閑話:ビュッフェは闘いだ!
エルフ×探偵×魔法ミステリです。
日常と事件が交差する、連作短編風の物語になります。
気軽に読んでいただけたら嬉しいです。
学会二日目。
本日の発表は全て終わり、メインバンケット――立食パーティーであるホテルのビュッフェ会場に着いた。
どうやら表彰式も例年通りに行われることになったらしい。
「どの発表が表彰されますかね?」
先生についていき色々な発表を見てきたが、結局最も価値がありそうだったのは、事件で発表自体なくなってしまった研究のように感じたため、先生にそう聞いてみた。
「まぁこういうのは事前に大体決まってるから」
「そうなんですか?」
「ポスターセッションとか一部の賞は、審査員が見て回って決めるものもあるけどね」
表彰を受けるために接待したり、派閥があったり、割とどろどろしていることもあるらしいと先生が教えてくれた。純粋な探求心の人が集まるイメージのある研究者たちも、そういう面がある人たちがいるのだと思わされる。
「エフィ。そんなことより……ビュッフェよ」
「……はい?ビュッフェですね」
会場には丸テーブルがいくつもあり、参加者はそれぞれ飲み物を持ってテーブルを囲んでいる。会場には百人以上はいるだろうか。部屋の端には様々な料理が並んでいた。
「ド素人ね……」
「ド素人って……」
見た感じ、ただのビュッフェに見えるが、一体何が違うのか全く分からなかった。
普段と違うのは立食パーティーだということと、席が決まっていないことくらいか……
「いい?学会のビュッフェはね、戦争なの」
「戦争って、普通のビュッフェじゃないですか」
探偵をしているときはクールなのに、こういうときは何を言い出すのか本当に分からない。食べ物のことになると、全然別の人になる。
「ここには研究室に所属していて、食事に飢えている若い学生がたくさんいる。それにこういう会場だと補充がされないこともあるから、人気のある料理は一気になくなるのよ」
先生は血に飢えた狼のように、会場に並べられた料理の数々を眺め、何から取りに行くか品定めをしている。
「美味しそうな料理がいっぱいありますけど、何から取りに行くんですか?」
「まずは、デザート。次にステーキね」
「デザートって最後じゃないんですか?」
「デザートは用意するのが大変で、補充されない可能性がある。私たちがデザートに行くころには既にない可能性が高いわ。ステーキは人気があるけど、ライブで焼くと時間がかかるから、並ぶ前に確保するのが鉄則ね」
言われて気づいたが、私たちが陣取っているのはデザートとステーキの場所に近いテーブルだった。てっきり全方面の料理を取れる中央のテーブルに立つのかと思っていたが、そういう理由で端のテーブルにいるのかと、妙に納得してしまった。
先生ほどではないが、私も甘いものは好きなので、先生に倣うことにする。
ちょうどそのとき、開会の挨拶が終わり、乾杯の音頭が始まりそうになると――先生がそっとグラスをテーブルに置き、音も立てずにすすすっと後ずさりしながら、デザートのほうへじりじりと近づいていく。
乾杯すらせずにデザートを取りに行く準備をするとは、夢にも思わなかった。
唖然としている間に乾杯の音頭が終わると、先生は顔だけはにこやかなまま、速足でデザートのコーナーへと向かった。その光景が妙にシュールで、思わず笑いそうになってしまった。
先生が様々なデザートを取り終えたころ、会場の人たちが一斉に動き出し、料理へと向かう。さながら戦場のような様相だ。
先生も負けじと、デザートをテーブルに置くや否や、次の目当てであるステーキへと戦場に身を投じた。
私はその光景に圧倒されて出遅れてしまったが、気を取り直して様々な料理を楽しむべく、私も戦場へと向かうのだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
次回更新は3月10日(火) 20:00更新を予定しています。
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