ホブゴブリンとゴブリンメイジ
「さてと、【霊体化】を維持するのも魔力の無駄だしさっさと始めるか……」
魔法の使い方はなんとなく脳内に浮かんできたから大丈夫。
魔法はイメージ。
心臓から流れる魔力を使い、イメージする魔法を形にする。
俺は目を閉じて手を前に突き出す。
イメージする魔法は氷の槍。
俺の頭の中にイメージした氷の槍が完成するとともに、魔力が減っていく感覚が伝わってくる。
……よし! 出来た!
俺が魔法を使おうとしてることに気づいたようにゴブリンメイジが慌てたように俺の方を見る。
「グギャッ!?」
「遅い! 《アイスランス》!」
その瞬間俺の手から氷の槍が形成され、ゴブリンメイジに向けて放たれる。
放たれた氷の槍はゴブリンメイジの胸部を貫く──
「グゴァァ!!!」
──前に、ホブゴブリンが俺が放った《アイスランス》とゴブリンメイジの間に立ちふさがる。
そして、俺の放った《アイスランス》を背中の斧を抜き振るうことで粉砕した。
「うわぁ……」
……えぇ……うっそだろ……
俺、今【霊体化】使ってるんだけどなぁ……
だけど、ボブゴブリンも無事ではなかったみたいで、使っていた斧を地面に落とし、両腕が震えている。
……不意打ちは失敗したみたいだけど、ホブゴブリンはひとまず後回しだ!
「《アイスランス》!」
ホブゴブリンに構ってられないので、【霊体化】を解除してさっさとゴブリンメイジを倒すために《アイスランス》を再度放つ。
「グギャァァ!!」
だが、今度はゴブリンがゴブリンメイジの前に立ちふさがり、俺の放った《アイスランス》を体で防いだ。
《アイスランス》で体を貫かれたゴブリンはそのまま地面に倒れ、ゴブリンメイジの盾となったゴブリンは光の粒子となって消えていった。
マジかよ……! 自分を盾に……!?
「グギャギャギャ!」
盾となったゴブリンが倒れるとゴブリンメイジは杖を高く上げる。
「マズイ!」
嫌な予感がして慌てて【アイテムボックス】から鎌を取り出して、隠れていた木の上から飛び降りゴブリンメイジに接近する。
だが、それよりも早くゴブリンメイジは【火魔法】を使用してきた。
「《グギャガァ》!」
ゴブリンメイジは【火魔法】を使った瞬間杖を俺に向ける。
すると、杖の先端に赤い魔法陣のようなものが形成され、そこから巨大な炎の玉が撃ち出される。
避けるわけにはいかないよな……!
山火事になるし……!
「くっ!? 《アイスボール》! 《アイスボール》! 《アイスボール》!」
俺は慌てて打ち出された炎の玉を止めるために新しく考えた氷の玉を打ち出す魔法の《アイスボール》を連続で放つ。
すると、炎の玉と《アイスボール》がぶつかり合い、水蒸気を発生させながら消えていく。
……チャーンス!
「フッ!」
全速力で水蒸気によって視界が遮られながらも、【気配感知】に【直感】、【感覚強化】によって強化された嗅覚、聴覚のフルコースを利用してゴブリンメイジに接近する。
「グギャッ!?」
そして、ゴブリンメイジが俺が近づいてきたことに驚きの声を上げる。
「【吸収】……《影薙ぎ》……!」
それと同時に、俺は【吸収】と戦技の《影薙ぎ》を使い、手に持つ黒い光を纏った鎌を振るう。
「ギャッ……!?」
ゴブリンメイジは悲鳴を上げることも出来ず、鎌によって首と胴体を切断され、地面に崩れ落ちる。
「よし……!」
これでまず一体!
良いな! 【鎌術】のおかげか体がよく動く!
それに、【吸収】のおかけでだいぶ減ってた魔力も回復した!
