陰キャと美少女
「あなたの不幸も教会で全て消し去る事ができます。今からいきましょう」
胡散臭い神父姿の奴が誰かにしつこく絡んでる。広場の泉の回りにはああいう奴多いんだよな。ありゃヌーバー教とかいう新興宗教の奴だな。
「ぁ…………ぃ……」
絡まれてる奴なんかボソボソ言ってんな。んー、アンの格好だと貫禄的なものがねーんだよな。ん、あれ、うちのクラスの陰キャのなんとかって奴だよな。
あー、嫌だ嫌だ。なんで僕ってこういう人によく話かけられるんだろう。嫌だって言ってるのにどっか行ってくれないかな。他の人も見て見ぬふり誰も助けてくれない。誰か助けて欲しい。
「おい、嫌がってんだろ。わかんねーのか?」
えっ? 誰? も、もしかして、この声アンちゃん?
見間違う訳ない。アンちゃんだ!
「私は彼と話してるんだが?」
なんか神父の声が変わった。
「お前、知らないのか? ここじゃ法律で勧誘は禁止されてんだよ。一緒に警察行くか?」
アンちゃんが神父を睨む。ヤバい格好いい。それにめっちゃ綺麗だ。
「いやー、勧誘じゃ無いよ。ただ話してただけだよ」
神父は胡散臭い笑みを浮かべ、そそくさと立ち去る。
「おい、大丈夫か?」
アンちゃんが僕を見つめている。ミルクじゃなくて僕を。僕は力が抜けて崩れ落ちてしまう。
「おい、大丈夫か?」
僕に回される柔らかい手。まじ、まじまじまじまじか! めっちゃ僕とアンちゃん密着してる。柔らかい。ダンゴムシのような僕に太陽のようなアンちゃんか……ヤバい気を失いそう。アンちゃんはフラフラな僕を支えてベンチに座らせてくれる。
「おい、アンタ大丈夫か? 顔色悪いし、汗ヤバいぞ」
「ぁ、ありがとうございます……」
「もしかして、腰抜けたのか? 情けねーな。ったく。嫌なものは嫌って言えよ。私はアンタのようなウジウジしたのが大っ嫌いなんだ。少しはシャキッとしろシャキッと」
なんかカシスにも言われた……
「すっ、すみません……」
情けないとこみせちゃった。正直泣きそう。穴があったら入りたいってこんな気分なんだろう……
「おいおい、泣くな、泣くな。悪い私が言いすぎた。もう立てるか?」
アンちゃんに手を引かれて立ち上がる。
「気をつけて帰れよ」
アンちゃんは僕に背中を見せる。ヤバい。格好いい。優しい。惚れそう。って言うか惚れた。情けないとこ見せたけど、めっちゃハグされた。僕はまた力が抜けベンチに座る。ヤバい。心臓ドキドキ過ぎる。顔も熱すぎる。見えなくなるまで、アンちゃんの背中から目が離せなかった。
「うわ、ありゃダメだわ。ハードル上げすぎでしょ」
遠くで一部始終を見てたカシスが頭を押さえる。
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