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魔術学会での事件

エルフ×探偵×魔法ミステリです。


日常と事件が交差する、連作短編風の物語になります。


気軽に読んでいただけたら嬉しいです。


週2更新です。

「通常人体というのは、自然に修復しますが、ポーションの場合……」


今日は先生の付き添いで魔術学会に来ている。

魔術学会は、四元素魔法(火・水・土・風)と錬金術の体系として行われているが、本日はその中の錬金術に関する学会となっている。


学会は一般に公開されていない。

参加には魔力登録が必要で、さらに複数名の推薦が必要となる。

学会誌には固有の魔力紋章とシリアルナンバーが刻まれており、こういった仕組みで外部への流出ができないようになっている。


「万能薬の研究が盛んに行われているようですが、本当に可能なんでしょうか?」


小声で先生に尋ねると、先生は発表者に視線を向けたまま答える。


「万能薬が何を指すかにもよるけど、人の免疫機構ですら誤作動を起こすのよ。無害なものを敵と判断することもあれば、本物の脅威を見逃すこともある。万能なんて、理屈の上でも無理があるわ」


例えばポーションも、自然治癒を促進するものだ。

理論的には可能とされる欠損を治すものもいまだにできていない。


壇上では理論式と魔力循環図が次々と示され、気づけばすっかり夕刻になっていた。


「ん~。これでとりあえず学会も終わりね」


先生が大きく背伸びをした。


「何か新しい発見とかありましたか?」

「進歩はしているわ。でも全部、既存理論の延長線上。研究というのは積み重ねだから、そう簡単に革命は起きないのよ」


今日の学会は昼休憩を含めて、朝八時から夕方五時までと、ぎっしりと発表が詰まっていた。

合間に休憩はあっても、さすがにこの時間を集中して聞くと疲労感がすごい。


「とりあえず、立食パーティーまであと二時間。どこかで暇をつぶしましょう」

「混むかもしれませんが、一階のカフェではどうですか?近くに牧場があって、そこのミルクを使ったパフェがあるそうですよ」

「……意外とエフィも目ざといわね。でも、それは楽しみだわ」


パフェと聞いた途端、さっきまでの疲れた表情とは打って変わり、瞳がきらりと輝く。

ミルクは産地によって全然変わると先生が以前言っていたので、どういう味なのか私も楽しみだった。



一階のカフェに到着すると、席がそれほど多くないうえ、学会に来ている人の多さから混雑していた。

タイミングよく二人席が空いていたので、私たちはすんなり入ることができた。


「先生は何を頼むんですか?」

「私はこれ。ほぼソフトクリームみたいなパフェ。クリーム系は素に近い方が好きかな」


確かに果物の味は濃いし、クリームの甘さと喧嘩することもある。

でも私は色々な味を楽しみたいので、フルーツパフェを選択した。


「すみま……」


注文のために店員を呼ぼうとしたそのとき、


「がっしゃぁぁぁぁぁぁん」


ガラスや皿が床に落ちたような音が店内に鳴り響いた。

店員が落としたのかと思って音がした方を向くと、周りの人の悲鳴と共に、人が倒れているのが見えた。


「エフィ。行くわよ」


先生の声が、一瞬で仕事のときのそれに変わる。

人垣をかき分けると、皿やコップの割れた破片の散らばる中に男性が倒れていた。

顔色は紫がかり、首元には苦しかったのかかきむしった跡がある。

先生は迷いなく膝をつき、頸動脈に触れた。


「……死んでいるわね。エフィ。ここから誰も出さないように。治安院への連絡をお願い」

「……分かりました」


私はすぐに近くの警備員へ状況を伝え、急いで治安院の人間を呼びに行った。

魔術学会の最中に、死亡事件。

偶然とは思えない。

毒なのか、魔力干渉なのか――

不安を抱えたまま、私は近くの治安院に向かって走り出した。


ここまでお読みいただきありがとうございます!


もしよろしければブックマークなどしていただけると喜びます。


次回更新予定は2/26(木) 20:00を予定しています。

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