表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/52

華やかな婚約破棄パーティー

宮廷パーティーの華やかな音楽が、大広間に流れていた。


優雅なワルツに合わせて貴族たちが舞い踊る中、レティシアは静かに壁際に立っていた。いつものように、彼女の周りには誰もいない。ただエマだけが、忠実な影のように後ろに控えている。


「また誰も、お嬢様に挨拶さえしようとしません」


エマが小さく呟く。確かに、レティシアの周りだけぽっかりと空間が空いていた。


それは偶然ではない。王太子の意向を忖度した貴族たちが、意図的に作り出した空白だった。


「気にすることはないわ」


レティシアは淡々とした声で答える。七年間、この国で過ごしてきた彼女にとって、こんな仕打ちは珍しいものではなかった。


豪奢な衣装に身を包んだ貴婦人たちが、レティシアの地味な装いを横目で見ては、くすくすと笑い合っている。彼女の服装は確かに質素だった。しかし、それは単なる趣味の問題ではない。国の予算を私的な贅沢に使うことを潔しとしない、彼女なりの信念だった。


「陛下がいらっしゃいます」


誰かが声を上げ、音楽が止まる。老王の姿が見えた瞬間、会場の空気が一変した。そして、その後ろには──。


「本日はパーティーにお越しいただきありがとうございます。お集まりの皆様に重要な発表がございます」


フレデリック王太子が、高らかに声を上げた。彼は会場の中央へと歩み出る。その表情には既に勝ち誇った色が浮かんでいた。レティシアは、その瞬間に何が起こるのかを悟った。


「待って、お嬢様」


後ろでエマが小さく腕を掴む。彼女も事態を理解したのだろう。しかし、レティシアは静かに首を振った。


「本日をもって、レティシア・デ・オリバスとの婚約を解消することをここに宣言します」


会場が静まり返る。ただ、それは驚きのためではなかった。



むしろ、皆が予期していた瞬間が訪れたという空気が漂っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