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60話 勇者パーティーの奮闘(4)

所持スキル


パッシブスキル  『無限転生』『視力向上』『聴力向上』『運向上』

         『容姿向上』『短剣特効(速)』『水中歩行』『暗闇無効』

         『投擲(必中)』『レア世界』『頭脳向上』『視界向上』

アクションスキル 『空中跳躍』『物体透過』

 壊滅した村がいい隠れ(みの)になった。もしくは運向上のスキルが少しは役に立ったのか。夜襲は受けず、待望の今日を迎えた。

 ろくに寝返りを打てないので身体の節々が痛む。俺は生欠伸をしながら隙間から這い出した。他の三人はすでに起きて車座(くるまざ)になっていた。

 全員が揃ったところでヒーラーが深刻な顔で口を開く。

「昨晩で食料と水が尽きました。どこかで補給しないと王都までの道程は厳しいと思います」

「それで当てはあるのか?」

 加わった俺が()くと右隣にいた勇者が呟く。

「カタバ(とりで)になるかな」

「あそこには店がない。配給物を回して貰うつもりなのか」

 左隣にいた魔法使いは言いながら右脚の膝を立てた。踏ん張るような動作で怪我の具合を確かめているようだ。

「そうだよ。勇者の身分を明かす。あとは手持ちの金貨を使えば融通してくれると思うよ」

「キラク、接近する敵はいますか」

 ヒーラーの問いに俺は、いない、と端的に返した。

 方針が決まったとばかりに全員が立ち上がる。少し遅れた魔法使いに俺は背中を向けて中腰となった。

「俺が背負って運ぶ」

「必要ない。かなり足の状態はよくなっている」

「だが、完治はしていない。傷が悪化したらどうする? カノンが武力の(かなめ)ならローガンは魔法の要だ」

 強い言葉で中腰の姿勢を保つ。間もなく背中に重みを感じた。

「すまない」

「今日の俺は昨日とは違う。任せろ」

 昨晩、残骸に埋もれていた短剣を入手して三本となった。左手の指の間に挟み、出発の時を待つ。


 勇者が先頭に立ち、林の中を突っ走る。俺は周囲の音を探りながら得た情報を速やかに全員へ伝えた。無駄な戦いは避けて体力の温存を図り、湿地帯の手前にある石造りの堅牢な砦に到着した。正面にある巨大な門は閉じられていた。

 そこで勇者が最初に名乗りを上げた。

「王都の勇者カノンだ ! 物資の提供をお願いしたい!」

 声に呼応するように塀の上部に重装備の兵士達が現れた。一歩を踏み出すタイミングが同じで横一列に綺麗に並んだ。中央にいた人物が隊長なのか。巨躯(きょく)に相応しい声を放つ。

「これは温情だ! 早々に立ち去れ!」

「ここを離れる前に補給をお願いしたい!」

「断る! 同じことを二度も言わすな! 構えろ!」

 兵士の隙間から軽装備の弓兵が現れた。反撃に備えて周囲を大きな盾が覆う。その連携は滑らかで歴戦の猛者と重なって見えた。

 勇者の握り締めた拳が微かに震えている。ヒーラーは伏せた目で唇をきつく結んでいた。

 その悔しさは理解できる。勇者に対する態度ではない。俺の目から見ても冷酷な仕打ちに思えた。それとは別にある思考が巡る。


 どこが温情なのだろう。


 頭脳向上のスキルが頭の回転を速くしているのか。その疑問を紐解く一言が思い浮かび、躊躇(ちゅうちょ)なく声にした。

「宝玉を奪い取らなくていいのか」

 言葉だけでは足りないと思い、含み笑いを添えた。

 小さな金属音が重なって聞こえる。兵士達の視線は中央に注がれた。

「温情の意味が、わかっているのならば、立ち去って欲しい」

「わかった」

「どういうことですか!?」

 ヒーラーの驚きに、あとだ、と小声で答えて(きびす)を返した。


 湿地帯から少し離れたところに木々に覆われた野営地があった。しばらく使われていないようで破れ目が目立つ天幕の中に身を潜めた。

 勇者は悔しさを滲ませた表情で訊いてきた。

「砦の兵士の態度、宝玉と、どう繋がる?」

「余程、大事な物らしい。魔王は人間にも指示を出したようだ。勇者から宝玉を奪い取れと。生死は問わないのだろうな」

「そのようなことがあるなんて、信じられません! わたし達は人々のために戦っているのに……」

 ヒーラーは目を()き、間もなく沈痛な面持ちで黙り込んでしまった。

「だから、温情なのか。ただの延命に過ぎないと思うが」

 魔法使いは暗い目で(わら)う。背中は丸くなり、やけに小さく見えた。

 ここに長くとどまっていても命運は尽きる。それならば愚直に進むしかない。

「魔王は手段を選ばない。宝玉の奪還に躍起になっている。利用方法はわからないが、この小さな玉に俺達の運命が掛かっていることは間違いない。それなら、どうするのが正解だ?」

 ヒーラーや魔法使いを見て、最後に勇者に目を注ぐ。

「王都を目指そう。僕達にできることはそれしかない」

「決まりだな」

 俺は勇者に向かって(てのひら)を上げた。

「どういう意味?」

「パチンと合わせればいい」

「こんな感じかな?」

 不思議そうな顔でハイタッチをした勇者に、それでいい、と俺は不敵に笑って立ち上がった。


 出発の直前、三人に地理に関することを全て語って貰った。そこで得た情報の一つに湖がある。飲料水としては適していないが、魚は獲れるらしい。

 食料補給には欠かせない。寄り道という程、王都から離れる訳ではないので強く提案した。

 しかし、ヒーラーは最後まで不満を零した。

「普通、素手で魚は獲れませんよ」

「普通ではない俺には当て嵌まらない」

 その一言で捻じ伏せた。


 俺は女神様の加護を受けた異世界人だからな。


 ヒーラーは溜息を吐き、信じます、と苦笑いで言った。

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