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閑話:初めてのアフタヌーンティー

エルフ×探偵×魔法ミステリです。


日常と事件が交差する、連作短編風の物語になります。


気軽に読んでいただけたら嬉しいです。

今日は先生と約束した、王国ホテルのアフタヌーンティーの日だ。

待ち合わせはメインロビー。天井が高く、ゆったりとした空間が高級感を漂わせている。


アフタヌーンティー自体は初めてだけれど、雑誌で見たことはある。

あの三段のフォルムを実際に目にできると思うと、朝から少しそわそわしていた。


「お待たせエフィ。待ったかな?」


先生は普段とは違い、きれいめな格好で現れた。


「今来たところですよ。予約してありますので、行きましょうか」


ラウンジへ向かう途中、廊下には様々な花が飾られていて、中央の台座に盛られた真っ赤なバラが特に目を引く。


「いつ見てもゴージャスな雰囲気ね。一度泊まってみたいわ」


ラウンジ前には広いウェイティングスペースがあり、結婚式などの際にはここが使われるらしい。

クロークに荷物を預けて、ルビーという名のラウンジに入ると、いくつ席があるのか見渡せないほど広々としていた。


「エフィありがとう!眺めの良い窓際を取ってくれたのね」

「せっかくなので……メニューは一種類しかなくて、選べなかったですけどね」


ドリンクを注文すると、まずグラスに入ったデザートのようなものが運ばれてきた。


「あれ?三段プレートだけかと思っていたのですが、こういうのもあるんですね」

「これは王国ホテル特別よ。前菜みたいなものかしらね」


ガラスの器の中にはティラミスのようなものが重なっていて、上にはアイスが添えられている。見た目も可愛らしい。


「いや〜さすが王国ホテルね。上品な味。甘いけれどくどくない。紅茶に本当に合うわ」


デザートを食べ終えるころ、待望の三段プレートが運ばれてきた。


「おお……これが夢にまで見た三段プレート。甘い物ばかりかと思っていたら、軽食もあるんですね」

「大体は一段目か二段目がそういうもので、一番上がスイーツってところが多いわ」


先生が早く食べたそうにプレートを見つめている。

一段目にサンドイッチとキッシュ、二段目にサンドイッチとパイ、三段目にムースケーキ、タルト、プリン。


「あれ、スコーンがないですね。定番かと思っていました」

「ふふん。そこもさすがの王国ホテルなのよ。温かいまま出すために、後から来るわ。それより食べましょう!」


先生がサンドイッチに手を伸ばしたので、私も続く。

具材はサラダやハムといった定番で、お腹が空いていたこともあって、気づけばあっという間に平らげていた。


スイーツに移ろうかというタイミングで、スコーンが運ばれてきた。

一口ほおばると、外はさくっと、中はほろりと崩れてからふわっと広がる。焼きたてらしく、表面はほんのり香ばしく、中はしっとりしている。噛んだ瞬間にバターの香りが口いっぱいに広がった。

備え付けのクロテッドクリームやジャムをつけると、また違った味わいになる。


「優しい甘さにコク、それに酸味が重なっていい塩梅ね。甘すぎないから何個でもいけちゃうわ」


先生の言う通りで、紅茶を一口、スコーンを一口、という繰り返しがいつまでも続けられそうな気がした。

最後に三段目のスイーツへ。


「ライチとラズベリーのムースケーキ……酸味と甘みが合わさって、いい味ですね」 「甘い物ばかりだと飽きるけど、酸味が入るとくどさが消えるのよね。甘い物を食べているときが一番幸せだわ〜」


先生が心底幸せそうにケーキを頬張っている。こういう顔を見られると、仕事を頑張っている甲斐があると思う。


「ふぅ〜、満腹ね〜」


食べ終わると同時に、食後の小菓子がついてきた。


「これは長居できる構成ですね」

「おしゃべりしながらゆったり過ごせるのも、高級ホテルの空間づくりのうちよ。この時間帯は人も少ないから、ゆっくりしていってほしいっていうホテルの計算もあるでしょうけどね」


もう一杯紅茶を頼んで、菓子をつまみながらしばらく話した。


「明日からまた仕事ですね」

「仕事のことは考えたくない〜。こんな時間がいつまでも続けばいいのに」

「先生はエルフの森に帰れば、こういう生活ができるのでは?」

「それは嫌。刺激がなさすぎる」


事件があるから仕事があって、仕事があるからこういう時間が楽しめる。複雑なような気もするけれど、それが先生の選んだ暮らし方なのだろう。

窓の外に目をやりながら、私はもう一口、紅茶を飲んだ。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


次回更新は3月24日(火) 20:00更新を予定しています。


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