守るべきもの
夕闇が忍び寄る城の会議室で、捕らえた密偵から押収した書類が、次々と机の上に広げられていた。
「これは...」
エリアスが手に取った文書には、アスタルン公国の指示が細かく記されている。
荒らすべき農地、妨害すべき物資の輸送経路、そして──。
「私たちの領地を、長期的に侵略する計画を立てていたのね」
レティシアは冷静に文書を見つめる。暖炉の炎が揺らめき、紙面に記された文字が不気味に踊る。
「寒冷地での農作物の栽培技術、鉱山の新しい採掘法、毛織物の生産技術」アストリッドが息を呑む。「全て、レティシアが築き上げてきたものね」
「まさか、これほどまでに...」
エーリクが眉を寄せる。
彼の手元には、農地の被害報告が積み重なっていた。
枯れた作物、壊された水路、盗まれた種。それらは決して偶然ではなかったのだ。
「被害を受けた領民たちのことを考えると」
エリアスの拳が震える。この数ヶ月、作物の不作に苦しむ農民たち、不安に怯える鉱夫たち。
彼らの苦悩は、全て計画的なものだった。
「まずは補償を」
レティシアが静かに切り出す。
彼女の前には、既に具体的な対策が書き記された紙が広げられていた。
「被害を受けた農地への支援、物資の再配分、そして...」
彼女の言葉に、会議室の空気が変わる。
かつての混乱から一転、具体的な対策への希望が生まれ始めていた。
「俺は騎士団を再編成する」
エリアスが立ち上がる。その声には、確かな決意が込められていた。
「鉱山と農地の警備体制を強化し、住民の避難経路も整備する」
「私からは、アムレアン皇国の首都を通じて」
レティシアも静かに告げる。
「アスタルン公国への正式な抗議を行います。彼らの行為は、もはや隠しようのない侵略行為ですから」
窓の外では、夜の帳が降りていく。しかし、会議室の空気は、むしろ明るさを増していた。
あけましておめでとうございます。
今年も頑張って更新していくので、お付き合いいただけるととても嬉しいです。
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