捜索とゴブリン
「それじゃあ早速……【看破の魔眼】」
【気配感知】と【直感】は自分でOFFにしない限りは常にONになっているスキルらしいので、【看破の魔眼】だけ魔力を10ほど消費して使用する。
【看破の魔眼】を使用すると、さっきまでごくごく普通の山や森だった周りの光景に違いがある部分があった。
というのも、今立っている木の上から見える中だけでも、二箇所赤く光って見える場所がある。
その地面はそれぞれ普通の地面と、草むらの方だ。
「あそこになにがあるのか?」
【看破の魔眼】を使った状態で光って見えるからにはなにかある可能性が高い。
というか、地面に草むらって時点で察せるけど。
「おぉ……やっぱりな」
予想通りというか、なんと言うか、俺の目論見通りに罠が見つかった。
一つ目は地面で赤く光っていた箇所。
その箇所に近づくと、地面に穴が掘られているのを見つけることが出来た。
確かに、先生に聞いていた通り穴があり、わかりにくく掘られていて落とし穴というレベルではないけど、気を抜いて歩いて引っ掛かったら体勢を崩してしまいそうな穴ではある。
具体的にいうなら、直径約15cm深さ約10cmくらいの穴だ。
これならなにも知らなかったとしたら穴で転んだり、足を挫くのは仕方ないよなぁ……
二つ目は草が結んである箇所だ。
これはかなり性格が悪かった。
草を結んだものは背の高い草むらの中に隠すように結んであった。
しかも、その草むらの中に入ってしっかりと注意深くみないとわからないような場所に結んである。
草むらだから、この場所に人が入ることはほとんどないだろうけど……引っ掛かる人は引っ掛かるぞこれ……
俺も【看破の魔眼】がない限りは気づけないだろうなぁ……
しかも数本で結んであって簡単にちぎれるようなイタズラなどで使うタイプじゃなくて、何本も草を纏めて結んであったから引っ掛かっても簡単にはちぎれないタイプだった。
……うん、やっぱりそうだよな。
こんなものが自然に出来る分けない。
間違いなく人工的に作られたものだ。
穴については他にも自然にできた穴らしきものがあるのに、俺が見たところだけ赤く光っていた事から考えても人工的に作られたのは間違いないな。
「となると……なにが目的でこんなことをしているのか……だな」
こんな山でここまで手の込んだ事をしている理由はなんだ……それに朝のニュースの事件も……子供か、それともその後ろにいるかもしれない大人か……どっちだかわからないけど、なにかが関係しているのは間違いない。
……もうちょっと詳しく調べてみるか。
でもどうしようかな……一応まだSPを使ってスキルは取得出来るから、また新しくスキルを取得するのもありだと思うけど……
残りが少ないから、出来ればSPは使いたくないんだよなぁ……
「……あ、そうだ。【鑑定】って使えるのかな……」
スマホには使ったことあるけど、その時は確か詳細に細かい内容があったし、もしかしたら【鑑定】を使えば情報を得られるかも知れないな。
……よし、物は試しだ。
「【鑑定】」
【看破の魔眼】で赤く光っていた穴に向けて、【鑑定】を使用する。
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名称 :転ばせ罠
レア度:E
状態 :普通
詳細 :ゴブリンの手によって雑に掘られた穴。
転ばせる事を目的とされている。
────────────────────
鑑定結果は……んんんんんん??????
衝撃の【鑑定】の内容に俺は思わず首を傾げる。
待て待て待て待て。
ゴブリン? 何でゴブリン?
ここファンタジーな世界じゃないよね?
現代日本だよね?
……あれ、でもそういえば境界の管理者さんからの連絡にレッサーレイスとゴブリンが侵入ってあったよな……?
……それかぁ~……絶対にそれだよなぁ~……
「いや、これどうするんだよ……」
ゴブリンがどういう存在なのかはわからないけど、少なくともとんでもないことが起こっているのはわかる。
ちなみに、草が結ばれてたものも草結びの罠という名前のもので、こちらにもゴブリンが作成したと詳細には書かれていた。
……うーん。これ、俺が対処するしかないか?
