地獄からの解放
華やかな宮廷パーティーは、一瞬にして見世物じみた茶番へと成り下がった。そして、その責任が誰にあるのかを、誰もが理解していた。
後ろで、エマが小さく息を吐く音が聞こえた。
彼女の胸の内には、清々しささえ漂っているようだった。
(やっと、お嬢様がこの地獄から解放される──)
その思いは、レティシア自身も同じだった。
七年の歳月は、確かに長かった。しかし、それはもう終わる。
レティシアは、最後まで背筋を伸ばしたまま、淡々と自分の部屋へと戻った。
その姿は、嘲笑の的となるどころか、むしろ気高ささえ感じさせた。
取り巻きたちの笑いは、徐々に収まっていった。代わりに、居心地の悪そうな空気が会場を支配する。
王太子の顔が、徐々に朱に染まっていくのが見えた。
予定通りの結果を得たはずなのに、なぜか勝利者の顔つきではない。むしろ、子どもじみた癇癪を起こしそうな表情だった。
それは、自分の行為の愚かさを周囲に曝け出すようなものだった。
音楽が再び流れ始める。しかし、もはや誰も踊る気分ではなかった。
その夜、レティシアは七年間住み慣れた部屋で、静かに窓の外を見つめていた。
「お嬢様」
エマが差し出した紅茶を受け取りながら、レティシアは小さく微笑んだ。
「明日から、私たちの新しい人生が始まるわね」
その言葉には、これまでにない確かな希望が込められていた。