第2章:凍てつく地に芽吹く希望
雪が舞う中、アイシュエット侯爵家の領地が見えてきた。
厳しい寒さの中にも凛とした気品を漂わせる城砦が、レティシアたちを迎える。
北の守りを担う要塞として、幾世代にもわたって国境を守ってきた歴史が、その佇まいからも感じられた。
「なんと美しい...」
エマが思わず声を漏らす。確かに、銀世界に浮かぶ城の姿には威厳があった。しかし、それだけではない。温かな光を灯す窓々が、ここが人の暮らす場所であることを物語っている。
「あれを見て」
レティシアが指さす先には、城下町が広がっていた。フェリエ王国とは異なる独特の建築様式。寒さを防ぐために考え抜かれた造りの家々が、整然と並んでいる。通りには人々が行き交い、市場からは活気のある声が聞こえてきた。
「まるで、お嬢様を待っていたかのようですね」
エマの言葉に、レティシアは小さく頷いた。たしかに、到着に合わせるかのように、街全体が温かな雰囲気に包まれているように感じられた。
城門をくぐると、そこにはすでに出迎えの一行が待っていた。
「ようこそ、アイシュエットへ」
アイシュエット侯爵夫人アレクサンドラが、両手を広げて歓迎の意を示す。その横には、アストリッドとアルマの姉妹が立っていた。二人とも、母親譲りの気品ある美しさを持っている。
「レティシア、本当によく来てくれました」
アレクサンドラは近づくと、レティシアを優しく抱擁した。その仕草には、母親としての慈愛が溢れている。
「私の親友セシリアの娘が、こうして我が家の一員になってくれるなんて」
その瞳には、涙が光っているようにも見えた。
「初めまして、レティシア」
アストリッドが柔らかな笑みを浮かべる。
「ずっと、あなたの到着を待っていたのよ」
「お姉様が張り切って、あなたの部屋の準備を整えてくださったのですよ」
アルマが、姉を冗談めかして指差す。姉妹の和やかな雰囲気に、レティシアは思わず心が和むのを感じた。
エマも、その温かな出迎えに感動しているようだった。フェリエ王国での冷遇が嘘のように思える。
「あら、あなたがエマさん?」
アレクサンドラは、エマにも優しく微笑みかける。
「セシリアからよく聞いていましたよ。レティシアの良き理解者として、これからもよろしくお願いしますね」
「は、はい!」
エマは感激のあまり、声を震わせながら答えた。