下手したらこのままだとまた被害者が出るかもしれないし。
それだけは絶対に阻止しなければならないよな。
……それに、なによりもここは父さんや母さんとの思い出の土地だから荒らされるのが俺は嫌だ。
欲をいえば俺が動かずとも警察や自衛隊が倒してくれるのがありがたい。
だが、ゴブリンというファンタジーな存在には、同じファンタジーの存在であるレイスの力がある俺が対応した方が確実だろ。
警察とかの場合はそもそもまともに対応してくれるか怪しいし。
「よしっ! そうと決まればゴブリンを探すか!」
情報としてゴブリンがいるという情報は得ることが出来た。
となると、あとはゴブリンがどこにいるかを探して、どんな見た目をしているかの情報が欲しい。
あとは……ゴブリンを相手にするなら武器になりそうなものが欲しいけど、まずは情報だ。
今の素手の状態の俺にも対処出来そうなら、対処するがダメそうなら武器を用意すればいい。
幸い素手の状態で使えるであろう【柔術】のスキルがあるからな。
というわけで、俺は早速移動することにした。
目的の場所はさっきの転ばせ罠があった場所の近くにする。
理由としては、罠があったということは少なくともこの辺りにゴブリンは来ていて、罠を探していけばゴブリンと遭遇するかもしれないと思ったからだ。
「まあ、その予想が当たってるかはわからないけどな」
そう呟きながらも俺は草むらをガサゴソとかき分けながら進む。
……というか、本当に草むらが深い。
これ、本当に普通に歩いてたら罠に引っ掛かって絶対足をくじいてたな。
あってよかった【看破の魔眼】。
そのように足元を【看破の魔眼】で警戒しながら、ゴブリンの捜索する事三十分。
いくつかのゴブリンが作ったであろう罠を見つけることが出来た。
転ばせ罠が三つに草結びの罠が一つの計四つだ。
スリーアウト! それどころかフォースアウト!
ふざけんな! 多いわ!
いや、これはちょっと本当に想定以上にあるな。
「てか……これってゴブリン二体で出来るのか……?」
病院で先生に聞いた限り、結構な範囲に似たような罠は仕掛けられていて、この山に来る人を襲ってるんだろ?
それを境界の管理者が追跡を振り切られたといっていた二体だけで出来るのか?
いや、無理のはずだ。
それに、もし二体だけだったとしたら、襲われた人達が複数の子供達とは表現しないだろ。
二体しかいないんだから正確に二人と答えられてたはずだ。
となると、この境界の管理者のいっていた事と実際の数の違いの原因は境界の管理者の認識ミス……
……または考えたくないが、繁殖によって増えたかの二択だな。
……俺は繁殖によって増えたんじゃないかってのが濃厚だと思ってる。
てか、そうでもないと境界の管理者がマヌケすぎるし。
「……それにしても、異世界からの特定外来種は本当に洒落にならないだろ……」
特定外来種と呼んで良いのかもわからないが、少なくとも人に被害が及んでいる以上は間違ってはいないだろうが。
「それにしても……ゴブリンいないなぁ……」
まあ、簡単に見つかってたら警察が今頃俺が対処しなくても良いぐらいには騒ぎになってるはずだよな。
ハハハハハ。
………………さて、そろそろ現実を見よう。
「……ここどこだ?」
ゴブリン探しに夢中になっていたら、今いるところがわからなくなった。
森の結構深いところに来てしまったのは確かなのだが……なにか通ってきた道がわかるような工夫をしてくるべきだったなぁ。
もう後の祭りだけど。
一応【飛翔】スキルを使えば空へ上がることも出来るから、帰れることは帰れるからなんとかなりはするか……
「……ん?」
そんなこんなを考えていた時、俺の【気配感知】になにかが引っ掛かった。
その反応は俺が今いる場所から少し離れたところ。
そこに三つほど固まった反応がある。
「警察か……ゴブリンか……さぁ、どっちかなー」
とりあえず確認だけするか。
「【霊体化】、【飛翔】」
【霊体化】によって体を霊体にしてから、【飛翔】を使い空を飛び、反応があった場所へ向かう。
反応が警察なら警察で良い。
無駄に姿も見せる必要もないし、静かにその場を離れるだけだ。
それから少しの間空を飛び、反応があった場所へと辿り着いた。
「……ビンゴか」
反応が三つあった場所にいたのは三体の生物。
「グギャァ、グキャ」
「ギャギャグギャ!」
「ギャグギャギャギッ!」
緑色の肌。
細長くとがった耳。
細い手足に小さい体躯。
体長はだいたい俺の腰までだろうか。
そんな化け物達が木製の棍棒を持ち、腰にボロ布を巻いただけの状態でそいつらはそこにいる。
その姿はまさにゲームや漫画などで見るゴブリンそのものと言えるものだった。
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