俺は地面に崩れ落ちたゴブリンメイジが動かず、消えていくことを確認する。
「グゴォォォ!!」
その間にも背後からゴブリンの怒りの声が響く。
どころか、一体背後から叫びながら近づいてきている。
ホブゴブリンだな。
振り返って確認すると、ホブゴブリンが地面に落とした斧を拾い上げ、近づいてきている。
他のノーマルなゴブリンも同様で、木製の棍棒を振り回しながらこっちに向かってきている。
「いやー……どうしようかなぁ」
「ゴブァァァァアアア!」
「「「ゴブァァ!」」」
鎌を片手に呟くと、それに怒ったようにホブゴブリンは雄たけびを上げる。
それに合わせるように他のゴブリン達も雄たけびを上げ、ゴブリンが突撃してきた。
「くっ……! 《アイスランス》!」
突撃してきたゴブリンに対応するため、俺はゴブリン達へ向けて《アイスランス》を放つ。
《アイスランス》は突撃してきたゴブリンの内の一体が持つ棍棒を貫通し、ゴブリンの体を貫く。
だが、まだゴブリンは九体いる。
だが……
「チッ! もう魔力がないか!」
ゴブリンメイジに【吸収】を使って攻撃したおかげで、《アイスランス》一回分は回復してたんだけど……
やっぱり《アイスボール》三連がいたかったよなぁ……
「ゴブァ!」
「【吸収】! 【毒付与】!」
飛びかかってくるゴブリン達に対抗するために、【吸収】と【毒付与】のスキルを使用する。
【毒付与】は武器に毒属性を付与するスキル。
付与するのは、一般的な毒。
イメージが簡単な人に害を与える毒だ。
これにさっきも使った吸収を合わせて……!
「フッ!」
近づいてくるゴブリン達を切りつける。
俺の振るう鎌に切りつけられたゴブリン達は次々に倒れていく。
「ゴブッ……!?」
切りつけられたゴブリンは次々に倒れ、そのまま動かなくなる。
「グギャァァ!?」
毒の効果により全身を痙攣させるように震わせながら倒れるゴブリン達に動揺したように残ったゴブリン達が悲鳴を上げる。
よしよし。ちゃんと効いてるな。
この内に……ホブゴブリンを倒す!
「フッ!」
悲鳴を上げるゴブリン達を無視して、俺はホブゴブリンに接近する。
「ゴブァ!」
接近する俺に対抗するようにホブゴブリンは手に持つ斧を横に薙ぎ払ってきた。
しかも、その斧は赤く光っている。
戦技……!
だけど、それなら!
「ほっ!」
俺はその薙ぎ払いをジャンプして躱して、振り切った後でガラ空きになったホブゴブリンの胴体に鎌を突き刺す。
「グゴッ!?」
「おらっ!」
ホブゴブリンが痛みにうめくのを無視して鎌を引き抜く。
もう一回……!
「グゴォォ!」
「うおっ!?」
だが、鎌を引き抜くと同時にホブゴブリンは大きく吼えて地面を踏みつけた。
その震動で俺の体勢が崩れてしまう。
マズイ……!
ホブゴブリンは体勢を崩した俺に向かって斧を振り下ろしてきた。
だけど、俺は慌てて転がるようにして振り下ろされた斧を回避する。
そして、起き上がって体勢を整えて……
「くらえ! 《荒れ狂う鎌風》!」
【鎌術】のスキルレベルが上がったことで増えた戦技を発動し、黒い光を纏った鎌を高速で何度も振るう。
《荒れ狂う鎌風》は、連続で鎌を振るうことで相手を切り裂く技だ。
いわゆる連続技。
「グゴァァ!?」
高速で振るわれる鎌によってホブゴブリンの体に無数の切り傷が刻まれていく。
「グゴォォ……!」
ホブゴブリンは血を流しながらもまだ倒れない。
「まだだ! トドメ! 《影薙ぎ》!」
俺は追撃として《影薙ぎ》を使用し、黒い光を纏った鎌でホブゴブリンの首を狙う。
「グガッ!?」
ホブゴブリンは驚愕の声を上げるが遅い。
俺の振るった鎌によって首を切られ、血飛沫を撒き散らしながらホブゴブリンは倒れる。
「ふぅ……よっしゃぁ!」
『種族Lv.が上がりました。レイスLv.17になりました』
倒したぞ!!!
ホブゴブリン討伐ぅ!
最初の不意打ちが失敗してマジで焦ったぁ!
でも、これで残るは残ったゴブリン達だけ!
「さっさと終わらせるぞ……!」
「ゴ……ゴブァァァァアアア!」
ホブゴブリンを倒したので、残ったゴブリン達を倒そうと思ったのだが、残ったゴブリン達は一目散に逃げていく。
「あっ!? 待て!」
俺は慌てて逃げ出したゴブリンを追いかける。
ちょ! バラバラに逃げるなぁ!
待てぇぇぇ!!!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ブックマーク、評価、いいね、ありがとうございます。
続きが読みたいって思っていただけたのならブックマークと広告の下にある☆☆☆☆☆に★★★★★評価をしてくだされば作者のやる気がマシマシになりますのでぜひお願いします。