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呼び出し

朝もやの立ち込める王宮の廊下を、レティシアは静かに歩いていた。


昨夜のパーティーの後始末に追われる使用人たちが行き交う中、王太子からの呼び出しを受けたのだ。

彼の執務室がある西棟へと向かう途中、レティシアは窓の外に広がる王宮の庭園を一瞥した。



七年前、彼女がこの国に来たときは、まだ手入れの行き届いた美しい庭園だった。


しかし今は、王太子の派手な宴のせいで荒れ果てている。

昨夜も、深夜まで続いた宴の痕跡が、散乱した酒瓶や踏み荒らされた花壇となって残されていた。



「レティシア様」



廊下で出会う使用人たちは、彼女に会釈するのがやっとという様子だ。

昨夜の婚約破棄の一件で、もはや誰もが彼女を避けるように振る舞っている。




「入れ」


執務室ドアをノックすると、王太子の声が響いた。ドアを開けると、フレデリックが昨夜の宴の疲れも見せず、むしろ愉快そうな表情を浮かべていた。


「座れ」


その一言には命令的な響きがあった。レティシアは黙って従う。七年間、彼女は常にこの態度に耐えてきた。



執務室の中は、驚くほど散らかっていた。積み重なった未処理の書類。放置された請願書。それらの多くは、昨日までレティシアが処理していたものだ。



フレデリックは豪華な椅子に座り、レティシアを見下ろすような姿勢を取った。




「お前には、まだ価値がある」




その言葉には、まるで使い古した道具を評価するような響きがあった。

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