちゃん、そろそろ目的を教えてくれない」
シャル「ふむっ、そうじゃのう。」
シャル「蒼穹王を目覚めさせるための儀式を行うのじゃ」
レア「蒼穹王?」
シャル「蒼穹王は遥か天高くより地上を見まもってきた存在、しかし今は眠りについておる。」
シャル「蒼穹王が目覚めれば、このコルゴーンは無敵の力を取り戻すのじゃ」
レア「むてき?今でも十分強いような気がしますが……」
シャル「今のままでは地上を攻撃できぬ。」
レア「あの火の出る柱で地上を……」
シャル「レア、そなたには手に入れてほしい魔法があるのじゃ。」
シャル「究極魔法『メテオ』『グラビティ』」
レアの目が輝きだす。
レア(ようやく、ようやく、物語の中の世界の冒険みたいになってきましたねっ!!)
ロー「メテオとグラビティ……あの魔法は……危険。はたしてレアに使いこなせるかどうか……」
レア「聞捨てなりませんねローさん。魔法は大得意なんですよっ」
ロー「それは解ってるけど……あの魔法は……」
シャル「まあ、ローが恐れるほどの威力を誇る究極魔法という事じゃ。」
ロー「あの魔法は……フォルトだけでは……」
【魔土 レッドクリフ近隣海域】
アイン「光学で確認、停泊地までの途上に所属不明のガレオン船がいます。」
ロー「VLSハッチ解放、「エルフィン・トマホーク改二』いつでも撃てます」
シャルローテ「まてまてっ……相手が何者かも解らぬうちに討つではない。」
アイン「旗が確認出来ました。所属『聖大河教団 枢機卿御座艦』(すうききょうござかん)」
ロー「うちーかたはじっ」
ポカン
シャルローテ「だから討つなと……」
レア「ローさんは……本当に聖大河教団の神官なんですか?」
ロー「今の僕はシヴァ帝国のパラディンだよ……背教者共に天罰を下しても良い立場なんだよ。ふっふっふ。」
アイン「気付かれたようです、帆が出ました。」
ロー「一応防御の用意はしとかなきゃね。主砲、CIWS起動」
アイン「ガレオン船、旋回します。」
旋回中のガレオン船から大砲が出てくる。
ロー「あっちはやる気満々みたいだよ。」
シャルローテ「仕方がないのう……但し、専守防衛を守るのじゃぞ。」
ロー「アイアイ・マム」
ガレオン船の大砲が火を噴いた。
ロー「CIWS……ん?」
アイン「敵弾射程外です。本船まで届きません」
シャルローテ「なんじゃ?威嚇のつもりか?」
シャルローテ「しかし…それはそれじゃ。」
ロー「ははっ心得ております。」
ロー「神聖にして不可侵……」
ロー「シヴァ帝国皇帝シャルローテ陛下に弓引く者は神であっても死罪確定。」
シャルローテ「1発だけじゃぞ……」
ロー「はい。主砲固定、うちーかたはじめっ」
ドン
低い音が響いた。
ガレオン船から火が出て沈んで逝く。
レア「一発で?」
ロー「なんだ……歯ごたえが無いなあ……」
シャルローテ「接近して救助出来る者は救助するのじゃ」
ロー「はいっ……ミディ、ストロガ、頼んだよ。」
【コルゴーン艦橋】
ストロガ「陛下……救助完了しました。乗員は全員無事な模様です。」
シャルローテ「ふむっ大儀である。」
ストロガ「敵の首領を捉えましたが、聖大河教団の女性のようです。」
シャルローテ「ほう。」
ストロガ「但し砲撃により怪我をしております。」
レア「くっ……年はっ……年齢は?」
ストロガ「だいたい20代半ばといった所ですが……それが何か?」
レアは胸をなでおろした。
ストロガ「今、船室に寝かせておりますので、治療宜しくお願いしますぞ。」
ロー「了解……ふふふふっ」
ローはイヤらしい笑みを浮かべながら艦橋を出て行った。
レア「うっ……とっても、とってもイヤな予感がします。」
【船室前の廊下】
レア「本当に……ほんとうに大丈夫なんでしょうか?」
とてつもない不安に駆られたレアは一応、船室を確かめに来ていた。
???「きゃああああっ、どこ触ってんのよっ」
バシンっ
???「私が寝ている間に何をしたっ?」
ガチャン
扉が開きニヤニヤしたローが出てきた。
頬を腫らし鼻血を出している。
レア「ああああっ勇者パーティとして許されぬ不祥事がっ!」
レア「ろっローさんっなっなっなんて事を!いつか何か………取り返しのつかない事を………やると思ってましたが……!」
ロー「えっ?僕は治療をしてあげただけだけど?」
レア「嘘ですね」
レアは一切の迷いなく答える。
ロー「少しは信用してよっ、仲間なんだから。」
レア「あなたの何を信用しろとっ!?鼻血なんか出してイヤラシイっ」
ロー「いや……これはシャリアに叩かれたから出ただけで……」
レア「はやく被害女性に謝罪して……シャルちゃんにお金をかりて示談にするんですっ」
レア「この不祥事が表ざたになれば……『勇者パーティ』はお終いです。わーーーーーん」
ロー「いや……だから冤罪だって……」




