ショートコント(1) 赤い糸
赤い糸(1)
「君と僕とは『運命の赤い糸』で結ばれている。だから結婚しよう。」
男は言った。
「糸なんか見えないんですけど。」
私は言った。
「運命の赤い糸は普通の人には見えないんだ。」
「僕は、長い間仙人の修行したので見えるんだよ。」
それでは、この男の言うことが本当か試してやろう。
「私を含め10人の女の子が、カーテンの向こうに並びます。」
「糸をたぐって私が選べたら結婚しましょう。」
しかし、男は別の女の子を選んでしまった。
「やっぱり、赤い糸なんて嘘じゃない。」
「嘘じゃない。君には糸が見えないから分からないかもしれないが、
10人も並ぶと赤い糸がごちゃごちゃにもつれて、僕たちの糸が分からなかったんだ。」
赤い糸(2)
「君と僕とは『運命の赤い糸』で結ばれている。だから結婚しよう。」
「運命なら逆らえないわね。結婚するわ。」
「君を絶対に幸せにする。」
「赤い糸は成長するんだ。二人愛に育まれて糸はどんどん太くなるよ。」
「まあ、なんてロマンチック。」
わたしは、結婚式の準備に余念がなかった。
しかし、その男が別の女を口説いているのを目撃してしまった。
「赤い糸なんて嘘じゃない。」
「嘘じゃない。でも、赤い糸は成長すると枝を出すんだ。」
「僕にはどうすることも出来ない。これは運命だからね。」
赤い糸(3)
「ああ、結婚したいなー。」
オレは寒空に背中を丸めて歩いていた。
「お兄さん。『運命の赤い糸』の福袋あるよ。」
怪しい占い師がテーブルに福袋を並べている。
「袋の中に赤い糸の端があるから、足に結び付けると糸の先の人と必ず結ばれるよ。」
「相手は男、みたいなオチじゃないだろうな。」
「相手は絶対女。だけど、福袋だから相手は選べない。」
「女ならこのさい贅沢は言わない。買った!!」
オレは糸を足に結び付けた。他人には糸が見えないらしい。
相手はどんな女だろう?
オレは興味がでて、糸をどんどん手繰り寄せた。
糸は町の定食屋に続いていた。
オレは中に入った。
店に入ると、若い女!
と思ったら、食堂のおばちゃんにつながっていた。
オレはがっかりした。
とりあえず、腰をおろして野菜炒めを注文した。
出された野菜炒めには、虫が入っていた。
「おばちゃん、中に虫が入っているよ!」
「若いもんが好き嫌い言ったらあかん!」
逆に怒られた。怖いおばさんだ。
あ、でも優しいところもあるみたいだ。
にっこり笑って、ご飯をサービスしてくれた。
「若いんだから遠慮したらいかんよ。」
「何杯でも食べな!お代わりはいくらでもあるよ。」
あのおばさんにも赤い糸は見えてるみたいだ。