冷たい風吹く畑で
「これでは収穫が難しいでしょうか」
冷たい風が吹き抜ける畑で、レティシアは一人の農夫と話をしていた。彼の頬は寒さで赤くなっている。
「はい、若奥様。この土地では、作物の選択が難しくて」
農夫はそう言いながら、凍てついた大地を指差す。寒冷な気候は、作物の生育に大きな制限を与えていた。
「でも、羊の飼育は上手くいっているようですね」
レティシアが丘の方を指差すと、そこには小さな羊の群れが見える。
「ああ、確かに。寒さに強い品種を、代々改良してきましてな」
農夫の声には少しばかりの誇りが混じっていた。
「しかし、それだけでは...」
彼は言葉を濁す。羊の飼育だけでは、生活を支えるには不十分なのだ。
「分かりました」
レティシアは静かに頷いた。前世の記憶を辿りながら、彼女は畑を見渡す。確かに一般的な作物は育ちにくいだろう。しかし──。
「ライ麦なら育つかもしれない」
「ライ麦、ですか?」
「ええ。寒さに強い品種があるの。それに...」
レティシアは空を見上げた。
「この土地には、神の恩寵があるわ」
その言葉の意味を、農夫は理解できていないようだった。しかし、レティシアの確信に満ちた表情に、何か希望のようなものを感じ取ったようだ。
「若奥様、本当に育つと?」
「ええ。まずは小規模で試してみましょう」
その瞬間、馬のひづめの音が近づいてきた。
「何をしている」
振り返ると、そこにはエリアスが馬上から二人を見下ろしていた。




