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歓待

「皆さん、中へ入りましょう」


アレクサンドラに導かれ、一行は城の中へと入っていく。暖炉の火が燃える広間は、心地よい温かさに包まれていた。



「ようこそお越しくださいました、レティシア様」


執事のルーカスが丁重に挨拶する。その後ろには、何人もの使用人たちが整然と並んでいた。


「私が侍女長のカリーナです」


中年の女性が一歩前に出る。


「こちらがレティシア様付きのメイドたちです。ノーラ、アンナ、ナタリーです」


三人の若いメイドたちが、愛想よく会釈する。


「エマさんと協力して、お世話させていただきます」


その言葉には、本心からの歓迎の意が込められているように感じられた。




「こんにちは!」


階段から、少女の声が響く。振り返ると、そこには一際可愛らしい少女が立っていた。


「私はアリス。エリアス兄様の妹よ」


彼女は階段を駆け下りると、レティシアの手を取った。


「お姉様ができるの、すっごく嬉しいの!」


その無邪気な喜びに、周囲から優しい笑みがこぼれる。


「アリス、行儀が悪いよ」


階下に降りてきたエーリクが、妹を窘める。彼は公爵家の末っ子で、エリアスの弟だった。


「レティシア様、ご到着おめでとうございます」


礼儀正しい挨拶の後、彼は申し訳なさそうに付け加えた。


「兄は...少し気分が優れないようで」


その言葉の意味するところは明白だった。エリアスの姿が、この歓迎の場にないのだ。




確かに、彼は屋敷のどこかにいるはずだった。しかし、婚約者の到着という大切な場面に姿を見せないのは、明らかな意思表示だった。


「エリアス兄様ったら」


アリスが頬を膨らませる。


「せっかくこんなに素敵な人が来てくれたのに」


「まあ、気にすることはないわ」


アレクサンドラが、さりげなく場を取り繕う。


「エリアスも、きっとすぐに心を開いてくれるはず」


その言葉とは裏腹に、彼女の表情には僅かな心配の色が浮かんでいた。息子の頑なな態度を、よく理解しているようだった。



レティシアは黙って周囲を見渡した。温かな歓迎、整った環境、そして──ある意味で正直な拒絶。


全てが新鮮だった。フェリエ王国での虚飾に満ちた生活とは違い、ここには本物の感情が流れている。たとえそれが、エリアスの拒絶であったとしても。


(お前が来たせいで、俺の人生が変わってしまった)


どこかで、そんな彼の思いが伝わってくるようだった。しかし、それは彼女にとって大きな問題ではなかった。



「これからの関係は、おいおい築いていけばいいわ」


レティシアはそう考えながら、新しい生活への一歩を踏み出した。


「では、お部屋までご案内しますわ」


アストリッドが柔らかく声をかける。エマも隣で安堵の表情を浮かべていた。


こうして二人の新しい物語は、まさに始まろうとしていた。それは、フェリエ王国での虚しい日々とは全く異なる、確かな希望に満ちた一歩だった。




窓の外では、雪が静かに降り続いていた。まるで、新たな時代の幕開けを祝福するかのように。


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