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使者

城門に、馬蹄の音が響き渡った。


「フェリエ王国からの使者が参られました」


執事のルーカスの声には、僅かな緊張が滲んでいる。


突然の来訪者を前に、城内の空気が一瞬で凍りついたかのようだった。



豪奢な衣装に身を包んだ使者は、まるでこの地を見下ろすかのような態度で馬上から降り立つ。

その手には、王太子の紋章が刻まれた書状が握られていた。


「アイシュエット侯爵殿へ、フェリエ王国、王太子フレデリック・ド・フェリエ様よりの親書にございます」


応接間に通された使者は、高慢な声で告げる。

侯爵の前で封を切られた書状からは、あまりにも傲慢な文面が現れた。



『婚約破棄後の惨めな女を憐れんで、新しい役目を与えてやろう──』



レティシアは静かに目を細める。

七年の歳月を経ても、フレデリックの傲慢さは少しも変わっていないようだった。



『フェリエ王国の近隣にいる強力な魔物討伐に、アイシュエット領主は直ちに協力せよ』



書状の後半には、露骨な要求が記されていた。


「これは命令ではなく、お願いということでよろしいのでしょうか」


レティシアの冷ややかな問いに、使者は一瞬たじろぐ。


「王太子様のご意向です。従っていただくことが──」


「フェリエ王国の失策を、私たちの領地に押しつけるつもりね」


レティシアの分析は的確だった。


近頃、フェリエ王国では魔物の被害が急増しているという。

それは神の祝福を失った土地の、避けられない運命だった。


「無礼な!」


使者が声を荒げる。

しかし、その怒号もレティシアの冷静な眼差しの前では空しく響くだけだった。


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