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48話 壊れたおもちゃ(3)

所持スキル


パッシブスキル  『無限転生』『視力向上』『聴力向上』『運向上』

         『容姿向上』『短剣特効(速)』『水中歩行』『暗闇無効』

         『投擲(必中)』『レア世界』『頭脳向上』

アクションスキル 『空中跳躍』

 最初に挑んだ地下ダンジョンで心が折れそうになった。敵の強さは問題にならない。片っ端から撫で斬りにした。レベルも上がって五十のカンストを迎え、もはや敵なし。

 最後に立ちはだかったのは2Dの仕様であった。壁は漏れなく細い線で通路という切れ目を血眼になって探した。見つけて突進しても行き止まり。別のルートを試しても同じでグルグルと回る羽目になった。

 怒りの限界を超えて楽しくなってきた。大声で笑って咳き込み、本物の狂人さながら頭を壁にぶつけた。体当たりを繰り返した。

 その果てに新たな通路を発見。壁の一部がすり抜けられたのだ。RPGではよくある仕掛けだが、実際に身に起こると発狂しそうになる。

 それ以降、壁への体当たりが必然となり、ようやく最下層に辿り着いた。

 小部屋の中央に紙切れのような宝箱が置いてある。開けると中身は空っぽ。ここまでの苦労は水の泡、とはならない。これも手垢(てあか)に塗れた仕掛けで何度も調べると二重底が判明する。で、隠された宝が手に入るという様式美みたいなものだ。

 五回、試した。十回まで粘った。二十回で叫び、小部屋の壁の全てに頭突きを食らわした。

 淡い期待は砕かれた。隠し部屋は存在しなかった。


 駆け足で地上に戻った俺は『迷宮、宮殿、塔、洞窟』を次々と踏破した。装備は充実したが万全を期す為、王族の宝物庫にも手を出した。

 それ以降、お尋ね者として世間に知れ渡り、街に入る度に騎士団と衝突した。もちろん圧勝で巻き上げた金は十万ゴールドを超える。

 どちらが魔王なのかわからないが、俺は最強を自負して魔王城に乗り込んだ。門番は御託を並べる前に瞬殺した。

 城内にも敵はいた。名ばかりの四天王を切り刻み、浄化の炎で焼き尽くした。

 無尽蔵に現れる命知らずの雑魚は逃げの一手で(かわ)し、長い階段を駆け上がる。最強の防具に守られているので背中に痛みはまるでなく、快適な状態で玉座の間に踏み込んだ。

 そこに魔王がいた。

「配下の者を退(しりぞ)け、よくぞここまで辿り着いた。褒美として死を授けよう」

 玉座で踏ん反り返った魔王もペラペラ。軽薄な言葉に飽きれ、俺は雄叫(おたけ)びを上げて襲い掛かった。

 場面は変わり、魔王と横向きの姿で睨み合う。俺は容赦ない一撃を選択した。

 荒いドットの光の刃を飛ばす。鬼瓦のような魔王の顔面を捉えた。まさに一撃必殺の威力で崩れ去る。

 即座に負け惜しみのような声が聞こえてきた。

「どうやら真の力を見せる時がきたようだな。圧倒的な差に震えるがいい!」

「あるよねー。第二形態は。魔王だからね。往生際が悪いのも承知の上で、今度こそ死ね!」

 大柄な魔王が巨大化した。はち切れんばかりの腹部を見せ付けられた。視界に収まらない大きさに辟易(へきえき)して貫通魔法を三連弾。放出した黒い大玉に穿(うが)たれ、バランスの悪いオブジェと化した。

「これ、いる……負、きく……ガ、ガぁ……」

 まともに喋れず、霧散した。

 一時の静寂。それを打ち破る心音に声が混じる。

「……異世界から召喚(しょうかん)した邪神の禍々(まがまが)しい力に絶望せよ!」

「ああ、そのパターンね。あるよねー、他力本願。自力で勝てないからって、それは情けないでしょ。生き恥を晒すくらいなら、さっさと死ね!」

 頭部が五つで腕が四本。魔王はキメラとして蘇った。こちらは巨大な(いかずち)天葬雷(てんそうらい)を選択した。

 先制を許してしまった。魔王は暗黒の十字架を放つ。四つ切りを狙った攻撃は女神の盾で無効化した。

「そ、それは神々が人類に託したアーティファクトか!」

「丁寧な説明、ありがとう。それではさようなら」

 天葬雷が魔王を呑み込んだ。白い輝きに分解されて無に帰す。

「ようやくか」

「まだ、だ」

 輝きが収束すると中心に、つるんとした銀色の小人がいた。大きな黒目でこちらを見つめている。

「……魔王の名は捨てた。防御も捨てた。攻撃に特化し、たった一つの先制魔法で貴様に、死を!」

「それが最終形態ね。最後の頼みの綱が攻撃魔法ね。女神の盾の前では無力だ。無様に死ねええええ!」

 コマンドを選ぶ前に魔王が必殺の魔法を唱えた。

「コマンドシャッフル!」

「なんだ、それ?」

 何も起こらなかった。不発に終わったのだろうか。構う必要はないので迷わず、最強の魔法を選んだ。

「あああ、は泣きながら逃げ出した」

 信じられないことが起こった。当然の流れで石につまづいて逃げられなかった。

 混乱していると小人が滑るように近づき、凄まじい速さの連撃を繰り出す。合計で百二十ヒット。体力の八割を削られた。

 浮かれ気分は消え去り、窮地(きゅうち)が頭の回転を速くした。


 コマンドの位置を完璧に覚えた俺が間違えるはずがない。あの魔法は攻撃ではなくて、コマンドの位置をランダムに変えるものなのだろう。


 そうだとしても打つ手がない。コマンドを入れる前に相手の魔法を食らってしまう。運向上のスキルに賭けるしかない。

 小人は魔法を唱えた。受けた俺は適当な位置のコマンドを選び、再び最強の魔法を指定した。

猫騙(ねこだま)しを使った」

 絶句した。魔法のコマンドは引き当てた。が、選んだ魔法が間違っていた。

 小人が滑るように近づいてくる。


 そうか。魔法を選ぶところもシャッフルされるんだな。


 二度目の連撃には耐えられなかった。急速に視界が暗くなる。

 無機質な声で、ゲームオーバー、と言われた。

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