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レティシアの力

「私には、普通の人にはない力があります」


レティシアは一度目を閉じ、言葉を選ぶように間を置いた。


「私は...前世の記憶を持っています。そして、前々世の記憶も、それより前の記憶も」


静寂が部屋を支配する。


「まさか」アルマが息を呑む。「伝説の転生者...?」


「ご存知なのですね」


レティシアは小さく頷いた。転生者──数百年に一人しか生まれないと言われる、前世の記憶を持つ特別な存在。その存在は伝説として語り継がれてはいたが、実際に目の前にいるとは誰も思っていなかった。


「私の過去世には、様々な知識や技術を持つ者がいました。鉱物の加工技術も、その一つです」


アストリッドが、震える声で尋ねる。


「それは...本当なのですか?」


「はい。そして、もう一つ」


レティシアは窓の外を見やった。降り始めた雪が、静かに舞い落ちている。


「私には、神の祝福という力も与えられています。私が住まう土地には、自然と実りがもたらされるのです」


部屋の空気が、さらに引き締まる。


「それは...」それまで成り行きを見守っていた侯爵が口を開く。「古い予言に出てくる『神に愛された者』のことか」


「はい」


「私の母から聞いた話です」


アレクサンドラが静かに口を開く。


「神に愛された魂が、時として人の世に生を受ける。その者が住まう土地は、自然災害が少なく、豊かな実りに恵まれると」


レティシアは黙って頷いた。


「だからこそ」彼女は真摯な表情で一同を見渡す。「この力を、領地のために使わせていただきたいのです」


静寂が流れる。それは重いものではなく、新たな希望に満ちた空気だった。


「ですが」


レティシアは表情を引き締めて続けた。


「この力のことは、この場に居る方々だけの秘密として、守っていただけないでしょうか」


「もちろんです」


アストリッドが即座に答える。


「領地のためにも…何より、レティシアの身の安全のためにも、これは家族の秘密として守り通さねばなりませんね」


アレクサンドラも頷く。他の家族も、同意を示した。


「知っている者が多ければ多いほど、危険も増えます」


侯爵が厳かな声で告げる。


「この秘密は、我が家の重要な宝として、守り通すことを誓おう」


一同が頷く中、レティシアは安堵の表情を浮かべた。信頼できる家族に、自分の本当の姿を打ち明けることができた。それは彼女にとっても、大きな一歩だった。




「…そして、この力を持っているからこそ確信があるのです」レティシアは再び一同を見渡した。


「アイシュエットには、大きな可能性があると」



レティシアのまっすぐな瞳に、一同は胸に希望の光が暖かく宿るのを感じた。



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