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新しい可能性

「新しい作物の導入を検討していたの」


レティシアが答えると、エリアスの表情が曇る。


「無駄な事は止めろ。この土地で農業など」


「無駄ではないわ」


レティシアは冷静に返す。


「寒冷地でも育つ作物はある。私には、その知識がある」


「知識?笑わせるな」


エリアスは馬から降りると、二人に近づいてきた。



「お前に何が分かる。この地で代々暮らしてきた者にも分からないことが」


その言葉には明らかな敵意が込められていた。しかし、レティシアは一歩も引かない。


「だからこそ、外からの視点が必要なのよ」


「何を...」


「若、若様」


農夫が慌てて割って入る。


「私たちも、新しい方法を試してみたいと思っています」


その言葉に、エリアスは明らかに動揺を示した。


「お前たちまで…」


「この土地を耕し続けてきた者として」農夫は真摯な表情で続ける。「新しい可能性を探りたいのです」



風が吹き抜ける。その冷たさが、場の緊張を際立たせているようだった。



「...勝手にしろ」



エリアスは、それだけ言い残して馬に跨ると、城の方へ走り去って行った。


「申し訳ありません、若奥様」


農夫が深々と頭を下げる。


「謝る必要はないわ」


レティシアは静かに告げた。



「むしろ、あなたの勇気に感謝します」


その言葉に、農夫は恐縮しながらも、小さな希望の光を見出したような表情を浮かべた。


夕暮れ時、レティシアは今日の視察の記録をまとめていた。エマが温かい茶を差し入れてくる。


「若奥様、今日は大変でしたね」


「ええ。でも、収穫も多かったわ」


レティシアは窓の外を見やる。




「この領地には、まだ見ぬ可能性が眠っている。それを引き出すのが、私の役目なのかもしれない」


エマは黙って頷いた。主人の決意が、これほど強いものだったとは。


「レティシア」


そこに、アストリッドが部屋に入ってきた。


「お母様が、家族会議を開きたいと言っているの」


その言葉に、レティシアは小さく目を細めた。ついに、この時が来たのだ。


「分かりました」



立ち上がりながら、レティシアは深く息を吸う。これから始まる議論が、簡単なものではないことは分かっていた。





しかし、それは必要な一歩だった。この領地の、そして人々の未来のために。


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