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幽霊屋敷へ

エルフ×探偵×魔法ミステリです。


日常と事件が交差する、連作短編風の物語になります。


気軽に読んでいただけたら嬉しいです。

女性はカルラという名前で、幽霊屋敷の主人の孫ということだった。

一家が惨殺されたあの夜、たまたま親戚の家に行っていた娘が生き残っており、カルラはその子供だという。


「お母さんはその事件の現場を発見した人で、屋敷は相続したものの、行くたびにフラッシュバックが起きてしまって……それ以来、近づくことができなくなりました」


家族が殺された現場を目にした人間が、その場所に戻れなくなることは珍しくない。

カルラのお母さんがどれほどの思いで発見したのか、想像することもできなかった。


「生前、おじいちゃんが人形を渡す予定だったようで……それを探せなかったことを、ずっと後悔しているという話をしていました」

「お母さん本人が依頼に来られなかったのですか?」

「はい。今、病床に臥せっておりまして……お医者様によると、余命いくばくもないとのことで」


死期を感じ取って、昔の後悔を口にすることは老いるとよくあることだ。

謝りたい人がいる、渡せなかったものがある——そういう話は、探偵事務所にもときどき持ち込まれる。


「それで……人形を探すといっても、特徴はありますか?屋敷にはそこら中に人形があると聞いているのですが」


先ほどから質問しているのは私ばかりだった。

椅子に座ったレイリア先生は話を聞いてはいるものの、微動だにしていない。

何を考えているかは、なんとなく分かるが。


「その人形は魔道具でできているそうで、魔力を流すと動くらしいのです。私はまだ魔道具を扱った経験がなくて、使い方も分からないので、こちらに依頼しに来ました」


踊る何か、笑い声——噂で聞いた話を思い返すと、それがカルラのお母さんへ渡すつもりだった人形なのだろう。

ただ、魔力を流さないと動かないはずの魔道具が、なぜ勝手に動いているのかは分からない。


「分かりました。では、その依頼——」

「エフィ。ダメよ。この依頼は受けられないわ」


依頼を受けようとした瞬間、先生がすかさず遮った。

魔道具と聞いて興味を持つかとも思ったが、先ほどの怖がりようを見ていたから、断るだろうとは予想していた。


「この依頼は危険すぎる。私の命は賭けられても、エフィの命は賭けられないわ」


普段守られていると感じてはいるが、今回ばかりはセリフそのままを受け取れなかった。

それに、私はいつだって自分の命も賭けているつもりだ。そうでなければ、危険なことも多い探偵事務所の秘書なんてやってられない。


「分かりました。先生がそこまでおっしゃるなら——お受けしますね。契約書にサインをお願いします」

「ちょ……ちょっとエフィ!」


先生はその後もずっと抗議の声を上げていたが、言っていることが支離滅裂なので、聞き流して契約書にサインをしてもらった。


****


その日の夕暮れ時に事務所を出発し、夜に調べることにした。

先生は昼間を主張していたが、噂になっていたことがすべて夜の出来事だったので、私が独断で夜に決めた。


「エフィぃぃぃぃ〜何で夜なの。昼間でいいじゃない。魔道具なんだから、魔力流して探して終わりでしょ?」

「何度も説明しましたし、先生だって本当は分かってるじゃないですか」


屋敷に着くまで、先生はぶつぶつと不平を言い続けていた。

そして屋敷が見えた瞬間、踵を返して帰ろうとする。


その気持ちは、少し分かった。

周囲には人も家もなく、手入れされないまま年月を重ねた屋敷は、廃墟と呼ぶほかない佇まいをしていた。

夜風に揺れる草の音だけが、あたりに低く響いている。


「エフィぃぃ。終わったら王国ホテルのアフタヌーンティーセット、奢ってよぉぉ」

「そんな高いものを……私だって怖いんですからね。さっさと終わらせましょう」


王国ホテルのレストランには、一度も行ったことがない。

むしろ怖い思いをするのはこちらも同じなのだから、奢ってほしいのは私の方だと思いながら、及び腰の先生の腕を引いて、屋敷の門をくぐった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


次回更新は3月17日(火) 20:00更新を予定しています。


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