新しい時代の幕開け
満月の光が、世界を銀色に染める夜が訪れた。
アイシュエット家の大広間には、温かな灯りが揺らめいていた。
天井高くまで届く窓からは、月の光が差し込み、床に敷き詰められた純白の絨毯を優しく照らしている。
「若奥様、準備が整いました」
エマがレティシアの手元で、最後の仕上げに余念がない。
純白のドレスは、領地の職人たちが心を込めて織り上げた最高傑作だった。
「ありがとう、エマ」
レティシアの髪に、アイシュエット家の簪が美しく輝く。
一方、別室ではエリアスが父と言葉を交わしていた。
「誇らしく思うぞ、エリアス」
エドヴァルドは、アイシュエット家に代々伝わる剣を息子に手渡す。
「この剣と共に、家の誇りを受け継ぐのだ」
「はい、父上」
エリアスの声には、確かな決意が宿っていた。
大広間には、既に多くの人々が集まっていた。
アムレアン皇国からの使節、領地の人々、そして家族たち。
彼らの表情には、この日を心から祝福する喜びが溢れている。
鐘の音が、夜空に響き渡る。
エリアスが広間に姿を現し、そして──。
「若様」「若奥様」
人々の声が、感嘆の色を帯びる。
月光と燭台の灯りに照らされながら、レティシアがゆっくりと歩を進めていく。彼女の周りには、かすかな光の粒が舞っていた。
神の祝福が、この瞬間を見守るかのように。
「レティシア」
エリアスが、彼女に手を差し出す。その仕草には、もはや初めて出会った頃の敵意も、戸惑いも、欠片も残っていない。
「エリアス」
二人の手が重なる。
誓いの言葉が、静かに交わされていく。それは、既に交わされた約束の、改めての確認のようでもあった。
この領地と、
この人々と、
そしてお互いを、
永遠に大切にし続けることを。
「エリアス・アイシュエット」エドヴァルドの声が響く。「そしてレティシア・アイシュエット」
侯爵の言葉と共に、大広間に祝福の声が満ちていく。
月の光は、二人を優しく包み込んでいた。
それは、新しい時代の幕開けを、静かに見守るかのようだった。
体調を崩し、更新が滞ってしまいました。申し訳ありません。
16時に最終話を更新します。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです。




